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偏光の計算 - その6 [偏光のMathematicaによる計算]

文句を言うわけではないけど、会社で今回の結果(ここでは説明してない具体的な解析)をどうやって計算したのか、と訊いてきた人がいた。数学の原理は簡単なのでMathematicaに自分で書いてMathematicaの最適化関数で最適化した、と簡単に説明した。理解してくれたのかと思ったら彼曰く、信頼のおける実績あるソフトの結果ではないのだな、だと。

それでもお前は技術屋かよ、と面と向かっては言わなかったけどね、大人だし。

今回から偏光計算の例として、位相差の測定法であるセナルモン法の原理を、ジョーンズベクトルで計算して、ポアンカレ球でどのような軌跡になるか考えてみる。この方法は簡単で高精度な位相差の測定法で非常に面白い。まず、セナルモン法ってなに?、どうすんの?から。

セナルモン法の測定手順

位相差のわからない波長板(位相差版)があって、そのある波長での位相差を知りたいとする。

まず

  • 知りたい波長の光を出す光源
  • その波長で動作する偏光板を2枚
  • 同様にその波長で動作する1/4波長板を1枚
を用意する。

それらを使って以下の手順を行う。

  1. 光源からの光を2枚の偏光板に通す
  2. 偏光板を相対的に回転させて光が透過しない相対角度に設定する
  3. 偏光板の間に用意した1/4波長板を入れ、回転させてやはり光が透過しないようにする
  4. その角度を覚えておいて1/4波長板を一旦取り出す
  5. 被検波長板を偏光板の間に入れ、同じように回転させて光が透過しないようにする
  6. そこから被検波長板を45°だけ回転させる
  7. 被検波長板のあとに、1/4波長板をさっき覚えた角度でもう一度入れる
  8. 光が透過してくるようになる
  9. 再び光が透過しないように出口の(2枚目の)偏光板を回転させる
  10. その回転角の2倍が被検波長板の位相差の値である
というもので、こうやって位相差を測定する方法をセナルモン法(Senarmont Method)という。セットアップを絵にすると図-3のようななる。

0222fig3.png

ただし、上の手順で測定できるのは位相差の絶対値だけで、その符号を知るためにはもう少し作業(1/4波長板の符号がわかっていたとして)が必要になる。ただし、その作業は今の目的には本質的ではないのと、原理がわかれば符号を知る方法は比較的簡単に思いつくはずなので省略する。

手順2で偏光板の透過軸は相対的に90°になっているはずである。これをクロスニコル(Corssed nicol)の状態という。ふたつの偏光板の入り口側をポラライザ(Polarizer)、出口側をアナライザ(Analyzer)ということがある。もちろん同じものに違う名前をつけているだけ。こういうのは気持ちはわからないでもないけど誤解のもとという気もする。

手順4と5で1/4波長板、被検波長板の異方軸の両方とも、ふたつの偏光板のどちらかの透過軸の方向に一致させていることになる。そして手順6で被検波長板だけの異方軸を45°向けることになる。

これで位相差という目に見えない、直接観測できない物理量が、角度という機械的な観測可能量に変換される。まるで手品みたいである。

それでは種明かし、なぜこれで位相差が測定できるか。二通りの方法で説明してみる。続きは明日。


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コメント 4

平林克彦@NTT

セナルモン法の解説、ネットでいろいろ検索しましたが、貴殿の解説が最も理解しやすいです。

 もう少し教えてください。

現在、波長板の位相をセナルモン法を使って測定しています。セナルモン法では位相差の絶対値しかわからないとのことですが、例えば2θ(θは検光子の回転角度)=50゜という結果になった場合、±50゜となり、位相は+50゜、310゜のどちらかとなるでしょうか?あるいは+50゜あるいは180-50=130゜となるでしょうか?
 即ち(180゜の整数倍)±2θが絶対値になるでしょうか?あるいは(360゜の整数倍)±2θとなるのでしょうか?

 この辺りがよく理解できないです。

 3/4波長板をセナルモン法で測定したら、90゜という値が出ました。セナルモン法では3/4波長板は1/4波長板と同じに見えるでしょうか?

 
by 平林克彦@NTT (2013-07-25 16:32) 

decafish

コメントありがとうございます。
誤解を招く書き方をしてしまったようですが、「セナルモン法」が位相の絶対値しか測定できないわけではありません。上の手順に従って測定すると符号が決定できない、というだけです。
また、位相差板は光軸まわりに90°回転させると位相差の符号が反転します。どの向きを基準にするかを決める必要があります。
追加情報を
http://decafish.blog.so-net.ne.jp/2013-07-24
に書きました。
by decafish (2013-07-25 20:33) 

K. Hirabayashi

回答、ありがとうございます。

 45°回転させるというのは、光がこちらに来るのを見て、被測定物、検光子ともに、左右どちらに回転させるのでしょうか?
左右どちらでもいいのでしょうか?
 
by K. Hirabayashi (2013-07-25 21:59) 

decafish

返事が遅くなって申し訳ありません。
セナルモンで光学素子を回転させるとき、どの方向なのか、というのはどういう座標系で見ているかによります。原理的にはどういう風に見てもいいのですが(かってな座標を選んでいいということです)、いったん決めたら最後までその座標系を使い続ける必要があります。
回転方向を決める、というのは案外難しい作業です。何らかの恣意的な異方性を仮定する必要があります。そのとき問題になるのが勝手な異方性を決めたときにもともと持っている対称性のために、見かけは異なる操作(例えば90°回転と符号反転)が同じことになるということがあります。
そう言うことを分類するには、ちょっと大袈裟かも知れませんが群論の考え方が役に立ちます。
by decafish (2013-07-28 20:51) 

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