考え中 - Fourier領域と実領域の光(4) [考え中 - FDTD法の実装]
Maxwellの方程式の中に入っている物質方程式の中身について、もう少し考える。
電場に対する応答としての分極
物質内の微小な電荷の分布の変形によって全体の電場が変化しているとする。そして変形の大きさはとりあえず電場の大きさに比例するとして
であって、つまり入力電場に対する物質の応答が分極Pであり、χは電気感受率と呼ばれる。電場があると微小な電荷の分布が変形してかたよりができ、それが電場を打ち消す方向にはたらく。分極は微小な電荷の運動の結果を粗く見たものなので電場が変化したとき瞬時に応答するわけではない。
たとえばある時刻t0で急に電場の大きさが大きくなったとしても、微小な電荷にも小さいながら質量があるので急には変化せず、遅れが生じる。そして動き出したら今度は電場が急に無くなってもその動きはすぐには止まらない。つまり現在の分極はそれまでの電場の履歴に依存することになる。
のように書いてしまうと、遅れを表すことができないので、例えば となるはずである。現時点tでの分極は過去からその時点までの電場の変化に対する応答の総和である、ということにする。
ここでτはどのくらい過去にさかのぼって影響を考えるかというパラメータであり、χ(τ)はどのくらいさかのぼった電場がどのくらい現在に影響しているかを表すことになる。このχ(τ)は
のはずである。つまり未来からの影響は受けない、ということ。実際に電気感受率に限らず世界のすべての線形な応答は式-14を満たしているなければおかしい。ということでそれなら式-13の積分範囲の下限は-∞にしても同じ
になる。さらに、εはτだけの関数で、時間tを陽に含んでいないと言う条件をつけておく。これは同じ電場の変化なら、それがいつ起こったとしても同じ応答になる、ということになる。これは、例えば時間経過やタイミングによって応答が変わったりしない、ということで普通の物質を扱うならそれほど強い制限にはならないと考えられる。もちろん時間とともに変化していく材料を扱ったり、電場以外の強制振動があるような場合はこの条件には当てはまらないことになる。
それとあとひとつ、
としておく。これはようするに遠い昔のことは覚えていない、ということでこれも自然な仮定だと思えるが、例えばヒステリシスを持つような材料では当てはまらない場合もある。式-15を認めたとすると元の式-9も同じように
と書かなければいけないということになる。このときε(τ)に対する制限をまとめておくと
また、式-17はいわゆる畳み込み積分なので、これを簡単に と書くことにする。式-6や式-7についても、もとになる物理的なメカニズムは違うけど遅れが伴って式-14を満足しなければいけないのは全く同じ。
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