考え中 - Fourier領域と実領域の光(8) [考え中 - FDTD法の実装]
前回、平面波を扱うということはFourier領域で考えることだ、ということを指摘した。そんなのあたりまえじゃん。そう、そうなんだけどじゃあ、実時間空間領域で考えるということは実はどういうこと?
ちょっとまとめをして、その先に進む前に真空の場合を考えておく。
ここまでのまとめ
平面波のような正弦波的な現象というのはなにか共振の物理過程が含まれている、ということにほかならない。バネで固定された質点に代表される、いわゆる調和振動子が内蔵されていると、外乱があれば自分の持っている周期の正弦波の成分を増幅する。
Fourier展開というのはあらゆる現象(ルベーグ積分のおかげで対応範囲が極端に広がった)を調和振動子の集まりとみなすということだけど、しかし、すべての現象が調和振動子でできているわけではない。例えば太陽からの光は共振の結果ではない(その中に含まれる輝線暗線は共振が原因だけど)。それを波長ごとに分解するということはどういうことなのか?
とはいうものの、Fourier展開(Fourier変換)はやっぱり便利なので使いたい。では実時間空間領域で考えるということはどういうことなのか、ということをもういちど振り返りたい。ということでこれから物質方程式の中身に関してもう少し突っ込むことにする。
この話では古典論に限っているけど、実は量子力学ではFourier領域が実在で実時間空間領域は単にその重ね合わせの結果でしかない。これはどういうことなのか。今回はそこまでは突っ込まない。他の誰かにお願いしたいと思う。
真空の場合
ここで先に進む前に、真空の場合を考えておく。
これまでは物質の内部を考えて、電場と物質の相互作用の結果を物質方程式-26などのように表現した。真空では となる。ε0、μ0は「真空の誘電率」、「真空の透磁率」等と呼ばれるが、これはほんとうにただの定数で、真空が分極したり磁化したりするわけではない。これらは単なるディメジョン(次元、単位)を合わせるための実数の定数であって、測定によって決めることができる。そして単なる定数なのでDやBはEやHに完全に比例するだけで、実質的に意味がない、ということになる。DやBは物質の応答を繰り込んだものだったのでこれは当然である。
一方、真空の場合のMaxwellの方程式は、これこそが電磁場そのものの方程式であり、物質方程式を含めた場合とは意味合いが異なる。これまで扱ってきたMaxwellの方程式は前にも述べたように、電磁場の方程式と微視的な運動方程式を連立させたものであった。「真空は誘電体ではない」というのはこういう意味である。
逆に言えば、真空中か物質の中かの違いは、比誘電率の値が1かそうでないか、の違いであると思いがちだけど、うるさく言えば本当はそうではない、ということである。 真空中の場合、式-46は、簡単に と書けるということになる。ここでkはkの大きさである(もちろん大きさなので平方根をとるときの負側は捨てた)。
これは、Fourier展開の係数のうち式-60を満たすものはε0とμ0がただの実数の定数なので実際に取り出すことができる。これを使って初期値なり境界値なりが展開できれば、Maxwellの方程式の解が(何もない空間に電磁場だけがある場合の)構成できる。
もとのFourier展開の式-34に戻ればあきらかに「等位相面が移動する速さが のものだけで展開すればそれが解になる」ということである。
物質方程式がある場合も、これと同じやりかたで解を構成しよう、というのが基本的な考え方である。
なんか言い方が大袈裟になってきた。これはちょっと、考え直そう。そんなえらい話ではなくて、「おや、そういえばそうね」という話なので。
2009-06-18 23:10
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