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近軸光線追跡 - その5 [近軸光線追跡]

一昨日近軸の光線の追跡をマトリクスで書いた。実はこのマトリクスの書き方は一般的ではない。その辺の注意と、マトリクスで書いた利点である近軸諸量のマトリクス要素からの計算をまとめる。

4.1  注意点

普通、光学の教科書などに載っている近軸マトリクスは
0923eq37.png
などと書かれる。こう書く方が線形代数の書き方にならっているのでなじみがあるが、マトリクスのかけ算は
0923eq38.png
などとなって、普通光軸を横向きに描いたときに光線と面は左から右にならぶが、マトリクスは左からかけるので右から左に並ぶことになる。絵を見ながらマトリクスを並べることが多いので、これは間違いのもとになる。そこで今回光線ベクトルを横ベクトルにした。これはOpenGLなどのAffine変換のマトリクスをこのように書く流儀があって、そのまねである。

ただし、マトリクスの要素は近軸量の計算式が同じになるような並びにしてある。

5  マトリクスによる近軸諸量

近軸量はマトリクスの要素から計算できる。

マトリクスの要素を
0923eq39.png
と書く。またマトリクスは面から面までで、その前後の移行は含まないとする。

移行を含む場合、
0923eq41.png
などと書くことにする。

近軸諸量を、計算の簡単なものから順に示す。ここでさらに注意として
  • 角度は換算角ではなく、実角度に戻す
  • 距離は換算距離のまま残す
なぜなら距離は符号によっては異なる媒質のなかに入ったり、複数の媒質をまたいだりするからである。実距離に直す場合はその媒質の屈折率をかけるのを忘れないようにするか、あるいは空気換算された距離である、と解釈する。光学的な問題を扱う限りではガラス媒質中の物理的な位置が問題になることはなく、換算距離で表すのは慣れの問題だけであるが、たとえば高出力レーザを使うときにガラス中で焦点を結んでないか、などのチェックをしたいときは媒質の屈折率で実距離に戻すのを忘れないようにしなければならない。

5.1  共役条件(Conjugate Condition)

像面が物体面と共役になる、ということは、ある像面での高さhk+1の光線は物体面の高さh0だけに依存して傾きν0にはよらない、ということなので
0923eq44.png

5.2  共役な面間で定義される近軸量

以下の近軸量は共役になっているl0lkを含んだマトリクスを使用する必要がある。

5.2.1  横倍率(Lateral Magnification)

横倍率βは高さの比なので
0923eq45.png
などである。l0lkは式44で結びついた値(共役な点同士)でなければ式-47と式-46は一致しなくなる。その場合、l0とその像側の共役点の間の横倍率、あるいはlkとその物体側の共役点の間の横倍率を計算していることになってしまうので注意が必要である。以下共役点間の近軸量はすべて同じように考えなければならない。

5.2.2  角倍率(Angular Magnification)

角倍率γは実角度の比をとればいいので
0923eq48.png
近軸マトリクスの光線角度は換算角なので屈折率で割り戻している。

5.2.3  縦倍率(Longitudinal Magnification)

縦倍率αは
0923eq51.png
であるが、共役条件の式を微分して
0923eq52.png
などとなる。
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