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近軸光線追跡 - その7 [近軸光線追跡]

前回までで近軸マトリクスを使って近軸諸量を計算した。今日からこれをMathematicaパッケージとして実装する。近軸だけでなくその後の含みも持たせて、ベタ書きするのではなくそれなりの工夫もしておく。

6  Mathematicaパッケージ

非常に簡単ではあるけど、近軸マトリクスを扱うMathematicaパッケージを書く。Mathematicaで書く利点は、代数式のまま計算できると言う点にある。組レンズの合成焦点距離などの公式を導くといったことが自動的にできる。

注意が必要なのは無限遠の扱いである。無限遠物体やアフォーカル系として無限遠を扱うことはごく普通にあるが、計算途中で発散することがあるので気をつけなければいけない。

球面の曲率半径は0を指定すると平面と解釈するとか、そういったレンズを扱う上での暗黙の仕様はそのまま使うことにする。

また、せっかくMathematicaを使うのでグラフィクス表示もしたい。ということで球面レンズは描画機能を使って3次元のモデルを表示できるようにした。光線も表示しようと思ったが、もちろん近軸追跡による光線なので屈折する点はレンズの曲率にはそっていない。高い光線(光軸から離れた光線)を表示すると屈折する位置が表面から離れて表示される。これではあまり意味がないのでやめることにした。

同様に近軸を扱うということから
  • 絞り
  • 偏芯
  • 光路を曲げる反射面
  • 吸収性媒質(複素数の屈折率)
は扱わないことにする。
絞りは実際の光学系には必ず必要なのでせめて表示くらいはした方がいいかもしれない。

いずれ、厳密な光線追跡も書いてみよう。Mathematicaでやるようなことではないけど、表示させるにはちょうどいいだろう。

6.1  注意

パッケージは
Needs["Optics`ParaxialRayTrace`"]
で読み込む。ParaxialRayTrace.mファイルを、Mathematicaのシステム変数である
$Path
のどこかのディレクトリにOpticsディレクトリを作り、その中に入れておくとそのファイルが読み込まれる。

いつもの通り、コンテクスト(Mathematicaの名前空間のメカニズム)に頼らなくてもシステムのシンボルと衝突しないように
ParaxialRayTracePackageVersion
ParaxialRayTracePackageCreationDate
ParaxialRayTracePackageMathematicaVersionRequest
以外のシンボルは小文字で始める。

もし、パッケージのスタイルが嫌いな場合はParaxialRayTrace.nbのファイルの中のPrivate sectionを評価すればいい。

インターフェイスに定義されたシンボルは
?Optics`ParaxialRayTrace`*
で確認できる。これはusageメッセージが定義されたシンボルになる。Mathematicaのバージョンは6を前提にしている。5では描画で問題が出る。Mathematicaはバージョン5まではグラフィクスの描画は、評価の過程の副作用の扱いだったが、6からは一般のオブジェクトと同じ扱いになった。ちょっとした違いだけど、書く上では全然違ってしまう。ちょっとめんどう。

6.2  構造

実際にはマトリクスをいちいち書いて入力するのは大変なので、Code-VのSEQファイルのような形式で入力用の表現ができるようにしよう。読み込んだ後はシンボルに結びつけて保持するようにしよう。

まず、入力形式は単純な面のリストにする。
{{r1, t1, n1, e1}...}
でレンズ系を表す。それぞれ面の曲率半径、次の面までの実距離、次の面までの媒質の屈折率、クリアアパチャ半径である。クリアアパチャ半径は省略可能とする。また、これには式が含まれていてもいいということにする。これに物体側と像側の屈折率と物体距離、表示用にクリアアパチャ半径を別に指定してそれをセットにして近軸光学系ということにしよう。

普通は物体側と像側の屈折率と距離は面として扱うのが普通だけど、レンズ系とは別にした方が式のまま扱うには便利である。像側を別途指定したので、最後の面に指定された次の面までの実距離と次の面までの媒質の屈折率は無視することにする。リストの最後は
{{r1, t1, n1, e1}...,{rk}}
として曲率半径だけ指定する形式も許すことにする。

これで、buildParaxialSystemという関数に渡すとオブジェクトが生成される。引数は
buildParaxialSystem[{no_, to_}, surfaces : {{__} ...}, {ni_, ti_}, edgeRadius_]
とする。引数は物体空間の屈折率と物体距離、面のリスト、像空間の屈折率と像面距離、最大のレンズ外形(半径)。

これを評価すると
paraxialSystem[__]
というようなオブジェクトを返す。ただし、セミコロンで出力を抑えていないと中身がずらずら出てきてしまうのでStandardFormで表示すると
In[766]:= gauss = 
 buildParaxialSystem[{1, infinityDistance}, surfgauss, {1, 0}, 100]
Out[766]= "- paraxial System -"
と表示される。

これを受け取ったシンボルにマトリクスやなんかが保持されていると考える。計算した結果をキャッシュする必要があるためにちょっと普通ではない扱いをする。
In[159]:= sys= 
 buildParaxialSystem[{1, 10},
        {{2.5, 1.5, 2, 2}, {1.5, 1, 3, 1}, {2, 0.3, 1, 1}, {2, 0.5, 2, 1},
        {1, 1, 1, 1}}, {1, 10}, 2]
Out[159]= - paraxial System -
というふうに必ずカラのシンボルで受け取る。このシンボルになにやかやが詰まっているんだ、とイメージしてほしい。

例えばこれに
In[762]:= focalLength[sys, objectSpace]
Out[762]= 102.85
などとして、値を計算させる。
特別な屈折率として
air
を用意する。これを数値評価すると1が返る。
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