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インターネットラジオでクラシック音楽 [音楽の周辺]

最近うちに帰るたびに、女房がインターネットラジオからとり溜めた録音をコピーして持って戻ってきて聴いている。ヨーロッパの多くの国の放送局やオーケストラやホールが、自前の録音を惜しげも無くインターネットに流している。数年前と違ってインターネットラジオも高い圧縮率による音質の問題などが少なくなってきた。女房はお気に入りの演奏家が最近何をやっているか、若手演奏家が何か面白いことをしていないか、ということを単なる情報だけではなく実際の音で確認するようになった。

例えば去年の暮れ12月5日にボストリッジがニューヨークフィル/コリン・デヴィスでマーラーの「子供の不思議な角笛」をやったのと、ついこないだ1月12日にゲルネがフランス国立/ガッティで同じ角笛をやったのを聴き較べることができる。現時点での世界的なリート歌手二人が一ヶ月の間隔で別の大陸で同じ曲をやってそれを聴き較べるなんて、これまで萩尾望都ぐらいにしかできなかった。

ちなみにその演奏は、「角笛」に関する限りゲルネ/ガッティが緻密さと完璧さではるかに上、ということがわかる。しかし残念ながらゲルネは出来過ぎで「角笛」の非理性的な世界を、理知的に外から眺めるような音楽になってしまっている。マーラーは上手いだけでは太刀打ちできないという典型。でもおそらく現時点での「角笛」の演奏のトップレベルであることは間違いない。ガッティもこれで初めて聴いたけど手堅く上手くてしかも柔らかい。

逆にボストリッジは底の浅さが露呈しまったような演奏。ドロテア・ロシュマンとかわりばんこに歌うんだけど、はっきり言って、完全にうわずっている。貴重なリート歌いなので浪費しないでほしいと思う。しかも全曲音程が長2度高い。シューベルトのピアノ伴奏歌曲で歌手が自分の音域に合わせて移調するのは当たり前になっているけど、マーラーのオーケストラ伴奏歌曲でそれをやるのは初めて聴いた。僕のiTunesライブラリにはこれ以外に「角笛」の6通りの録音があるけど全部元調のまま。バーンスタインのピアノ伴奏の録音でさえそう。

しかし、こんな環境は5年前には思いもよらなかった。もちろんちゃんとCDにパッケージされた商用の録音と違ってコンディションにはムラがある。例えばさっきのゲルネの「角笛」でも途中で何かを床に倒したような「ばたーん!」というような大きな音がそのまま入っている。

女房はこのためにヨーロッパの国々との時差を把握した上でスウェーデンハンガリーチェコフィンランドドイツオーストリアオランダベルギースイスデンマークブルガリアイギリスロシアなんかと北アメリカのクラシックをやってるインターネットラジオ局のアドレスを渡り歩いて番組表をチェックしている。おそらくそのためにかなりの時間を費やしていると思われる。

ところでなにが残念と言って、日本人音楽家のこういった生々しい演奏の録音を聴くことがほとんど無い。日本ではクラシックをやるインターネットラジオ局がほとんどないのと、そもそも旬の演奏家の旬の演奏をロハでインターネットに流す、なんてことはまったくやらないせい。
なんだかこんなところでもガラパゴス。
いいのか、それで。
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つる美

そのかわり、日本では「だれかがはやらせたい」あるいは「はやっていることにしたい」ウンコみたいな音楽が、耳にスダールやクラーケンが住みついてしまうほど流れてくる。
あれとあれのせいですね。
素人の作ったミクとかのほうがよっぽどましだわ。
by つる美 (2011-01-31 13:47) 

decafish

コメントありがとうございます。
「ウルトラQ」うっすらと記憶にあります。ステロタイプな南洋の土人風のキャラが今ではちょっとマズいと思います。
「あれとあれのせい」というのは「あれ」と「あれ」のことですね。結局音楽そのものを食いつぶすことしかできないというのは悲しいことです。
たしかに「ミク」は玉石混淆ですが、勢いは感じます。僕は「ニコ動」にあふれている「ミク」から新しい音楽が生まれるとは思っていないのですが、新しい楽器、演奏スタイル、あるいはジャンルが生まれる可能性は十分あると思っていて期待しています。
by decafish (2011-01-31 21:09) 

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