ちょっと前の論文を読んでみる - その8 [趣味のメタマテリアル]
なんで誘電率と透磁率が負だと屈折率が負になるのか。波動方程式からだけでは符号は決まらないのでMaxwellの方程式に戻らないといけない。ちょっと自分で考えてそれなりの結論を得たけど、とっくの昔1968年にVeselagoさんがエレガントに論じていた。
まえに書いた式-3の波動方程式ではなく、電荷や電流のない場合のMaxwellの方程式と、物質方程式 から始める(この4つの式から、例えばEだけを残すように変形すると式-3の波動方程式がでてくる)。これに平面波の式 を代入して整理すると となる(×はベクトル積を表す)。 この式から、EとHとkはお互いに直交することがわかる。また、この式からも意味があるのは式-7か式-8の場合に限られることはわかる。
EとHとkの成分を並べた行列G を考える。ところで、Veselagoはこの行列をそれぞれのベクトルの方向余弦を使って作ってるけど、同じことだよな、きっと。
Gの行列式は普通の媒質の場合、つまり式-7の場合、正になるが、式-8の場合には負になる。式-19、20ですでにわかるように、正の場合はEとHとkが右手系をなす。つまりEを親指、Hを人差し指、kを中指にしてそれぞれ自然に直交させると右手に対応する。一方負の場合、これは左手に対応する。
このことから式-8の媒質を左手系媒質(材料)と呼ぶ。
そして、EとHを基準に考えると式-7と式-8ではkの向きが反転する(ま逆になる)ことになる。kが反転するということは、さっきの位相速度が逆を向くということになる。位相速度が逆を向くということは、屈折率が負になる、ということになる。
これはなかなか直感が抵抗してしまうけど僕は、例えば海で、波は岸に打ち寄せてるのに、人のいない浮き輪が沖に流されていくような場合を思い浮かべた。そう言う経験はある。おお、あれって、メタマテリアルだったのか(違うって)。
位相速度の方向とエネルギーの流れる方向が違うというのは、異方性のある誘電体ではあたりまえなので 、単に式-7の場合の、しかも等方的な媒質ばかりに慣れてしまっているだけなんだろう。
本当はこのような式-7の場合の媒質の中でもポインティングベクトルは式-23で書けるのか、という検証は必要である。これは電磁波のエネルギーをどうやって計算するか、というところまで立ち戻ってしまうのでこれ以上やらないことにする。きっとちゃんと誰かがやってるだろう。
さらにちなめば、MKSA単位系というのは基本的な方程式にπ(円周率)がでてこないようにϵ0やμ0に取り込まれている。そのせいもあってϵ0は、基本定数のくせに中途半端な値を持っている。円周率が現れるのは積分的な関係を微分形で表したせいなんだけど、当然境界条件なんかを考慮した積分型の方程式に書き換えれば今度は円周率がぽろぽろ現れてしまう。π=1だったらよかったのに(そういえば誰かのSFに、円周率を十進以外で小数展開したら、ある進数のある桁以降から0と1だけが並んでそれをラスタに並べると円が現れる、なんて言う話で終わるのがあったな。あれ、なんだっけ?)。
僕が学生の頃は電磁気学の講義ではMKSAが通して使われて、量子力学や個体物性の講義ではcgsが使われていた。そのころは物理量の値が10何乗倍違うだけでなくて、なんで方程式の形まで違うんだろう、と不思議だった。誰かが「水の量をグラムで表したりリットルで表したりするのと同じ」と言ってた。それは比喩としてはいいかもしれないけど電磁場の単位系の話とは違うだろ、と思ったんだけど、実は今でもちゃんと理解できていない。誰かちゃんと教えて。
1.1.3 Veselagoによる議論
簡単な前置きはここまでにして、Veselagoは、Pendryさんが挙げていた論文(これはそのコピー)の中で式-8の場合、つまり誘電率と透磁率が両方とも負の場合の光がどうなるかを説明している。それに従ってみる(ただし、VeselagoさんはCGS単位系を使ってるのでMKSAに書き直す)。まえに書いた式-3の波動方程式ではなく、電荷や電流のない場合のMaxwellの方程式と、物質方程式 から始める(この4つの式から、例えばEだけを残すように変形すると式-3の波動方程式がでてくる)。これに平面波の式 を代入して整理すると となる(×はベクトル積を表す)。 この式から、EとHとkはお互いに直交することがわかる。また、この式からも意味があるのは式-7か式-8の場合に限られることはわかる。
EとHとkの成分を並べた行列G を考える。ところで、Veselagoはこの行列をそれぞれのベクトルの方向余弦を使って作ってるけど、同じことだよな、きっと。
Gの行列式は普通の媒質の場合、つまり式-7の場合、正になるが、式-8の場合には負になる。式-19、20ですでにわかるように、正の場合はEとHとkが右手系をなす。つまりEを親指、Hを人差し指、kを中指にしてそれぞれ自然に直交させると右手に対応する。一方負の場合、これは左手に対応する。
このことから式-8の媒質を左手系媒質(材料)と呼ぶ。
そして、EとHを基準に考えると式-7と式-8ではkの向きが反転する(ま逆になる)ことになる。kが反転するということは、さっきの位相速度が逆を向くということになる。位相速度が逆を向くということは、屈折率が負になる、ということになる。
1.1.4 エネルギーの流れる方向は?
一方ポインティングベクトルSは なので、Gの行列式の符号によらない。そして誘電率と透磁率が両方とも正なら、式-19、20と見比べればポインティングベクトルの方向とkの方向は一致する。そして式-8の場合はその逆、つまりエネルギーの流れる方向と、位相の進む方向は逆になるという実に不思議なことが起こる。これはなかなか直感が抵抗してしまうけど僕は、例えば海で、波は岸に打ち寄せてるのに、人のいない浮き輪が沖に流されていくような場合を思い浮かべた。そう言う経験はある。おお、あれって、メタマテリアルだったのか(違うって)。
位相速度の方向とエネルギーの流れる方向が違うというのは、異方性のある誘電体ではあたりまえなので 、単に式-7の場合の、しかも等方的な媒質ばかりに慣れてしまっているだけなんだろう。
1.1.5 結論
ようするに、EとHとkが左手系をなす、というのが式の上では本質的であって、屈折率が負というのはその光学的な解釈である、ということが言える。「屈折率が負」と言われてビビって調べはじめたけど、理工系の学部の学生にわかる程度の簡単なものだった。本当はこのような式-7の場合の媒質の中でもポインティングベクトルは式-23で書けるのか、という検証は必要である。これは電磁波のエネルギーをどうやって計算するか、というところまで立ち戻ってしまうのでこれ以上やらないことにする。きっとちゃんと誰かがやってるだろう。
1.1.6 ところで、
ちなみに、Maxwellの方程式を勉強した頃、rotの入った式の符号が違っていて覚えにくかった。符号が一致してれば覚えやすくて、対称性もいいのに、と思っていた。実は、これが同符号だと式-19、20のふたつの式が同符号になって解がなくなってしまう。つまりMaxwellの方程式が意味のある場を表すためにはこれは異符号でなければならない。まあ、もちろんϵ0なんかに符号を取り込んでしまえば式の上では対称性はよくなるけど、たぶんそうすると学生ならよけい混乱して、電磁気学の単位を落とすやつが2割は増えただろう。さらにちなめば、MKSA単位系というのは基本的な方程式にπ(円周率)がでてこないようにϵ0やμ0に取り込まれている。そのせいもあってϵ0は、基本定数のくせに中途半端な値を持っている。円周率が現れるのは積分的な関係を微分形で表したせいなんだけど、当然境界条件なんかを考慮した積分型の方程式に書き換えれば今度は円周率がぽろぽろ現れてしまう。π=1だったらよかったのに(そういえば誰かのSFに、円周率を十進以外で小数展開したら、ある進数のある桁以降から0と1だけが並んでそれをラスタに並べると円が現れる、なんて言う話で終わるのがあったな。あれ、なんだっけ?)。
僕が学生の頃は電磁気学の講義ではMKSAが通して使われて、量子力学や個体物性の講義ではcgsが使われていた。そのころは物理量の値が10何乗倍違うだけでなくて、なんで方程式の形まで違うんだろう、と不思議だった。誰かが「水の量をグラムで表したりリットルで表したりするのと同じ」と言ってた。それは比喩としてはいいかもしれないけど電磁場の単位系の話とは違うだろ、と思ったんだけど、実は今でもちゃんと理解できていない。誰かちゃんと教えて。
2011-08-28 21:14
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