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ちょっと前の論文を読んでみる - その12 [趣味のメタマテリアル]

エヴァネセント波ってなんだっけというのを昨日思い出した。普通の(真空を含めた)媒質の内部では発生源からちょっと離れるだけで、エヴァネセント波は無くなってしまう。でも、これが再現できれば波長よりも小さい構造を見ることができたことになる。それがPendryさんの論文のキモらしい。今日は僕が理解できたことを整理してみる。

1.4.2  そんなエヴァネセント波がメタマテリアルに入射すると

そのようなエヴァネセント波は急速に減少するけど、もし、ϵ = −1かつμ = −1の媒質の境界面までたどり着いたとすると、そしてもし、Pendryさんの式-21の結論が正しいとすると、その媒質内部では逆に指数関数的に増大を始める。もう一方の境界にたどり着くまで増大する。次にもう一方の境界面を通過して通常の媒質(真空)に出るとまた指数関数的に減少する、ということになる。これを図-1に模式的に描いてみた。ちょっとこれを説明してみる。
0910fig01.png
図の上にはPendryさんの論文にある図-1を描いてある。図の左端のAの位置には光源であるダイポールがある。

図の下半分にはエヴァネセント波の振幅をグラフ的に示してある。上はリニアスケールで、下はログスケールで描いてある。エヴァネセント波は指数関数的に減少するのでログで描くと振幅の大きさは直線的に小さくなる。

そしてBの位置でϵ = −1かつμ = −1の媒質に入射すると、今度は振幅がどんどん大きくなる。これも指数関数的なので、ログで描くと傾きは減るときと同じで逆向きの直線になる。

そしてエヴァネセント波の振幅は、媒質中のいったん焦点を結ぶ位置Cで光源と同じになる。

さらにこの媒質を進むと、光源での振幅の大きさを超えてどんどん大きくなる。

そしてもう一方の境界Dで振幅の大きさは最大になる。そして境界面を通過して通常の媒質に入るとそこから指数関数的な減少に再び転じる。

そして、ちょうど像の位置Eで、エヴァネセント波の振幅の大きさは光源と同じになる。

像の位置Eを超えたFからEを見ると、エヴァネセント波は光源の位置Aから出ているのとまったく同じに見える、というわけらしい。

1.4.3  エネルギー保存則は?

場の大きさはもとのダイポールの近傍よりも大きくなってしまうけど、エネルギー保存の法則を破っているわけではない。なぜなら通常の媒質内でエヴェネセントな場はエネルギーを運ばない。そしてϵ = −1かつμ = −1の媒質の内部であってもエヴァネセントな場はやはりエヴァネセントなままである。どちらの媒質の中であってもエネルギーを運ぶのは伝播場だけであり、それは(ポインティングベクトルの議論を思い出せば)通常の媒質とまったく同じようにふるまう。したがって、これがエネルギー保存則に違反するなら、通常媒質でも同じである、ということである。

場の大きさがなにもしないのに大きくなってしまっていいのか、というとそれは通常の媒質内でもありえる。たとえば二つの光束が出会ったところにできる干渉縞や、多層の光学薄膜の内部など、入射場の大きさよりも大きいところができる。レンズの焦点位置の場も、ある意味で増幅されているということができるかもしれない(場をかき集めている、と言った方がいいかもしれないけど)。また表面プラズモン増強なんていう現象では、何桁も場の大きさが増幅される。これらはどれもエネルギー保存則を満たしている現象である。

ただ、こういった通常の媒質で起こる場の増幅は、干渉や共鳴といった、波の強め合いが何らかの形で起こっている場合ばかりであが、Pendryさんの増幅は干渉、共鳴とは無関係である。
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