「チック・コリア&上原ひろみ Duet」 [ジャズ]
2、3年ほど前にリリースされたんだけど2枚組のせいもあって値段が高いので二の足を踏んでいた。先日たまたま中古で見つけたので買った。
チック・コリアは昔から好きなピアニストで80年代に入ってからは来日のたびに聞きにいったりした。いつも最善の状態というわけではなくがっかりすることもあったけど、ジャズで好きなプレイヤというと若くして物故した人が多くて、生を聞く機会がどうしても少なくなる(死因は多い順にクスリ、エイズ、車なんだよな)ので僕にとっては貴重。
上原ひろみは昔なにかのきっかけでライブのビデオを見て、お、これは、と思ったんだけどCDを聴くとなんか、ふつー、と言う感じでどうもまどろっこしかった。
その二人のデュオなので気になっていた。最初聴いてみると、二人のピアノのタッチがそっくりで全然区別できなかった。しかも二人とも手数がやたらと多くて音がめちゃ多い。はっきり言って暑苦しい。
しかも二人が競うように難しいことをする。いったいどんなスケールを想定してこんなテンション和音を弾いているのか聴いていてわからないことが何度もあるし、リズムが複雑でついていけないことも何度もあった。それでも結局トーナリティは逸脱しないし、4拍子あるいは3拍子で始まれば最後までその拍子で終わっている。あの特徴的なコード進行の「Humpy Dumpy」なんか、ぐちゃぐちゃに崩しまくってるのに、コードと拍子はほとんど最後まで維持したまんま(最後はもう聴いていて確認できない)。こういうのは真剣に聴こうとすると神経がすり減ってしまう。
しかし、何度か聴くうちに二人の違いがわかるようになってきた。上原のほうがコリアよりもパーカッシブで、コードから想定されるスケールからあまりはずれない。逆にコリアはメロディックでレガートで、経過音的な半音階を弾くことが上原よりもずっと多い。録音のせいがあるのかもしれないけど、上原のほうがタッチが硬く筋肉に力が入っている音になっていて、オスティナート(同じ音型やリズムをずっと繰り返すこと)を頻繁に弾くけど、コリアは(上原と比較すれば)優しいタッチで、短い繰り返しが少なく、しかも案外ペダルを細かく踏んでいることがわかる。上原はペダルをほとんど使わない。
さらにもっとよく聴くとコリアが聞き役にまわっていることが多いことがわかる。大人の余裕で若者に花を持たせているように、単に伴奏にまわるのではなくて上原が導入する新しい要素を追認するようにフレーズやリズムを模倣したりフェイクしたり、という場面がかなりある。
残念ながらこなれた演奏とは言えないので、漫然と聴いているとごちゃごちゃした感じだけがつのってちょっとうんざり感がしてしまう。かといってジャズの一期一会の面白さがあるほどの白熱はなくて、そう言うのを期待すると生ぬるい、という感じ。
とはいうものの、テクニシャン二人の自由な遊びは、どんな困難や複雑さも軽々と乗り越えてしまってある意味すがすがしい。最後の最後に「Spain」でキメのユニゾンのフレーズを上原が見失って一瞬しどろもどろになる(このトラックの11:17ぐらい)のはご愛嬌。あれはコリアが悪い。
ところでどうでもいいけど、よく聴くと客席からか、食器ががちゃがちゃ言うような音が入っている。これ、ディナーショーとかだったの? こんなの聴きながら飯なんか食うと絶対胃を悪くする。健康のためにはやめた方がいい。
チック・コリアは昔から好きなピアニストで80年代に入ってからは来日のたびに聞きにいったりした。いつも最善の状態というわけではなくがっかりすることもあったけど、ジャズで好きなプレイヤというと若くして物故した人が多くて、生を聞く機会がどうしても少なくなる(死因は多い順にクスリ、エイズ、車なんだよな)ので僕にとっては貴重。
上原ひろみは昔なにかのきっかけでライブのビデオを見て、お、これは、と思ったんだけどCDを聴くとなんか、ふつー、と言う感じでどうもまどろっこしかった。
その二人のデュオなので気になっていた。最初聴いてみると、二人のピアノのタッチがそっくりで全然区別できなかった。しかも二人とも手数がやたらと多くて音がめちゃ多い。はっきり言って暑苦しい。
しかも二人が競うように難しいことをする。いったいどんなスケールを想定してこんなテンション和音を弾いているのか聴いていてわからないことが何度もあるし、リズムが複雑でついていけないことも何度もあった。それでも結局トーナリティは逸脱しないし、4拍子あるいは3拍子で始まれば最後までその拍子で終わっている。あの特徴的なコード進行の「Humpy Dumpy」なんか、ぐちゃぐちゃに崩しまくってるのに、コードと拍子はほとんど最後まで維持したまんま(最後はもう聴いていて確認できない)。こういうのは真剣に聴こうとすると神経がすり減ってしまう。
しかし、何度か聴くうちに二人の違いがわかるようになってきた。上原のほうがコリアよりもパーカッシブで、コードから想定されるスケールからあまりはずれない。逆にコリアはメロディックでレガートで、経過音的な半音階を弾くことが上原よりもずっと多い。録音のせいがあるのかもしれないけど、上原のほうがタッチが硬く筋肉に力が入っている音になっていて、オスティナート(同じ音型やリズムをずっと繰り返すこと)を頻繁に弾くけど、コリアは(上原と比較すれば)優しいタッチで、短い繰り返しが少なく、しかも案外ペダルを細かく踏んでいることがわかる。上原はペダルをほとんど使わない。
さらにもっとよく聴くとコリアが聞き役にまわっていることが多いことがわかる。大人の余裕で若者に花を持たせているように、単に伴奏にまわるのではなくて上原が導入する新しい要素を追認するようにフレーズやリズムを模倣したりフェイクしたり、という場面がかなりある。
残念ながらこなれた演奏とは言えないので、漫然と聴いているとごちゃごちゃした感じだけがつのってちょっとうんざり感がしてしまう。かといってジャズの一期一会の面白さがあるほどの白熱はなくて、そう言うのを期待すると生ぬるい、という感じ。
とはいうものの、テクニシャン二人の自由な遊びは、どんな困難や複雑さも軽々と乗り越えてしまってある意味すがすがしい。最後の最後に「Spain」でキメのユニゾンのフレーズを上原が見失って一瞬しどろもどろになる(このトラックの11:17ぐらい)のはご愛嬌。あれはコリアが悪い。
ところでどうでもいいけど、よく聴くと客席からか、食器ががちゃがちゃ言うような音が入っている。これ、ディナーショーとかだったの? こんなの聴きながら飯なんか食うと絶対胃を悪くする。健康のためにはやめた方がいい。
2011-10-19 22:46
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11/10 チック・コリアが、サンフランシスコに再び来るみたいです...
http://www.sfsymphony.org/Buy-Tickets/2019-20/Piano-Recital-with-Chick-Corea,-From-Mozart-to-Mon.aspx
Sun, Nov 10, 2019 at 7:30pm
Davies Symphony Hall
Tickets will go on sale July 22, 2019
Piano Recital with Chick Corea, From Mozart to Monk
by サンフランシスコ人 (2019-03-15 03:03)
コメントありがとうございます。
SFSOの定期ではなくてソロのようですね。「FROM MOZART TO MONK」のタイトルはいかにもチックらしいですが、それはつまりマイルス以降のモードはやらないということでしょう。ならベートーヴェンシューベルトメンデルスゾーンシューマンワーグナーが含まれるか、というとそれはないでしょう。
なんてどうでもいいツッコミは無用で、聴けば楽しいはずです。
チックは以前(80〜90年代)日本に毎年のように来ていたことがあって、僕は毎年のように聴きに行っていました。チックは今でも好きなピアニストの一人です。
もうすぐ久しぶりのトリオでの来日がありますが、僕が行けるところは東京ブルーノートだけで、あそこは高い割にちゃんと聴けないので僕は好きではなくて行く気がしません。残念です。
録音が出れば聞いてみたいと思います。
by decafish (2019-03-15 21:21)