煽りレンズの歪曲 - その2 [考え中の問題]
前回、レンズの式から同次座標を使ってScheimpflugの条件を導いた。Scheimpflugの条件とは平面の物体面と平面の像面を延長した面が交わる直線を、レンズの主平面(の延長)が含むようにレンズの姿勢を調整すれば結像関係を満たす、というものでる。つまりScheimpflugの条件を満たすとレンズから距離が違っていても平面上にあればフォーカスずれはおこらないようにできる。
今日はほんのちょっと簡単化して、歪曲収差を計算する。これで僕の目標は達成されたことになる。
と式-11は となる。そして式-14は となる。θ = 0の場合は物体面が光軸に垂直な場合で、そのときは横倍率βは像面上で定数(=f/(f−z0))だけど、像面が傾くと一定ではなくなる。式-2.1は倒れの方向であるsだけに依存してtには依存しない。ようするに結像していても遠い物体は小さい像になるというあたりまえのことを表している。
式-20をsについて展開すると となってf << z0のとき(リレー系みたいな光学系以外では普通の条件)にはsの1次の項が支配的な、非対称な歪曲収差が発生するとみなすことができる。もちろんこれは歪曲ではなくて倍率が位置に依存している、と考えても全く同じ結論になる。僕の場合はマシンビジョンで同次座標のマトリクスの一部としてしまえるので歪曲収差に含めてしまった方が簡単だけど、何に使いたいか、そのときどう考えるのが便利なのか、にあわせて選択すればいい、ということになる。
でも、レンズの式から出発したことからわかるように、厚み0のレンズを含む平面というのは主平面のことである。したがって厚いレンズの場合に前側と後ろ側のふたつに主平面がわかれるけど、それを同一視すれば厚み0のレンズの場合と同じである、というのが近軸理論からの帰結である。 レンズが厚い場合のScheimpflugの条件は図-3のようにふたつの主平面HとH'を同一視したときにその平面上で物体面と像面が交わるという条件になる。
ちなみに、これまでの議論からわかるように、Scheimpflugの条件は「主平面」を考えなければならない。たまに「瞳面」としている記述をみかけるが、それは誤りである。例えばテレセントリックなレンズの場合では瞳は無限遠にあるが、たいてい主平面はレンズ近傍にある。まあテレセンレンズを煽る人はまずいない(それはテレセンレンズの使い方を知らない人だろう)ので、それは極端な例だけど。
なお、主平面の定義を像の位置が物体の位置と一致する面だとする(つまりレンズの屈折力が効かない面)流儀もある。その場合、結像関係にある物体面と像面をそれぞれ延長した面が交差するとき、その交線は定義から主平面に含まれる、ということになる。
理想レンズによる結像をレンズの式からではなく、射影変換として出発すればこの流儀のほうが簡単だし、近軸諸量の定義も射影変換の特徴量として考えることができる。ただし、直感性には乏しい。そこで最初はわかりやすいレンズの式から出発して、一通り理解できたら射影変換とみなすやりかたで見直せば頭の中が整理されるので、その手順がオススメである。
とうぜんそういった収差はレンズの設計次第で、市販されている煽ることのできる写真用レンズは像面湾曲や歪曲がレンズ単体では少なく、また視野も広く(大きな画角が)取れるように設計されていて、その分お高くなっている。
ところで、僕にとってはどうでもいいけど僕から見ると若い光学屋はすぐCodeVやZemaxを使いたがる。でもそういうので試したあとは、自分の手で計算してみようぜ。近軸理論がなぜ存在しているかピンとこないと思っている光学屋は特に....
今日はほんのちょっと簡単化して、歪曲収差を計算する。これで僕の目標は達成されたことになる。
2.1 単純な場合
僕は最終的には煽りレンズの歪曲収差を含めて形状測定から表示まで座標変換として扱いたいので、どう次座標を使った議論をしてきたけど、わかりやすくするために特別な場合を考えてみる。式-11のviを としてみる。つまり、物体面がy軸周りに回転している(倒れている)場合を考える。と式-11は となる。そして式-14は となる。θ = 0の場合は物体面が光軸に垂直な場合で、そのときは横倍率βは像面上で定数(=f/(f−z0))だけど、像面が傾くと一定ではなくなる。式-2.1は倒れの方向であるsだけに依存してtには依存しない。ようするに結像していても遠い物体は小さい像になるというあたりまえのことを表している。
式-20をsについて展開すると となってf << z0のとき(リレー系みたいな光学系以外では普通の条件)にはsの1次の項が支配的な、非対称な歪曲収差が発生するとみなすことができる。もちろんこれは歪曲ではなくて倍率が位置に依存している、と考えても全く同じ結論になる。僕の場合はマシンビジョンで同次座標のマトリクスの一部としてしまえるので歪曲収差に含めてしまった方が簡単だけど、何に使いたいか、そのときどう考えるのが便利なのか、にあわせて選択すればいい、ということになる。
2.2 レンズが厚い場合
これまでの理想レンズは厚みが0としてきた。もう少し条件を緩めて普通の組レンズのような厚みがある場合を考えて見る。でも、レンズの式から出発したことからわかるように、厚み0のレンズを含む平面というのは主平面のことである。したがって厚いレンズの場合に前側と後ろ側のふたつに主平面がわかれるけど、それを同一視すれば厚み0のレンズの場合と同じである、というのが近軸理論からの帰結である。 レンズが厚い場合のScheimpflugの条件は図-3のようにふたつの主平面HとH'を同一視したときにその平面上で物体面と像面が交わるという条件になる。
ちなみに、これまでの議論からわかるように、Scheimpflugの条件は「主平面」を考えなければならない。たまに「瞳面」としている記述をみかけるが、それは誤りである。例えばテレセントリックなレンズの場合では瞳は無限遠にあるが、たいてい主平面はレンズ近傍にある。まあテレセンレンズを煽る人はまずいない(それはテレセンレンズの使い方を知らない人だろう)ので、それは極端な例だけど。
なお、主平面の定義を像の位置が物体の位置と一致する面だとする(つまりレンズの屈折力が効かない面)流儀もある。その場合、結像関係にある物体面と像面をそれぞれ延長した面が交差するとき、その交線は定義から主平面に含まれる、ということになる。
理想レンズによる結像をレンズの式からではなく、射影変換として出発すればこの流儀のほうが簡単だし、近軸諸量の定義も射影変換の特徴量として考えることができる。ただし、直感性には乏しい。そこで最初はわかりやすいレンズの式から出発して、一通り理解できたら射影変換とみなすやりかたで見直せば頭の中が整理されるので、その手順がオススメである。
2.3 実際のレンズ
現実のレンズではこれに収差が加わる。像面湾曲があると直線の像は曲がって場所によってフォーカスがずれる、ということになる。また、歪曲収差があると、さっき計算した煽りによる歪曲収差とレンズそのものの歪曲収差の積(1次近似としては)になる。とうぜんそういった収差はレンズの設計次第で、市販されている煽ることのできる写真用レンズは像面湾曲や歪曲がレンズ単体では少なく、また視野も広く(大きな画角が)取れるように設計されていて、その分お高くなっている。
ところで、僕にとってはどうでもいいけど僕から見ると若い光学屋はすぐCodeVやZemaxを使いたがる。でもそういうので試したあとは、自分の手で計算してみようぜ。近軸理論がなぜ存在しているかピンとこないと思っている光学屋は特に....
2016-01-15 21:02
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