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ガウシアンビームの光学 - その13 [ガウシアンビーム]

ちょっと久しぶりになってしまって忘れると困るので慌てて続ける。これまでで「Helmholtzの方程式」「平面波解」「近軸波動方程式への近似」「軸対称方程式」「解の仮定」「解の具体的な定式化」「ビームのエネルギー」「積分定数$z_R$の物理的な意味」「$z_R$の限界」「放物面波解」「Gouy位相」「非軸対称解」とやってきた。

今日は高次解について.....

4.2  軸非対称方程式の高次解

なんども書くけど、近軸方程式は斉次の線形方程式なので、独立な解は無限にある。解の集合として直交関数系を選ぶとあとあと便利である。

さらに他の解をさがすために、さっきの軸非対称な解を拡張して \begin{equation} \psi_0 \propto P(x)Q(y)F(z) \exp \left(- k\frac{x^2}{2g_x(z)} \right) \exp \left(- k\frac{y^2}{2g_y(z)} \right) \end{equation} という形を置いてみよう。つまり$x$と$y$の依存性を増やしてみる。ただし変数分離はやはりできるとする。これをまた式-3:5に代入してみる。 項数が増えるので注意して、もし代数計算ができるMathematicaみたいなのとかが使えるなら、やらせたほうが安心である。代入して整理すると \begin{align} \Bigg( &x^2 \frac{k^2}{g_x(z)^2}\left(1+i g'_x(z) \right) \nonumber \\ &+ y^2 \frac{k^2}{g_y(z)^2}\left(1+i g'_y(z) \right) \nonumber \\ &+ k \left( 2 i F'(z) -\frac{1}{g_x(z)}-\frac{1}{g_y(z)} \right) \nonumber \\ &+ \frac{P''(x)}{P(x)} - \frac{2k x P'(x)}{g_x(z)P(x)} \nonumber \\ &+ \frac{Q''(y)}{Q(y)} - \frac{ 2k y Q'(y)}{g_y(z)Q(y)} \; \Bigg)\; \psi_0 =0 \nonumber \end{align} これをまた係数ごとに分解すると \begin{align} 1+i g'_x(z) &= 0 \nonumber \\ 1+i g'_y(z) &= 0 \nonumber \\ k \left( 2 i F'(z) -\frac{1}{g_x(z)}-\frac{1}{g_y(z)} \right) & \nonumber \\ + \frac{P''(x)}{P(x)} - \frac{2k x P'(x)}{g_x(z)P(x)} & \nonumber \\ + \frac{Q''(y)}{Q(y)} - \frac{ 2k y Q'(y)}{g_y(z)Q(y)} &= 0 \nonumber \end{align} となるが、3つめの式はうまいぐあいに変数が別れている(いや、変数分離の形を仮定したので当たり前だし)。

例によって定数$p$と$q$を導入して整理すると結局 \begin{align} 1+i g'_x(z) &= 0 \nonumber \\ 1+i g'_y(z) &= 0 \nonumber \\ k \left( 2 i F'(z) -\frac{1}{g_x(z)}-\frac{1}{g_y(z)} \right) &=-(p+q) \nonumber \\ P''(x) - \frac{k}{g_x(z)}2x P'(x)+pP(x)&=0 \nonumber \\ Q''(y) - \frac{k}{g_y(z)}2y Q'(y)+qQ(y) &=0 \nonumber \end{align} このうち$P(x)$と$Q(y)$に関する2階の線形微分方程式は「エルミート微分方程式」と呼ばれるものの変形である(ちょっと変数変換すると本来のエルミート微分方程式の形なる($x \rightarrow\xi = g(z)x/k $と変数変換すればいい)。この形の方程式のままでもMathematicaに解かせるとちゃんとエルミート多項式を含んだ解を返してくる)。量子力学の初歩をやったことのある人は1次元調和振動子のシュレーディンガー方程式の解としてエルミート多項式を思い出すだろう。僕は大学の2年のとき苦しんだので思い出す。エルミート多項式は定義域が$\pm \infty$で、ガウシアンを重みにして積分すると直交する。

この高次解は、形が面白いのか色々な教科書に絵が載っている。しかし「こんなになるよ」とあるだけで、ちゃんと導いてくれている教科書はそれほど多くはない。たぶん計算がめんどくさいからだろう。

4.2.1  高次解に関する無駄話

ちなみに僕が大学で受けた量子力学の講義(40年前だわ)では、いきなりエルミート多項式を示すのではなくて、解をガウシアンと不明の式の積の形に仮定して、不明の式を級数展開して、適当な係数を選ぶとほらこんなふうに無限遠で発散する、無限遠で0になるためには級数が途中で切れないといけない、そうするとどんな係数でもOKではなくて、方程式を満足するためには決まった条件を満たさないといけない、それが整数で指定される、それがすなわち量子化である、というような話の持って行きかたをする先生で、連続な場に自然に整数が現れる量子力学の不思議さをそのとき初めて思った。それまでついて行くのが苦しかった量子力学の講義がそれで一気に面白くなった。数学を優先していきなりエルミート多項式を示す、というふうなやりかたをしなかったその先生は、今思えば偉い先生だったと思う。ところでその先生は「量子力学I」「量子力学II」両方とも僕には「可」しかくれなかった。面白いと思えることと成績とは別だ、というのはその通りだけど。

まあ、それはいいとして、他の式はこれまでと全く同じで、それを解くとそれぞれガウシアンビームの形になって、最後のふたつの式に$g_x(z)$と$g_y(z)$を代入して($z$にしか依存しないので方程式にとっては定数である)エルミート微分方程式として解けばいい、ということになる。

結果はエルミート多項式とガウシアンの積の形の解が得られる。ここではもうめんどくさいのでやらない。よその真面目なところやちゃんとした教科書を参考にしてほしい。$z$に垂直な面内の強度分布の絵をいろいろ見ることができる。

数学的には面白いけど応用を考えると高次モードは楽しくない。半導体レーザなんかで高次モードが現れたときは「レーザが壊れた」「お亡くなりになった」というのが普通である。次数がひとつ上なだけのピークがふたつになるモードでさえ、半導体レーザでは注入電力のわりに光出力は小さいし、電流注入を続けるとガウシアンのモード(最低次のモード)の発振を抑えている原因領域(結晶欠陥なんか)が拡大するため、そのうち劣化が進行して光らなくなってしまう(それでもたいていLEDとしては光る。反転分布があっても光ロスの方が大きくてレーザとしては発振しない)。

ちなみにエルミート多項式とガウシアンの積はFourier変換してもエルミート多項式とガウシアンの積の形になるという特徴を持っている。このあとでやるつもりのFraunhofer回折を受けても変形しないという結果がこのことから導かれる。

さらにちなみに、回転対称な方程式-4:3に$P(x)$、$Q(y)$と同じような$R(r)$のような依存性を仮定しても$r^{-1}$の項が残って、エルミート方程式にはならない。その代わりにこんどはラゲールの微分方程式と呼ばれる形になって、これはこれで研究されている。この解は位相特異点(等位相面が渦巻型になったその中心)を持っているので数学的な面白さだけではなくて応用も研究されている。しかしこの解の実現はさらに難しくて、半導体レーザではまず作ることが不可能で、円筒形の共振器を持ったガスレーザぐらいしか僕には思いつかない(実現はすごく難しいだろう)。あるいは普通のガウシアンビームにあとから位相変化(収差)を与えて無理やり作るぐらいしかない(そういう論文はみつかる)。

僕は今のところ数学的な興味以上の興味はないのでこれ以上は高次モードには突っ込まない。

とはいうものの、次に別の形の解を探索する。
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