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ガウシアンビームの光学 - その22 [ガウシアンビーム]

ガウシアンビームのお話の続き。教科書的なガウシアンビームの話を「その1」から「その15」までに、そのあと光学に固有の問題のために代表的な数値の確認近軸理論をおさらいして、瞳から出たガウシアンビームがウェストを迎える様子$z$、 $z_R$とは別のパラメータガウシアンビームの場の特定法近軸マトリクスのおさらいとやってきた。今日からガウシアンビームの伝播を近軸マトリクスで表す話に突入する。今日はまずガウシアンビームの複素パラメータを定義する。それに関して些細ではあるけど困った齟齬について....

6.4.2  近軸マトリクスによるガウシアンビームの伝播計算の準備

近軸マトリクスを使う方法ではガウシアンビームの状態を$g(z)$を使って表す。

$g(z)$がどんなでどういう物理的な意味があったかを思い出すと \begin{equation} g(z) = i z+z_R \end{equation} だった。もともと解を \begin{equation} \phi_0 \propto F(z) \exp \left(-\frac{k r^2}{2g(z)}\right) \nonumber \end{equation} と仮定して近軸方程式を満たすようにした。係数$F(z)$のほうは$g(z)$が決まると決まってしまうので置いておくと \begin{align} \exp \left(-\frac{k r^2}{2g(z)}\right) &= \exp \left(-\frac{k r^2}{2(i z+z_R)}\right) \nonumber \\ &= \exp \left(-\frac{k z_R r^2}{2(z^2+z_R^2)}+\frac{ikz r^2}{2(z^2+z_R^2)} \right) \nonumber \\ &= \exp \left(-\frac{r^2}{w^2(z)}+i\frac{kr^2}{2R(z)} \right)\nonumber \end{align} となって、エクスポネンシャルの中の1項目が実数なので$r$に関してガウシアンの分布を与えて、2項目が純虚数なので波面(位相)を与えるということになる。つまり$g(z)$は一つの複素数によって、これまでやってきたビーム幅と波面といったガウシアンビームのパラメータを確定させることができる(ちなみに$F(z)$のほうを思い出すとエネルギーが保存するように振幅の係数になる部分とGouy位相の部分とが$F(z)$から出てきていた)。

6.4.3  ガウシアンビームのパラメータと近軸追跡との不整合

ここで、ひとつ問題が発覚する。ガウシアンビームの波面を表す$R(z)$は \begin{equation} R(z) \equiv z \left(1+\left(\frac{z_R}{z} \right)^2\right) \end{equation} という定義だった。これは$z>0$の領域で正の値をとる。Abbe不変量を波面の形に変形したときに示したように、近軸追跡に限らず光学の分野では、曲率半径は中心が右側にあるときに正の値をとるように決めるのが一般的なので、$R(z)$の符号は反対になる。

これはガウシアンビームの伝播を近軸マトリクスで扱うときに問題になる。

多くの教科書では近軸マトリクスの符号を逆にしておいて、光学で一般的に使われている定義との違いに言及しない(無視する)ということがされているように僕には思える。

この方針はガウシアンビームを近軸方程式から導いている教科書だけでなく、単に計算の仕方だけを示している(導出していない)教科書でもそうであるように見える。ちゃんと定義している教科書では曲率の符号を「面が曲率中心から見て右にある場合を正」としているのが多いように思える。しかしその場合でも光学の教科書で見られる定義とは逆だと指摘している教科書を僕は見たことがない。光学の方がかってにそんな符号の取り方をしているんだ、と言いたいように読める。

まあ、確かにガウシアンビームの波面の曲率の符号は方程式の解から来ているので、なかなか変えるのは難しい。光学の方も、どっちでもいいのにたまたまそう選んだわけではなく、面と光軸の交点を原点にして面形状を表現したときに、自然な符号のとりかたになっている。

こういう境界領域ではたまに発生する問題である。しょうがない。

僕はガウシアンビームを作る立場ではなくて使う立場なので、近軸マトリクスは普段使っているし厳密な光線追跡など同じ符号の取り方をする場合がほぼすべてである。

したがって僕としては波面の曲率$\chi(z)$を \begin{equation} \widetilde{\chi}(z) \equiv -\chi(z) \end{equation} として符号を近軸マトリクスの定義と同じにした$\widetilde{\chi}(z)$のほうをを波面の曲率として使うことにする。

それ以外で不整合は起こらない(が符号には注意する必要がある)。

6.4.4  複素パラメータの定義

ここで次の量$q_j$を定義する。 \begin{equation} q_j \equiv \,\frac{g(z_j)}{i \,n_j} = \frac{z_j+i z_R}{n_j} \label{qdefinition} \end{equation} ここで、$z_j$は$j$番目の境界の光軸上の位置で、$n_j$は$j$番目の境界面の「後ろ」の媒質の屈折率である(わざわざ注意したけど、屈折率の指定のしかたは近軸マトリクスでの定義と同じである)。

前議論したように$z$と$z_R$があれば(ある波長を前提にした)ガウシアンビームの場を特定できる。したがってある位置でこの$q_j$が決まれば(一様な媒質内での)ガウシアンビーム全体が決まる、というわけである。これをガウシアンビームの複素パラメータという。

なぜ屈折率や虚数単位をかけるか、というと近軸マトリクスの計算とつじつまを合わせるため。教科書によってはこの$i g(z)$なんかをこれまでやってきた$g(z)$のかわりに近軸方程式の解に仮定することもある(米国の教科書にそのスタイルが多い)。

そうすると解に含まれていたものをそのまま近軸マトリクスでの計算に使えるので、一貫性があってわかりやすい。しかしその場合、本来ガウシアンになってほしくて解の形を仮定しているのに、なぜかあからさまに虚数単位が含まれてしまう。もちろん結論に変わりはないけど、僕はすごく気持ちが悪くて気に入らない。のでここで言い訳する方を選んだ。

6.4.5  複素パラメータ定義に屈折率を含めるか

それと、僕のみたすべての教科書が媒質の屈折率を含めずに定式化している。これはどこから出て来たかというと、元をたどれば波数ベクトル$k$であって、媒質によって$k$が変わる(分散がある)のを考慮するためである。厳密に言えばこれがないと本来の近軸マトリクスとは不整合である(どこに不整合が現れるかはあとでやる)。$n$を含めたこの形で定式化してはじめて近軸理論に現れる式と同じ形に統一できる。

ところが、こんなことを気にしている教科書を僕は見たことがない。ガウシアンビームの教科書ではたいていレンズは厚さ0の薄肉レンズとして扱われ、問題にするガウシアンビームは常に空気中での値しか必要とされていない(つまり屈折率は常に1)ということと、近軸マトリクスは計算のための方便という面が強くて、他の光学理論との整合性は問われないからだろうと思われる。

どちらにしても僕のやり方は特殊で、よそではされていない、ということに注意してほしい。「違ってるじゃないか」と文句を言われても困る。このやり方が気に入らなければ、他所様を参照していただきたい。ただし他所にある定式化では、光学屋が使う近軸理論とは両立できない(そもそも最近は近軸マトリクスを自前であつかう光学屋は絶滅危惧種なので問題にさえならないようだけど)。

言い訳はこのぐらいにして、次の横ベクトル$\vectorize{v}_j$ \begin{equation} \vectorize{v}_j \equiv \left(q_j,1 \right) \end{equation} を定義する。これになんの意味があるだ、と聞かないでもう少し付き合ってほしい。次回、これと近軸マトリクスとを組み合わせる。
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