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ガウシアンビームの光学 - その23 [ガウシアンビーム]

ガウシアンビームのお話の続き。教科書的なガウシアンビームの話を「その1」から「その15」までに、そのあと光学に固有の問題のために代表的な数値の確認近軸理論をおさらいして、瞳から出たガウシアンビームがウェストを迎える様子$z$、 $z_R$とは別のパラメータガウシアンビームの場の特定法近軸マトリクスのおさらい近軸理論との齟齬についてやってきた。今日は前回定義した複素パラメータと近軸マトリクスを組み合わせてガウシアンビームのパラメータを追跡する方法をまとめる....

直前にやったことをもう一度思い出す。 次の横ベクトルを定義する。 \begin{equation} \vectorize{v}_j \equiv \left(q_j,1 \right) \end{equation} ここで$q_j$は \begin{equation} q_j \equiv \,\frac{g(z_j)}{i \,n_j} = \frac{z_j+i z_R}{n_j} \label{qdefinitionagain} \end{equation} と言うような複素量である。これを「ガウシアンビームの複素パラメータ」と呼ぶ。ただし前も書いたように僕の定義は他所様のとは微妙に違うことに注意。しかしこれが決まればガウシアンビームの状態は一つに決まってしまうのは他所様と同じである。

そしてもちろん$z_R$はガウシアンビームのRayleigh長さであるが、境界面を経るごとに値は変わることに注意する(それがどう変わるか、を計算したいわけである)。ほんとうなら媒質の番号$j$をつけるべきだけど見てくれが煩わしいのでやめておく。

さらに$z_j$は$j$番目の境界の光軸上の位置で、$n_j$は$j$番目の境界面の直後の媒質の屈折率である。境界面は光軸と直交する球面を前提としていて、面の番号と媒質の番号のつけかたは前々回整理した近軸光線追跡でのスタイルにしたがっている(そして厳密な光線追跡でも普通は同じである)。

この複素数を含むベクトルと近軸マトリクスとを組み合わせると、なんと驚くなかれ、レンズを通過したときのガウシアンビームのパラメータがどう変化するか、を機械的に計算することができる、というのが今日の目玉であり、リングジャイロなんかを設計してる人が使っている計算法である。

6.4.6  ガウシアンビームと近軸光線追跡

この近軸マトリクスを使って$\vectorize{v}_j$から \begin{equation} \vectorize{v}_{j+1} = \vectorize{v}_j \vectorize{M} \label{matrixcalc} \end{equation} を計算する。この$\vectorize{v}_{j+1}$は昔またべつにやった射影変換を計算するための同次座標のベクトルと同じで要素が定数倍になっているのは同一視する。したがって \begin{align} \vectorize{v}_{j+1} &= \left(Q_{j+1}(z),w_{j+1} \right) \nonumber \\ &\sim \left(\frac{Q_{j+1}(z)}{w_{j+1}},1 \right) \nonumber \end{align} とみなす($\sim$は同値類を表す)。そのときこの$\vectorize{v}_{j+1}$から \begin{equation} \big(q_{j+1}(z),1\big) = \left(\frac{Q_{j+1}}{w_{j+1}},1\right) \end{equation} とすると、つまりベクトルの同値類の中で二つ目の要素が1のものの一つ目の要素$q_{j+1}(z)$(こういうあつかいは同次座標の計算でも行われる。同時座標のベクトルの場合は要素が4つだけど)は$\vectorize{M}$で表される光学系を通過したあとのガウシアンビームを表す。つまり \begin{align} q_j &\xrightarrow{\qquad \vectorize{M}\qquad} q_{j+1} \nonumber \\ j\mbox{面での状態}&\xrightarrow{ \mbox{ 光学系  }}j+1\mbox{面での状態} \nonumber \end{align} である。

6.4.7  ほんとかよ

おいおい、ちょっと待てよ、近軸マトリクスは実の量ばかりだった。ガウシアンビームの$q_j$、すなわち$g(z)$は複素量である。そんなものをごっちゃにしたらダメだろう。

全くその通りで、僕にはその物理的な背景がよく理解できていない。でもなぜかこれで上手くいく。なんでこれで上手くいくのかご存知の方は教えてください。よろしくお願いします。

よくわからないなりにこれが上手くいくことを示すには任意の$\vectorize{M}$ではなくて、$\vectorize{T}$と$\vectorize{P}$のふたつについてみれば十分である。 \begin{align} \vectorize{v}_{j+1} &= \vectorize{v}_j \vectorize{T} \nonumber \\ &=\left(q_j,1 \right) \cdot \left( \begin{array}{cc} 1 & 0 \\ \ell & 1 \end{array} \right) \nonumber \\ &= \left(\ell + \frac{z_j+i z_R}{n_j},1 \right) \nonumber \\ q_{j+1} &= \ell + \frac{z_j+i z_R}{n_j} \nonumber \\ &= \frac{(z_j+d)+i z_R}{n_j} \end{align} となって、$z_{j+1}\rightarrow z_j+d$と光軸に沿った移動にそのまま対応している。 また$\vectorize{P}$について \begin{align} \vectorize{v}_{j+1} &= \vectorize{v}_j \vectorize{P} \nonumber \\ &=\left(q_j,1 \right) \cdot \left( \begin{array}{cc} 1 & -\phi \\ 0 & 1 \end{array} \right) \nonumber \\ &= \left(q_j,1-\phi q_j \right) \nonumber \\ q_{j+1} &= \frac{q_j}{1-\phi q_j} \nonumber \end{align} となる。このまま$z_R$を含んだ式にして計算しても項が増えるばっかりでわかりにくいので、ちょっと細工 \begin{equation} q_j = -\frac{1}{\displaystyle n_j \widetilde{\chi}_j+ \frac{ i \lambda_j n_j}{\pi w_j^2}} \label{alternative} \end{equation} としてみよう。ただし$\lambda_j$は媒質$j$での波長ある。そしてこれまでもでてきたけど、$\widetilde{\chi}_j= -\chi_j$は境界面$j$における波面の(符号を調整した)曲率で$-1/R_j$、$w_j$はそこでのビーム半径で、$\lambda_j$は媒質$j$での波長ある。前やったように$z_R$と$z$を決めることと、$\widetilde{\chi}_j$と$w_j$を決めることはガウシアンビームとしては等価である。

そして \begin{align} \chi_j &= \chi(z_j) \nonumber \\ R_j &= R(z_j) \nonumber \\ w_j &= w(z_j) \nonumber \end{align} などである。

以前導いた式19:1式19:2を代入すると式-\ref{qdefinitionagain}になることで確認できる。

これで計算を進めると \begin{equation} q_{j+1} = -\frac{\pi w_j^2}{\pi \left(\widetilde{\chi}_j n_j+\phi \right) w_j^2+i \lambda_j n_j} \end{equation} となる。このまま複素数を有理化するとぐちゃぐちゃになってしまう。そこでこの逆数を考える。 \begin{align} \frac{1}{q_{j_1}} &= -\frac{\pi \left(\widetilde{\chi}_j n_j+\phi \right) w_j^2+i \lambda_j n_j}{\pi w_j^2} \nonumber \\ &= -\left(n_j\widetilde{\chi}_j+\phi +\frac{i n_j \lambda_j}{\pi w_j^2} \right) \end{align} と簡単になる。つまり \begin{equation} q_{j+1} = -\frac{1}{\displaystyle n_j\widetilde{\chi}_j+\phi +\frac{i \lambda_j n_j}{\pi w_j^2}} \end{equation} となる。

また一方でもともと \begin{equation} q_{j+1} \equiv -\frac{1}{\displaystyle n_{j+1}\widetilde{\chi}_{j+1} +\frac{i \lambda_{j+1} n_{j+1} }{\pi w_{j+1}^2}} \nonumber \end{equation} だけど、$\lambda_j$は媒質中の波長なので$n_{j+1} \lambda = n_j \lambda $だから、$z$の位置でのビーム半径は変わらず($w \geq 0$を忘れずに)、波面の曲率が$\phi$だけ変化する、つまり \begin{align} w_{j+1} &= w_j \\ n_{j+1}\widetilde{\chi}_{j+1} &= n_j \widetilde{\chi}_j + \phi \end{align} となって、Abbeの不変量の式から導いた式17:5と一致する($\phi$の定義を思い出してもらって、さらに$\chi(z)$の符号に注意して)。

あらためて主張しておくと、式-\ref{qdefinitionagain}のように「複素パラメータ」の定義の中に屈折率を含めることで、空気以外の媒質の中でも式-\ref{matrixcalc}が成り立ち、近軸光線追跡のマトリクスと整合的にすることができる。

なんども書くけど普通に行われている定義とは異なることに注意する必要がある。ちなみに、このWikipediaの定義では近軸追跡の方を空気中でのみ使える形(換算距離ではなく実距離を使っている)にして整合をとっている。もちろんガラス内部での状態を気にしなければこれでも問題ないし、僕みたいなやり方をしている人を見たことはないけど、光学屋の僕としてはこれでは中途半端で不満足である(件のWikipediaには平面による屈折のマトリクスがあるが、換算距離で表せば平面の媒質境界は単位行列になるのでわざわざ書かずにすむ。しかし近軸なのに平面ミラーによる反射なんていうのも含めているので、そのへんは記事を書いた人の親切心なのかなとも思う)。
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