ガウシアンビームの光学 - その27 [ガウシアンビーム]
ガウシアンビームの続き。「その1」から「その15」までに物理の話、代表的な数値の確認、近軸理論、瞳から出たガウシアンビームがウェストを迎える様子、$z$、$z_R$とは別のパラメータ、ガウシアンビームの場の特定法、近軸マトリクスのおさらい、近軸理論との齟齬、近軸マトリクスによるガウシアンビームの伝播計算とその個人的な印象、収差がある場合のウェスト付近の場、Fraunhofer回折計算のコツとやってきた。今日はケラれ(蹴られ)について....
レンズなどの光学系をガウシアンビームが通過するとき、無限に広がったレンズなどというものはないので、かならずレンズのフチによってケラれ(蹴られ)が発生する。こないだまでやっていた近軸マトリクスでは収差が考慮されないので実際にはガウシアンビームは変形すると思われがちだが、実はほとんどのアプリケーションでは収差は無視できて、このケラれのほうが影響が大きいことの方がずっと多い。
ケラれたガウシアンのことを「Trancated gaussian」などと呼ぶことがある。ケラれたガウシアンとはこの図のようなものである。 めんどくさいので1次元を考える。瞳での場の大きさを$A(x)$とすると \begin{align} A(x) &= G_w(x)\Pi_a(x) \\ G_w(x) &\equiv \exp \left(-\frac{x^2}{w^2}\right) \\ \Pi_a(x) &\equiv \left\{ \begin{array}{rl} 1 & -a\leq x\leq a\mbox{のとき} \\ 0 & -x \lt -a,\mbox{または}a \lt x\mbox{のとき} \end{array} \right. \end{align} などで強度$I(x)$は \begin{equation} I(x) \propto |A(x)|^2 \end{equation} と書ける。
これが伝播するとガウシアンビームの伝播とは異なって、遠方ではガウシアンからどんどん離れていってしまう。Fraunhofer領域ではこのFourier変換になるのでその場を$\hat{A}(k_x)$とすると \begin{align} \hat{A}(k_x) &= \hat{G}_w(k_x) \ast \hat{\Pi}_a(k_x) \label{convolution} \\ \hat{G}_w(k_x) &= \frac{w}{\sqrt{2}}\exp\left(-\frac{1}{4}w^2 k_x^2 \right) \\ \hat{\Pi}_a(k_x) &= \sqrt{\frac{2}{\pi}}a \;{\rm sinc}(a k_x) \end{align} となる。ここで$A \ast B$は$A$と$B$のコンボリューション(convolution)を表して、sincは \begin{equation} {\rm sinc}(x) =\frac{\sin x}{x} \end{equation} のいわゆるsinc関数である。
ちなみに2次元の回転対称なガウシアンビームではsincの代わりにごぞんじBessel sinc($=J_1(r)/r$)になる。
Fraunhofer領域では簡単な関数で表せないが、ガウシアンとsincのコンボリューションなので$a \ll w$のときはsinc関数の形が現れて$a \gg w$のときはガウシアンに近くなる、ということになる。イメージぐらいはわかる。その途中はどうなるかというとこれは数値計算するしかない。
これは古い業界用語かもしれないけど、 \begin{equation} \mbox{A/W} \equiv \frac{a}{w} \label{abyw} \end{equation} をA by Wと呼んでケラれの程度を表す。この値が1に比べて小さいときsinc的(あるいは強度からAiry的)、大きいときガウシアン的などと言っていた。
その数値計算は、コンボリューションになるとちょっとわかったような気になるけど、実際のコンボリューションの計算はたいてい、特に2次元ではFFTを2回繰り返すほうが定義を離散化するよりも速い。したがって実際の計算では式-\ref{convolution}によってではなく、式25:2のFourier変換をFFTでやるほうが速くて便利(余計な途中計算をする必要がない)だということになる。
次の図のように、ガウシアン幅はみんな同じで瞳径が違っている場合を計算してみる。 見づらいのでベースライン(縦軸の原点)をちょっとずつずらして描いた。それぞれ瞳半径がガウシアン幅の2倍、1倍、1/2倍、1/4倍とした。
この焦点面での場の大きさを下の図に示す。 A/Wが大きめの2ではガウシアンに近い格好になっているけど、小さくなる(瞳径が小さくなる)にしたがって、場は広がって、位相が反転した部分(場の値がマイナスになるところ)の中心からの距離が大きくなっていく、つまり太くなっていく。これは直感的にも理解しやすい。
次回はどのくらいケラれるとガウシアンとは言えなくなるのか、を考えてみる。
8 光学屋の関心事 ケラれたガウシアンビーム
ガウシアンビームは無限に広がった均一な媒質中での解であるが、光軸から離れるにしたがって急速に場の大きさは小さくなっていくような、光軸付近にエネルギーの集中した場である。光軸から離れたところでの外乱は無視することが可能である。レンズなどの光学系をガウシアンビームが通過するとき、無限に広がったレンズなどというものはないので、かならずレンズのフチによってケラれ(蹴られ)が発生する。こないだまでやっていた近軸マトリクスでは収差が考慮されないので実際にはガウシアンビームは変形すると思われがちだが、実はほとんどのアプリケーションでは収差は無視できて、このケラれのほうが影響が大きいことの方がずっと多い。
ケラれたガウシアンのことを「Trancated gaussian」などと呼ぶことがある。ケラれたガウシアンとはこの図のようなものである。 めんどくさいので1次元を考える。瞳での場の大きさを$A(x)$とすると \begin{align} A(x) &= G_w(x)\Pi_a(x) \\ G_w(x) &\equiv \exp \left(-\frac{x^2}{w^2}\right) \\ \Pi_a(x) &\equiv \left\{ \begin{array}{rl} 1 & -a\leq x\leq a\mbox{のとき} \\ 0 & -x \lt -a,\mbox{または}a \lt x\mbox{のとき} \end{array} \right. \end{align} などで強度$I(x)$は \begin{equation} I(x) \propto |A(x)|^2 \end{equation} と書ける。
これが伝播するとガウシアンビームの伝播とは異なって、遠方ではガウシアンからどんどん離れていってしまう。Fraunhofer領域ではこのFourier変換になるのでその場を$\hat{A}(k_x)$とすると \begin{align} \hat{A}(k_x) &= \hat{G}_w(k_x) \ast \hat{\Pi}_a(k_x) \label{convolution} \\ \hat{G}_w(k_x) &= \frac{w}{\sqrt{2}}\exp\left(-\frac{1}{4}w^2 k_x^2 \right) \\ \hat{\Pi}_a(k_x) &= \sqrt{\frac{2}{\pi}}a \;{\rm sinc}(a k_x) \end{align} となる。ここで$A \ast B$は$A$と$B$のコンボリューション(convolution)を表して、sincは \begin{equation} {\rm sinc}(x) =\frac{\sin x}{x} \end{equation} のいわゆるsinc関数である。
ちなみに2次元の回転対称なガウシアンビームではsincの代わりにごぞんじBessel sinc($=J_1(r)/r$)になる。
Fraunhofer領域では簡単な関数で表せないが、ガウシアンとsincのコンボリューションなので$a \ll w$のときはsinc関数の形が現れて$a \gg w$のときはガウシアンに近くなる、ということになる。イメージぐらいはわかる。その途中はどうなるかというとこれは数値計算するしかない。
これは古い業界用語かもしれないけど、 \begin{equation} \mbox{A/W} \equiv \frac{a}{w} \label{abyw} \end{equation} をA by Wと呼んでケラれの程度を表す。この値が1に比べて小さいときsinc的(あるいは強度からAiry的)、大きいときガウシアン的などと言っていた。
その数値計算は、コンボリューションになるとちょっとわかったような気になるけど、実際のコンボリューションの計算はたいてい、特に2次元ではFFTを2回繰り返すほうが定義を離散化するよりも速い。したがって実際の計算では式-\ref{convolution}によってではなく、式25:2のFourier変換をFFTでやるほうが速くて便利(余計な途中計算をする必要がない)だということになる。
8.1 ケラれの影響
ガウシアンビームを蹴ることでどういう影響があるかを考えてみる。やはりめんどうなので1次元でやるけど、2次元でも全く同じことをすればいいので省略する。次の図のように、ガウシアン幅はみんな同じで瞳径が違っている場合を計算してみる。 見づらいのでベースライン(縦軸の原点)をちょっとずつずらして描いた。それぞれ瞳半径がガウシアン幅の2倍、1倍、1/2倍、1/4倍とした。
この焦点面での場の大きさを下の図に示す。 A/Wが大きめの2ではガウシアンに近い格好になっているけど、小さくなる(瞳径が小さくなる)にしたがって、場は広がって、位相が反転した部分(場の値がマイナスになるところ)の中心からの距離が大きくなっていく、つまり太くなっていく。これは直感的にも理解しやすい。
次回はどのくらいケラれるとガウシアンとは言えなくなるのか、を考えてみる。
2017-10-09 20:35
nice!(0)
コメント(2)
truncated です。
by zyxzyx (2017-10-11 00:15)
コメントありがとうございます。
そうですね。綴り間違ってました。ありがとうございます。
by decafish (2017-10-11 06:31)