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残りのHiLetgoを使う [Raspberry Pi]

こないだHiLetgoの降圧型DC-DCコンバータ電源をLEDドライブ用に使ってみた。今のところちゃんと動いている。光らせたいLEDはもうない。しかし光らせたい半導体レーザはある。532nmのいわゆるDPSS(Diode Pumped Solid State)レーザで、赤外の半導体レーザの光でNd:YVO4結晶を叩いて1064nmを発振させてその光をKTP結晶で半分の波長(倍のエネルギー)にするもの。最近はパッケージはすごく小さく扱いも簡単になってる。HiLetgo電源はまだ2個余っているので、それに使ってしまおうと思った。

532nmのDPSSレーザのうち最もシンプルなものは単体の半導体レーザのような光強度モニタ用のフォトダイオードを内蔵していない。そこで光出力を制御するためには出てきた光を少しだけ横取りしてその強度の値でフィードバックする必要がある。また、ポンプ用の赤外の半導体レーザは可視半導体レーザと同じように過電流に弱い。LEDなんかに比べると注意が必要になる。

そんなことから、赤外のレーザは定電流駆動して、さらに外側のループで緑光出力を制御するためにその電流値を増減させるというドライブの仕方が普通だろう。僕が使おうとしているレーザのポンプ用赤外レーザは定格が300mAでそのときの電圧降下が2.0Vぐらいのものである。

このレーザを例によってRaspberry Piから制御することを考えた。そのために余ったHiLetgoの電源を定電流ドライブに改造する(改造といっても、人間で言えば本郷猛を仮面ライダーに、と言うよりは性転換手術のようなものである)。レーザそのものは2万円以上するもので、それを1個300円しない、どこまで性能があって信頼性があるのかわからないHiLetgoの電源でドライブしようと言うのは、かなり大胆な勇気のいることである(特に僕みたいな貧乏人にとっては)。まあしかし、この付近の波長で直接発振する半導体レーザはあるけどハイパワーのものを一個だけくださいというと数十万円取られる。それを考えるとかわいいものである。

それに綺麗で立派な箱に入ったいかにもエラそうな専用電源も、中を開けてみれば似たようなチャチい部品が並んでいることが多い。ハイエンドオーディオなんかでも似たようなことがあるらしい。とりあえず僕の場合、長期信頼性は必要ないので試してみることにする。今回は破壊的な(非可逆の)改造になる....

まずDC-DC変換をしているチップの型番を確認するため、放熱板をはがした。
0219chipface.jpg
Amazonの詳細画像にあった通り、XLSEMI社のXL4015だった。このデータシートにはブロックダイアグラムがあって
0219blockdiagram.png
FB端子に入力される電圧と内部の1.25Vとを比較して180kHzノコギリ波発振器の波形をラッチすることでPWM波形を作ってFETをスイッチングしてる、ということがなんとなくわかる。その下には「Typical Application Curcuit」として
0219typicalapplication.png
回路図がある。おそらくHiletgoの基板はほぼこの通りにできているのであろう。変える必要もないし。ということは回路図の「R2」がHiLetgo基板に乗っている多回転の青いポテンショだと思われる。回路図に僕が書き込んだ赤矢印の先の電位が内部の1.25Vと比較されて、ここの電位が低ければPWMのデューティを上げて、高ければその逆にする、というような制御になっているんだろう、ということはわかる。

この基板を使って電流制御にするためには、ここの電位を電流値に比例するように回路を追加すればいい。簡単にはこんな付加回路
0219additional.png
つまり、小さな抵抗、ここでは2.2Ω / 1W、をレーザと直列に入れてその両端の電圧をフィードバックに使う、ということ。この回路だと電流が流れて電圧降下が大きくなるとオペアンプの出力はプラス側に行くことになって、チップ内部の比較器のマイナス側に入っているのでフィードバックになる。比較器のゲインと帯域がわからないけど、ゲインは十分大きく、帯域は内部クロックの半分よりは低いとみなすことにする(前回100kHzのPWMで出力を振ったときの波形では結構高いように見えるけど)。

データシートの回路図ではR2の分割抵抗は10kΩになっているけど、HiLetgoの基板の上のポテンショは50kΩがついているようである(電圧上限の仕様が微妙に高くなってるのはこのせいか)。R1の値はわからないけど、ポテンショに比べてすごく小さい、ということはないはずなので、抵抗を外さずにここへ直接オペアンプの出力をつなぐことにする。ポテンショを外すときに基板を壊してしまう心配があるので、残したままにできればその方がいい。オペアンプの出力インピーダンスが低くて電流が十分取れれば、具体的に言えば10mAぐらい流せれば強制的に±2Vぐらいは振ることができるはずである。また安全のため、ポテンショは高抵抗側いっぱいにしておくほうがいい。

ということでこういうことに。
0219solder.jpg
写真上の裏返しが写真下である。テスターであたってポテンショの一番右側の端子が上の回路図の赤矢印だとわかったので、そこに半田付け。普通だったらこんなことをすると保証の範囲外です、なんていう注釈が必要なんだけど、HiLetgoの製品保証がどうなってるのかわからないし、現物に保証書もついてないし、初期不良以外の対応する気はなさそうなので、同じことである。

付加回路のゲインを1にした場合、ちゃんとフィードバックができれば、(A)のところにかけた電圧と基準電圧1.25Vとの差と同じ電圧降下が2.2Ω抵抗に発生するぶんだけの電流が流れる、ということになる。この電圧をどうやってつくるか、ということだけど、最初D/Aコンバータを使おうと思っていた。でもどうせループ制御するわけだしそんなちゃんとしたリニアリティは必要なくて、制御信号に対して単調で微係数が0にならなければいいので、Raspberry PiのハードウェアPWMを使うことを考えた。

つまりこうである。
0219pwmintegrate.png
点線の内部は1次の積分器である。Raspberry PiのPWMの信号でトランジスタを駆動する。トランジスタは積分器に十分な電流を供給するためと、信号を反転させるためである(ちなみにトランジスタはそれなりに速いやつでないといけない。ナマるとPWMのデューティのリニアリティが悪くなる。またスピードアップコンデンサはトランジスタの特性によって調整する必要がある)。積分器の時定数の2桁ぐらい上のPWM周波数にすると、積分器の出力はほとんどDCとみなせる。これを可変抵抗で分割してさっきの付加回路の(A)に入力する。

XL4015の内部でもPWMを使ってるのでなんだか屋上屋な感じもするけど、チップのPWM信号は外に出てないのでどうしようもない。

この回路だとPWMの信号は反転するので、PWM信号がなくてGNDにおちていると積分器への入力は電源(+3.3V)になる。これがXL4015のFB端子に入るので、電源投入時には基準電圧の1.25Vより高い電位になっているので出力は出ない、つまり電圧はGND付近にあるはずで、初期状態は自動的にオフということになる。

PWMのデューティをあげると積分器の出力は下がってくる。そしてFBへの入力が1.25Vを切るとモジュールの出力があがる、というわけである。PWM信号がないときのFBへの出力を1.25Vよりすこし高くなるように可変抵抗で調整しておくと、不感帯ができてPWMを入れない限りはモジュールの電圧は上がらない、電流は出ないということになる。

なんでトランジスタのコレクタを+5Vにせずに+3.3Vにしたかというと、単電源のオペアンプを使おうと思ったから。実は昔LM324を大量に(といっても数十個、値段にして千円しない)買ったんだけど、GND付近の非線形性のせいで光学的計測用としては制限がある、ということを実際に回路を組んで初めて知った。それ以降オペアンプは両電源のものしか使わないようにしてるんだけど、そのLM324がいつまでもはけないし、かと言って捨てるのももったいない。こういう用途にはちょうどいい、と思って使うことにした。

LM324の電源には+5Vを使う。しかしLM324は電源付近の入力には追従しないので、積分器の出力が+5Vにはりつかないようにするため、Raspberry Piから+3.3Vを横取りすることにした。+3.3Vは心情的にはあまり引き回したくないのではあるけど。

とりあえず定数を決めるためにブレッドボードに回路を組んだ。そしてこれが100kHz、Duty10%の信号。
0219durty10.png
赤がRaspberry PiからのPWM信号で、青が積分器の出力。100kHz、Duty90%だと
0219duty90.png
で、PWM信号がないと
0219nopwm.png
ヒゲがあって汚いけど、これは環境のせいらしいので、まあこれでよかろ。

この回路だと、Duty100%のときに積分器出力はGND付近になって、XL4015のFBの比較電圧が1.25Vで付加回路のゲインを1、電流検出の抵抗値を2.2Ωにすると、最大(Duty100%)で568mA流せる、ということになってドライブしたいレーザの定格をカバーできる容量がある。でも最大ではレーザを壊す可能性があるし、電流検出抵抗に1Wのものを使うとすると、ギリギリアウトである。0.4Aぐらいのポリスイッチかなんかを入れて、ソフトウェアでPWMのデューティを制限しないといけない。

ということで試してみる。いきなりレーザはやっぱり心配なので、ブレッドボードに組んでこないだのLEDを電流ドライブしてみよう。見るからに非常に危険そうな実験セットアップだけど、Raspberry Piから出るPWMのDuty比を変えながらLEDに直列にテスタをつないで電流を測ってみる。動いたと言う証拠がわりのムービー。
0219youtubevideo.jpg
クリックするとYouTubeにジャンプします)

Duty=0%でのFBへの入力電圧が1.25Vよりかなり高かったらしくて、10%まで電流は0のまま。裏返しのLEDでも十分眩しかったのでこのくらいでやめた。Duty比対電流をプロットしてみると
0219dutyvscurrent.png
となって思ったよりリニアリティがいい。なんでこんなにいいんだろ。まあいいに越したことはないけど、10%〜20%なのでリニアリティを判断するには狭すぎるだけかも。オペアンプ回路のゲインが1で、電流検出抵抗を2.2Ωにしたので、Duty=0〜100%で0.568A変化するはずで、フィッティングした直線の傾きが0.564になったのでよくあっている。というかあいすぎていてこれはたまたまだろう。

あとは過渡的な操作とどこかにサージが入った場合に過電流が突入しないか確認しないといけないけど、全体的にそれほど速くはないので、ヒゲノイズと電源投入時以外は問題にはならないだろう、とタカをくくることにする。電源投入時のアバレ対策にはリレーでシャントすればいいだろう(レーザへの電源をリレーのnormally close側経由でGNDに接続する。立ち上がったあとにソフトでopenにしてから使う)。それにポンプ用の赤外半導体レーザはハイパワーなので、数mWクラスの可視半導体レーザほど虚弱ではないはずである。

そういう姿勢って、ときどきあとで痛い目に会うことがあるけど、な。
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