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最近のニュースで [日常のあれやこれや]

ここでは、僕がどうした、僕はどうしたい、という話しか書かないようにしようと思っている。だから他所の人が何しようと関係ないんだけど、技術屋としてちょっと思うことがあって、去年からニュースで毎日のように聴く日産のゴーンについて。ほんとだったら去年の逮捕前に書くべきで、いかにも後出しジャンケンぽいんだけど....

僕はゴーンとAppleのジョブズとを比べてしまう。どちらもどん底だった会社をV字回復させた経営者、しかも超カリスマとして有名である。もちろん僕は二人とも直接知っているわけではないどころか、せいぜいテレビや新聞やネットの表層的なエピソードしか知らない。でも僕の印象はかなり違っている。

まず、会社の回復のさせ方。ゴーンはトータル4万人のリストラによったが、ジョブズは製品のアイデアだった。

4万人切ればその給料分だけでも年2千億円浮くし、経費を含めればその数倍になる。工場から人を無くしてまるごとたためばその年度だけだけどさらにその一桁上の経費が浮く。そこにアイデアはなくて四則演算ができればいい。

ジョブズの場合はまずキャンディカラーのiMac、そのあとiPod、iPhone、iPadだった。すべてがジョブズのアイデアではなかっただろうけど、ジョブズが戻る前のAppleではあのiMacは却下されてただろうし、あの初代iPodは影も形もなかっただろう。ちろんAppleの場合はジョブズが帰る前にリストラが進んでいたというのはあるし、ジョブズもニュートンを切った。しかしリストラだけではその後のAppleはないだろう。

それから、ゴーンの金への執着と、ジョブズの執着のなさ。ジョブズは復帰後、CEOになっても給料は1ドルだった。もちろんそれはポーズだろうし、以前からAppleその他の株を持っていて、復帰後もストックオプションを提供されてしっかり行使していたので、王様のような生活をしない限り何も困らないはずである。

一方ゴーンは何十億円という報酬をまさに王様のような暮らしに費やした。ベルサイユ宮殿での結婚式なんて、僕はその話を聞いたとき理解できなくて「なんでそんなつまらないことに大金を使うのか」という疑問しか浮かばなかったけど、王様の生活にはふさわしいということなんだろう。

ジョブズは「墓場で一番の金持ちになるなんて、何の意味がある?夜、今日は最高だったと言って眠りにつく。私にはこっちの方が重要だ」と言ったらしいけど、ゴーンならなんと言うんだろう。

そしてなりよりも、ジョブズは当時のAppleが喉から手が出るほど欲しかった新しいOSをもたらした。当時のAppleが考える「モダンなOS」最優先事項であるプリエンプティブ・マルチタスクなカーネルだけでなく、POSIX互換レイヤ、専用開発言語のObjective-C、Display PostScriptベースのウィンドウシステム、WebObjects、そしてテバニアンを筆頭に優秀なソフトウェアエンジニアをジョブズはNeXTから連れてきた。技術的にはそれらの足元にも及ばないCoplandを仕上げる力さえ、ジョブズのいないAppleにはなかった。

優秀なエンジニアが投入されてからは、旧Mac OSとの段階的なマージ、ユーザ空間からI/O制御をプログラミングできるI/O Kit、ウィンドウシステムのPDF化、FoundationとAppKit frameworkの拡充と、Appleは当時必要とする以上のものを手に入れることになった。

もちろん、どん底といっても日産と当時のAppleとでは規模もどん底加減も違うし、内包していた問題も全然違う。また技術の直接的な面でのジョブズの寄与は皆無と言っていい。しかしNeXT設立からOS Xリリースまでの15年ほどの間にジョブズが主導してきたソフトウェア技術の開発力は、僕にはただただ驚きである。誰か分析していないだろうか。


僕はなにもこんなウェブの隅っこで(「隅っこ」という表現はおかしいな。ウェブは宇宙と同じで中心がない)、ジョブズを祭り上げてゴーンを貶めたいわけではないし、ゴーンが罪を犯したかどうかにも興味はない。なんで僕がこんなことを書いてるかと言うと、前の会社で仙台に行く前の2005年ごろ、僕の所属している部署でリストラがあった。たいして大きくない部署なんだけど、全く無関係な別の部署のトップが横滑りしてきて、技術的な面を完全に無視してお金の足し算引き算だけに基づいてあっさり実行した。僕の部署の持っていた技術は大したものではなかったかもしれないけど、それさえ四散して、僕が仙台に移るきっかけの一つになった。ゴーンの日産とは規模が3桁ほど違うので、僕みたいな、あるいはもっとひどい思いをした人が日産にたくさんいたに違いないと僕には思える。それは今のゴーンに対する嫌疑とは全く別次元の話である。


ところで、スタンフォードでのジョブズのスピーチが有名になったのは、カリスマ経営者による「お前らには思い浮かぶまい」と言わんばかりのエラそうな経営論やリーダ論ではなく、波乱万丈の人生を送ってきた人が生身の人間として、若い人に何を伝えるべきかを彼が自ら考えて、平易な自身の言葉で語っているからである。ゴーンも日本の多くの大学で学生相手に講演をしてきたらしい。残念ながら僕には聴く機会がなかった。彼は学生にどんな話をしたんだろうか....
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