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日曜美術館再放送「松方コレクション」 [日常のあれやこれや]

今日夜の日曜美術館再放送松方コレクションの話だった。ボロ儲けした金持ちが美術品を買い漁るというのはあまり面白い話ではないんだけど、大正の時代に西洋の名絵画の現物が日本で見ることができる、ということが画期的だったと言うのは十分理解できる。

当時の日本の洋画はヨーロッパに留学できたほんの限られた画家の作品が中心だった。その意味でコレクションの意義が高かった、ということに異論はない。また、そのおかげで僕も西洋美術館でモネやルノワールやゴーギャンの本物を見ることができたので文句を言える立場ではない。でも...

でも僕から見ると20世紀初頭に印象派が主体のコレクションというのは、すでに評価の確立した作品を金にモノを言わせて手に入れたというイメージが強い。そのこと自身に文句は言えないにしても(自分の金で買っただけだから)、例えばアメリカ人のグッゲンハイムとの違いを思ってしまう。

グッゲンハイムもやはり商売でボロ儲けして金にあかせて美術品を買い漁った。当時のアメリカもヨーロッパからの見方では文化的には後進国だった。でも彼が買ったのはカンディンスキーやモンドリアンやクレーやキリコやシャガールやレジェやダリやピカソと言った収集当時にまだ評価が確定していない、あるいは確定しつつある作品を買った。グッゲンハイムに買ってもらって生活が楽になった画家や評価の上がった作品もあった。

松方幸次郎とグッゲンハイムが収集した時期はほぼ同時期(松方は1910代からの10年ほどでグッゲンハイムより10年ほど早い)だけどその内容は全く異なる。もちろん、後進国とは言えヨーロッパ文化を継承する新興国アメリカと、ヨーロッパから見たら東の端の地の果てのような文化的にも全く違う日本とでは収集の意図も異なるのはよくわかるので松方コレクションに文句を言うつもりはまったくない。

僕は子供の頃から印象派にはあまりピンとこなくて、シュールレアリズムなんかの20世紀の作品の方がずっと好きだった(僕の母は絵を描くのが好きで、ルノアールやドガが好きだったけど子供の頃の僕にはそれがよくわからなかった)。僕が会社に入って数年経った、今から30年近く前、初めての2週間のUS出張があって、ニューヨークで土日を過ごすことになった。しめた、と思って一緒に出張していた課長とは別行動してグッゲンハイム美術館に行こうと決めていた。その土曜の朝、ホテルでもらった地図を頼りに美術館に向かった。写真で見た巨大な円筒形の宇宙船のような建物が遠くからでも見えて入り口を探した。

大きな扉が閉まっていて、誰もない。たどたどしい英語で関係者と思われる人に訊いてみると、ずっと閉まっていると言っているらしかった。その人は親切にいろいろ教えてくれたんだけど当時の僕の英語力は低くてよくわからなかった。たまたま休みだったのか、と思ってあきらめてニューヨーク近代美術館に行った(こっちは当時思ってたよりずっと面白かった)あと、夜はホテル近くのジャズクラブで下手くそなピアノトリオを聴いて(ほんとはビレッジバンガードに行きたかったんだけど場所がわからなくて行き着かなかった)、日曜日はメトロポリタンで過ごした。近代美術館はガラガラだったけど、メトロポリタンはすごい人で1日で見られるのはほんの一部だった。

出張から帰ってきて初めてグッゲンハイム美術館が建物の改修で閉じていると言うことを知った。当時はインターネットもなくて日本からアメリカの美術館がいつ開いているかなんて情報を手に入れる手段は限られていた。もう本当に悔しかった。

でもそのおかげでグッゲンハイムの所蔵品が世界中を回っていて、僕は池袋でたっぷりみることができた。あれにはたぶん娘を連れて一回行ったあと、一人で少なくとも2回池袋まで行った。それほど僕の好きな作品が並んでいた。

今の日本には松方幸次郎を超える金持ちがたくさんいる。彼らにお願いしたい。絵を買うなら評価の確立した古い画家、例えばゴッホを何億も出して買うのではなく、これからを担う若手のをひとつ百万で買ってやってほしい。僕は買えないんで。
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