肉眼で回転運動に対するストロボ効果はあるのか? [日常のあれやこれや]
さっき「チコちゃんに叱られる」の再放送を見ていたら、「走行中のタイヤが止まったり逆回転に見えるのはなぜ?」の答えに「1秒間に4〜5枚の絵しか見てないから」というのがあった。これは普通は、いわゆるストロボ効果によるものがほとんどで、つまりカメラでの動画か、間欠照明があった場合にはっきり見える。物理的には折り返しノイズの具体例である。
番組ではそれを人間の目の特性だけで説明していた。それはおかしいと思う。
直線運動に対しては目のサッケード運動(衝動性眼球運動)と連動したとき、網膜上の画像が固定されて止まって見えることがある。これは直線運動している物体に注目してはっきり見ようと眼球や頭を意識的に動かすことで目のモーションブラー を止めるのや、鶏が歩くとき首を前後に振る動作と同じである。サッケード運動はすごく速くて像運動と連動したときは無意識的なので、止まって見えると印象に残りやすい。でもサッケードは意識的にはできないのでいつも見える、ということにはならない。
しかし眼球には光軸周りの回転の自由度はない。眼球運動用の筋肉は光軸に沿った方向にしかないし、もし回転したら太い視神経が捩れてしまう。視神経は脳までの距離が短いけど、やっぱり最終的には化学的な作用なので応答速度はせいぜい10msecぐらいのはずだし、また1つの視神経はフォトン1個に反応できるとは思えないので、ある程度の積分時間が必要なはずである。そして目にはCCDやC-MOSイメージャの電荷蓄積タイミング制御のような機能はない。したがってそれ以下の時間分解能は目にはない。つまり、回転している物体は、脳で処理される前に網膜上の画像としてボケる。
だから、カメラ越しではなく、間欠照明もない場所での肉眼で回転運動に対してストロボ効果が発生するとは思えない。肉眼で見えたというのはどこかに発光が電源(あるいはそのインバータ)に同期してしまうナトリウムランプや蛍光灯があることに気が付いてなかったのではないか、と思う。
もし、そうではない、という人がいたらコメントください。例えば「私の脳は網膜像のデコンボリューションができる」とか。
でも最近チコちゃんあまり面白くない。マンネリはしょうがないか。でも「逆連想ゲーム」は退屈で、どうせなら「とことん妄想ゲーム」とかのほうがいい。いやそれは、小さいおともだちに見せられなくなるか。
番組ではそれを人間の目の特性だけで説明していた。それはおかしいと思う。
直線運動に対しては目のサッケード運動(衝動性眼球運動)と連動したとき、網膜上の画像が固定されて止まって見えることがある。これは直線運動している物体に注目してはっきり見ようと眼球や頭を意識的に動かすことで目のモーションブラー を止めるのや、鶏が歩くとき首を前後に振る動作と同じである。サッケード運動はすごく速くて像運動と連動したときは無意識的なので、止まって見えると印象に残りやすい。でもサッケードは意識的にはできないのでいつも見える、ということにはならない。
しかし眼球には光軸周りの回転の自由度はない。眼球運動用の筋肉は光軸に沿った方向にしかないし、もし回転したら太い視神経が捩れてしまう。視神経は脳までの距離が短いけど、やっぱり最終的には化学的な作用なので応答速度はせいぜい10msecぐらいのはずだし、また1つの視神経はフォトン1個に反応できるとは思えないので、ある程度の積分時間が必要なはずである。そして目にはCCDやC-MOSイメージャの電荷蓄積タイミング制御のような機能はない。したがってそれ以下の時間分解能は目にはない。つまり、回転している物体は、脳で処理される前に網膜上の画像としてボケる。
だから、カメラ越しではなく、間欠照明もない場所での肉眼で回転運動に対してストロボ効果が発生するとは思えない。肉眼で見えたというのはどこかに発光が電源(あるいはそのインバータ)に同期してしまうナトリウムランプや蛍光灯があることに気が付いてなかったのではないか、と思う。
もし、そうではない、という人がいたらコメントください。例えば「私の脳は網膜像のデコンボリューションができる」とか。
でも最近チコちゃんあまり面白くない。マンネリはしょうがないか。でも「逆連想ゲーム」は退屈で、どうせなら「とことん妄想ゲーム」とかのほうがいい。いやそれは、小さいおともだちに見せられなくなるか。
2020-12-05 10:23
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コメント(16)
家族と一緒に見ていて、ビデオカメラなら普通に起こるけど、車のタイヤを肉眼で見ていて、まずそんなことは起こらないよと突っ込んでました。実験していた扇風機の羽根などは、室内の蛍光灯なんかがストロボ効果を出していたんでしょうね。
decafishさんの見解でスッキリしました。^^
by aspect (2020-12-06 10:01)
コメントありがとうございます。
そうですよね。
番組ではまるで、太陽光の下で高速に乗って並走する車のタイヤが肉眼でそう見える、みたいな描写がありました。「そういう経験がある」という人の話を聞いてみたいです。
目の積分時間がどのくらいかわかりませんが(明るさによって違うかもしれません)、神経回路は時間的にはローパスなので折り返しノイズが現れることはないと思います。
ちなみにカメラだと空間的にも折り返しノイズが現れます。細かい縞模様の服が動く太い縞に見えるモアレがそうですが、人間の網膜は画素配置がアモスファル状なので空間的にも折り返しノイズが現れることはないはずです。これも肉眼で「モアレが見える」という人がいたら話を聞いてみたいです。
by decafish (2020-12-06 16:34)
「人間の網膜は画素配置がアモスファル状」なんですね! 銀塩写真の粒子の様な感じなんでしょうか? そんな配列で脳はどんな具合に画素の位置関係を把握してるんですかね。
いやいや、デジタルじゃないので、座標軸なんて関係ないか。1枚のアナログ写真として瞬時に認識してるんでしょうかね。 decafishさんのブログは好奇心をくすぐってくれます。
ちなみに、網膜の画素数は、便宜的にどれぐらいの感じになるのかご存知でしょうか?
by aspect (2020-12-06 22:23)
すみません、「アモルファス状」というのは僕の勝手な思い込みです。教科書的な知識では視細胞は層状で、2次元的にランダムに配置されているようです。
しかし僕が思うに、完全ランダムでは画素数(視細胞数)に対して平均解像度が低くなってしまいます(密なところと疎なところができてしまう)。ちょうど2次元アモルファスに配置されると解像度の低下が抑えられます。実際の視細胞の配置はそうなっているように見えますし、以上のようにそうなっているのが合理的だと思います。
一方、銀塩写真は厚みのある膜の媒体の中に粒子が懸濁している状態なので粒子間隔はランダムな3次元分布と考えられます。粒子間の距離分布がどうなっているかは詳しく知らないのですが、exponentialかベキのような分布になってるとすると、粗密の分布の上にさらに厚み方向の散乱も重畳されるので、視細胞の配列と比較して、粒子サイズに対して解像度としてはかなり不利な配置になっていると思います。
視細胞と脳との配線はあらかじめ決まっているわけではなさそうです。発生過程で神経系がある程度出来上がってしまってから自己組織化的に接続関係が決まるようです。目は光学的には画角の広い単玉レンズなので像面湾曲と歪曲の収差は残留しますが、像面湾曲は網膜を球面状にすることで取り除いて、歪曲は脳への配線と脳での処理で取り除かれるようです。このあたりも非常に面白いです。
目の解像度に関しては色々なデータがあるようですが、具体的にはよく知りません。昔レーザで網膜に直接描画するメガネ型ディスプレイのデモを見たことがあります。僕は目が(目も)悪いのですが、視度を調整するとレーザの赤い線が今まで見たことがないくらい細く見えました。
少なくとも僕の網膜の解像度は無駄に高いようです。
by decafish (2020-12-07 09:29)
丁寧な解説ありがとうございます。
お時間を取らせてしまい恐縮しております。m(_ _)m
それにしても、人の目って凄いですね。
単玉レンズと球面状の網膜、脳の処理で収差を全く感じさせないんですもんね。 昔、一眼レフに虫眼鏡をつけて遊んだことがありましたが、いろんな収差の絶賛オンパレードだったのを思い出しました。(+_+)
話を戻して、やっぱり、日中走ってる車のタイヤが逆転して見えてしまうなんて、肉眼ではあり得ないですよね。(笑)
decafishさんのブログ、今後も多彩な話題を楽しみにしています。
by aspect (2020-12-07 14:05)
行き当たりばったりの駄文につきあっていただいてありがとうございます。
僕もあり得ないと思っていますが、ほんとはどなたか「いや、私には止まって見える」という人に書き込んでいただければ、議論がもっと面白くなるのですが。
とりあえず、今後ともよろしくお願いします。
by decafish (2020-12-07 18:17)
はじめまして。たびたびこちらのブログを参考にさせていただいている者です。いつも興味深い記事をありがとうございます。
ここら辺を見ると、サッケード運動の最中は視覚の信号処理が中断されているとされています。
https://www.nips.ac.jp/release/2007/05/post_62.html
https://www.webcartop.jp/2019/10/432671/
であれば太陽光でも逆回転されているように見えるはずですが、実体験ではわかりませんね。今度高速道路などで隣の車のタイヤをじっくり見てみます。
by お名前(必須) (2021-02-13 08:24)
コメントありがとうございます。
番組に出てきた専門家もそれを根拠にしているんだと思います。一連のサッケードのプロセスは脳の機能のうち比較的低レベルの、応答速度のかなり速い部類だと思います。
本文にも書いたように回転するタイヤが止まって見えるためにはサッケードが回転と同期して、かつ像を捨てるだけでなくサンプリングする必要があります。
例えば、タイヤの直径が70cmで時速60kmで走っているとすると1秒に7回転ぐらいしているはずです。ホイールの形にもよりますが、タイヤが4分の1回転すると像は流れてしまうと考えると、35m秒より十分短い積分時間でないと止まって見えない、ということになります。
シナプスの応答は電気化学的な反応なので数m秒はかかります。いくら高速のサッケードとはいえ、膝蓋腱反射みたいなプロセスではないのでシナプスを少なくとも数個は経由しているはずで、それだけで10m秒ぐらいかかってしまいます。
たとえば
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/15-05-kaisetsu2.pdf
の図6に視神経系の応答のグラフがあります。これだとインパルスに応答するだけで50m秒以上かかっています。つまり光量の積分時間は少なくともこれ以上あると考えるのが自然です。
また、サッケードのタイミングは正確なものではなく、僕自身を観察した限りでは、注視していると眼球運動が少なくサッケード間隔も広がって多くてせいぜい1秒間に数回という程度だと思います。僕は飛蚊症のおかげで無意識の眼球運動のタイミングが自覚できます(水晶体内のゴミがピクッと動いたあとゆっくり流れます)。
一方、カメラの半導体でできたイメージャの平均的な感度では、F/8ぐらいの暗いめのレンズだったとしても晴天外光下だと1m秒以下の積分時間で十分です。またカメラのフレームレートは例えば30fpsと一定で、33m秒間隔でそのうちの1m秒だけサンプリングと考えれば、カメラでは回転と同期してしかも絵はそれほど流れないということは十分あり得ます。
ということで「サッケード中の信号遮断が原因」というのは一桁速くないとありえないんじゃね?というのが僕の考えです。
もし自然光下で、走っている車のタイヤが止まって見えたら、ぜひ教えてください。
by decafish (2021-02-13 11:17)
自分の目での見え方が人と違うかもと思い調べていてここにきました。
記載している内容と少し違うかもしれませんが私は走っている車のホイールが一瞬止まって見えます。
走行中の車のホイールを見ていてパッと目を閉じると最後の一瞬が止まって見えます。
信号待ちの時など何度も目を閉じてホイールの形当てゲームを一人でしています。
これは何という現象なのでしょうか?
by OK (2021-11-16 20:20)
コメントありがとうございます。
「見える」って人がいたら面白いのにな、と思っていたらまさしくそのままのコメントいただいて最高です。
「形当てゲーム」ができる、ということは思い込みとかではなくて、形が把握できていることを客観的にも確認できる、ということですよね。それは決定的です。不思議で面白いです。
一点気になることがあります。いただいたコメントで「パッと目を閉じると最後の一瞬が止まって見え」るというのは必要条件でしょうか。つまり目を開けた状態では止まって見えなくて、「目を閉じる」ことが必要なのでしょうか。
是非、追加コメントお願いします。
by decafish (2021-11-16 22:10)
コメントに対して返答ありがとうございます。パッと眼を閉じるのが一番簡単ですが、「パッと眼を逸らす」でも止まって見えます。
初めはパッと眼を逸らした瞬間に回転しているタイヤとホイールの形がブレて見えていました。何度も繰り返すうちにホイールの形状がハッキリと見えるようになりました。
パッと眼を逸らすのは連続で行うと眼球が疲れるので他に方法ないかと色々やっているうちに、閉じた瞬間も止まって見えるのに気づきました。
ちなみにこれをすると水道の水しぶきも止まって見えます。
by KO (2021-11-17 14:01)
そうですか、それは面白い。
これは誰でも試してみることができるので、僕もやってみます。しかしなんらかのコツ、あるいは訓練が必要ということでしょうか。
「目を閉じる」ということはいわゆる残像だと「止まって見える」ということになるのですが、目の応答速度だけから考えるとありえないです。
しかし、「応答」の考え方そのものが線型性を暗黙に仮定していますが、目から視神経→脳の経路は色々な非線形性が存在します。ひょっとするとそういう「非線形」の作用なのかも知れません。
非常に面白いです。僕も試してみてコメントいただいたようなことが見えたら記事にします。
ジジイなので「神経系の反応が速い若い人でないとダメ」みたいな制限があるとダメかも知れませんが....
by decafish (2021-11-17 20:46)
課題研究でストロボ効果について研究しようと思い、このブログを見つけました。高度な内容でしたがとても興味深いです。
僕の場合は、ミニカーを走らせるとタイヤが逆回転しているように見えます。(マイカーはないので一般車のことはわかりませんが。)
幼少期より気になっていたことがあります。走っている電車から線路を見ると、線路から反射された光が電車と並走しながら緩急をつけて前進後進を繰り返しているように見えます。これにもストロボ効果が現れているのでしょうか?
by 高1 (2022-02-27 14:32)
コメントありがとうございます。
面白そうな話を追加していただいたので考えて見たいと思います。もう少し詳細を教えてください。
視覚に限らず人間の感覚はすべて強い非線形性があるので、カメラとは違う見え方がありえると思います。
このブログはこの数ヶ月止まっていましたが、この「目視でのストロボ効果はあるか」の話も興味深いので話を追加したい思っています。
そのためには実験も必要なので準備しないといけないですが。
by decafish (2022-02-27 21:20)
止まることは少なく、ゆっくりか逆回転に見えますね
下道では経験ありません
高速道路で並走するトラックのホイールを見れば置きますよ
光源は陽光のみなのでパルスではありません
議論が終わったトピックに突然失礼します
by baushlomb (2023-01-25 19:05)
コメントありがとうございます。
いえいえ、これは実験も含めて続けるつもりです。ちょっと個人的な理由で進めることができなくなっていますが、平常運転に戻ったら再開するつもりでいます。
気長にお待ちください。
by お名前(必須) (2023-01-26 07:06)