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「フーガ」読了 [読書]

白水社、文庫クセジュ。
フーガ









たまにはこういうのも面白かろうと買ってみた。
内容的にはちょっと古くさいという感じもしないではないが、全体は音楽家の書いた本らしくJ.S.バッハの章を中央にすえたアーチ型の構造をしている。

歴史的な観点が中心のバッハ以前、バッハ、バッハ以降という流れと、フーガという形式が持ちえた音楽的な構造の説明が平行して書かれていてわかりにくく読みづらい。フーガはソナタ形式のような曲全体を律するための入れ物ではないということと、バッハが極限まで拡散させ尽くして簡潔な分類を不可能にしているため統一的な解説が難しい、ということがそもそものわかりにくさの原因になっていると思われる。

そう考えると、シェーンベルクの「対位法」のように技法として無機的に解説するのが、やはりフーガを理論的に説明する最もわかりやすいアプローチだと思うが、この著者はそれを避け、というかおそらくできずに、上に述べたようなアプローチをとっている。結局この本で一番面白かったのは最後の章「フーガの諸相」でフーガの情緒的な側面を分類した部分。そこで著者は逃走追跡狩りなどの描写的なフーガや象徴性劇的叙情的なフーガなどという風に分類して例を挙げてみせる。2声目が5度上で出るか4度上で出るかなんかの分類よりずっと面白い。とくにベートーヴェンの弦楽四重奏の「大フーガ」を4ページにわたって説明しているが、バッハの「フーガの技法」でさえ3ページしかないことを考えると書かずにはいられなくなったという感じがにじみ出ていて面白い。

しかし、所々でフランスものが一般的な評価よりも重く取り上げられている点(因みに著者はフランス人)と、いわゆる現代音楽に対して寛大であるところがちょっと気になる。バルトークの「弦チェレ」の第1楽章を取り上げるのは納得がいくとしてもメシアンの「嬰児イエス」が『鍵盤楽器のためのフーガの発展の究極点ともいえる..』と評価するのはちょっと行き過ぎではないかと思う。僕はメシアンには冷たいか?「嬰児」は10曲のコラールとかがかっこ良くてまねしようと思ったこともあるぐらいだが、「フーガの究極点」かあ? そういう評価が一般的なの?

それと、特にバッハ以前で引用されている曲の譜例がないことがあって、ちょっとこれは不親切である。僕がルネサンス、バロック期の音楽に不案内なせいもあるが、説明されている曲がどんな曲なのかわからなくてピンとこない。

僕の文章も影響を受けて読みづらくなってしまった。


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