「光の場、電子の海」追記 [読書]
昨日書いた読書感想文を読み返してみると、ぜんぜん感想文になっていなかった。本を買ったことはわかるけど、あとはどうでもいい昔話が書いてあるだけだった。ということで本の内容に関することを追記。
これまで読んだ量子力学や素粒子論の「お話」の本は、ふたつに分類できる。ダリとそれ以外、ではなくて
- 量子力学成立前夜から確立までの歴史
- 素粒子の分類解釈、標準模型から超ひも理論などの展望
この本は前期量子論から標準模型が確立するところまでを、「場の量子論」をキーワードにして地続きのものとして語る。
確かに僕らが勉強した量子力学は、光の粒子性なんかを問題意識に持って始まったのに、できあがったものに光は含まれていなかった。よく考えればごまかされていると言える。
でも、それは当たり前でシュレーディンガーの波動方程式は相対論の要請を満足していなかった。でもシュレーディンガーの波動方程式は大成功を収める。光を含んでいなくても十分な応用範囲があった。初学者に対して、ここで一旦区切るのは教育的配慮としては正しい。
ところが、量子論の開拓者たちはもちろんそれで満足していなかった。シュレーディンガーの波動方程式がいろいろな問題を解決するのを横目で見ながら光を含めるにはどうすればいいか、を考え続けた。ほとんど1年ごとに新しい理論が提案され、概念はどんどん洗練されていった。実は光を扱うためにはアインシュタインが特殊相対論を作ったときにニュートンの運動方程式について行ったパターンを踏めばできる、というようなものではなかった。その過程がこの本では語られる。この部分がこの本の白眉である。登場人物は入れ替わっていくけど、本当に短い間に理論が充実していったことがわかる。
できあがった光を含んだ場の量子論は、シュレーディンガーの量子力学でさえ当たり前に見えるほど日常的な常識からさらにかけ離れたものになった。
でも、前回も書いたけど、場の量子論は難しい。この本を読んでもう一度勉強に挑戦してみたい、と思ったけど、いい本がどうしても見当たらなかった、ということも前回書いた。
吉田さん、お願い、僕でも勉強できる本を書いて。
私は、この辺のことはもう頭が追いつきませんが、定年後ゆっくりと勉強してみたいと思っております。(^^;
by たこやきおやじ (2009-01-30 09:00)
コメントありがとうございます。
物理学の最先端は数学的にも洗練され、抽象的になって、すごく難しくなっているように思います。僕には前世紀の現代音楽とダブって見えてしまうのですが、我々が定年の頃には我々にも手が届くものになっているのでしょうか...
by decafish (2009-01-30 21:51)
私は高校生の頃は物理学科を目指しておりました。しかし結局はいれたのは「古典ギター部付属電子工学科」(^^;で電子回路をやりました。当然ギターばかり弾いておりましたのでろくすっぽ勉強はしませんでしたので就職も営業職になりました。
勉強というよりも、少しでも現代の物理学を理解したいという欲求があります。
これまでも、10年に一度くらいは思い立って本を買って読んでみたりはしましたが、通勤途中の電車で読むくらいではとても理解に至るまでには行きません。(^^;
by たこやきおやじ (2009-02-02 09:23)
うわあ、驚きました。他人ごととは思えません。
実は僕もある大学の理学部物理学科を目指したのですが果たせず、別の大学の「電子工学科クラシックギター課程」に入学しました。一日12時間以上学校にいながらそのうち8時間近くギターを弾いていました。
そのあと「ギター課程」に籍を置きながら物性関係の研究室で修士課程に進みました。結局ギターは6年間みっちり弾きました。
本当に、奇遇です。
by decafish (2009-02-02 22:04)