偏光の計算 - その2 [偏光のMathematicaによる計算]
昨日の続き。昨日はストークスパラメータで、今日はポアンカレ球。おお、ポアンカレさん。
ポアンカレ球
昨日のストークスパラメータの式-8を見ればわかるように、ストークスパラメータの値を測定すれば、原理的には(精度は別にして)楕円偏光の軸の方向と楕円率がわかることになる。そのためには式-8をχとψについて解き直せばいい。それはあとでやる。
そして式-8をみると3次元の極座標表示によく似ていることがわかる。単色平面波の場合には、式-9からこのまま(s1,s2,s3)を3次元の座標と考えれば、図-1のようにストークスパラメータは球面上の一点を表すことになる。これをポアンカレ球(Poincaré Sphere)という。
ポアンカレさんはこういう図形的な直感を働かせることがほんとに得意。ポアンカレ球を見れば- ストークスパラメータを測定する
- その点がポアンカレ球のどの位置に対応するか考える
- その位置から軸方向と楕円率がわかる
ポアンカレ球の表面上を極座標で指定する角度と偏光の方位など(「2」の係数があるので倍半分の関係になっている)を混同しないように気をつけながら式-8とポアンカレ球を見比べると
- 赤道は直線偏光に対応する
- 北極と南極はそれぞれ向きが逆の円偏光に対応する
- その途中は途中なりの楕円偏光に対応する
- 経度はグリニッジを横偏光とすると太平洋の日付変更線のあたりは縦偏光に
- インド洋は45°偏光に
- ガラパゴスは-45°偏光に対応する
- 途中の緯度の楕円偏光は軸方向がその経度に対応した方位を向く
例えばs0の値に比べて
- s1とs2の絶対値の少なくとも一方が小さくなければ直線偏光に近い
- そのときs1の方が大きければ横あるいは縦偏光、s2が大きければ45°方向の偏光にちかい
- s1とs2が両方とも小さくてs3の絶対値が大きければ円偏光に近い
- そのとき円偏光の向きはs3の符号を見ればわかる
ポアンカレ球が便利なのはこんなことではなくて、例えばある方位を向いた1/4波長板を通すとどうなるか、なんていうことが図形的に理解できる。あとでこれを詳しく書くけど、でもストークスパラメータを見つけてからポアンカレ球を考えつくまで50年ある。その50年間はポアンカレ球無しにやってたんだよな。大変だったろう。
今日はポアンカレ球のさわりだけ。次にジョーンズベクトルをさらってそのあともう一度整理する。面白くなるのはそのあとかな。
2009-02-18 23:13
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コメント(2)
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明日、急遽偏光測定をすることになったので、一夜漬けで勉強してます。今晩中に、全部読めるかな・・・。「ポアンカレ球」のポアンカレと、「ポアンカレ予想」のポアンカレって、同じ人だったんですね。今日初めて知りました。。
ポアンカレは、絵がすごい下手だったから、幾何学にはとっとと見切りをつけてトポロジーを始めたと、この前読んだ本に書いてありました。出力としての絵は下手っぴでも、頭の中には鮮明な絵が浮かんでたんでしょうねぇ。すご。
by mto (2010-06-04 00:39)
コメントありがとうございます。
ポアンカレが「絵がすごい下手だった」というのは初めて聞きました。しかしポアンカレの業績には抽象的な概念を視覚的にとらえるというのが多いような気がします。
僕にとって科学者としてのヒーローは、ニュートンでもガウスでもマクスウェルでもアインシュタインボーアハイゼンベルクディラックファインマンゲルマンでもなく、実はポアンカレでした。
ポアンカレみたいなことがしたい、と若い頃は思っていましたが、真似できたところは「やり散らかす」というとこだけでした。
by decafish (2010-06-04 21:54)