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「中世・ルネサンスの音楽」読了 [読書]

本当は面白そうなSFを読みたかったんだけど、なかったので。
皆川達夫著、講談社学術文庫。
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実はバッハ以前の音楽はあまり知らない。僕のiTunesライブラリにもバッハより前で、メジャーなブクステフーデ/テレマン/スカルラッティ/ヴィヴァルディ以外と言えば

作曲者AAC圧縮後の容量
ダウランド341.9MB
グレゴリオ聖歌116.9MB
バード70.9MB
クレメンティ62.4MB
モンテヴェルディ55.2MB
ガブリエリ48.6MB
なんて感じで、あとは星印。グレゴリオ聖歌以外はこの本の歴史を語った最初から205ページまでの中で、170ページ以降に出てくる人たちばかり。これより古い人たち、マショー、デュファイ、ダンスタブル、オケゲム、ジョスカン・デ・プレ、などなど名前は何となく聴いたことあるけどその音楽は全然知らない。

この本にはさらに古い、名も無い人たちが出てきて本当に長い歴史があることがわかる。でも著者が何度も弁解しているように(そしてエリック・ドルフィーが最後に言葉として残したように)音は発せられたすぐそのあとには消えてなくなってしまう。楽譜があっても記譜法がわからなかったり、そもそも門外不出の技能として譜面を残さなかったことが多いらしく、なかなかその古い音楽がどんなだったかはわからない。

この本にでてくる作曲者や演奏者も、名前はでてくるけどどんな音楽だったか具体的に音符などが掲載されているのは少ない。これではピンと来なくて全然わからない。音楽に関する本なのにこれは厳しい。

結局、現物を知らずに辞書で調べて「ふーん」とか言ってるのと変わりない。音楽に関する博物学は意味が無い。

だからこそ、著者のアマチュアコーラスとのルネサンス期の音楽の再現の地道な努力は貴重である。ただし、その音を聴く機会はなかなかない。売れない音楽は存在価値が無い音楽業界で彼らの幅広い公演や録音は残念ながらこれからも期待できない。

僕が中学のとき、ブラスバンドにエキストラとして(クラブ員ではなく)参加したことがある。どういう経緯か忘れたけどクラリネットを自分で持っていのでそれを吹いていた。クラブ室には先輩の残した楽譜がいくつかあって、その中にガブリエリの楽譜があった。手書きの楽譜の青焼きでたぶんクラブの先輩の誰かがレコードを聴いて耳コピしたものだと思うけど金管アンサンブル用になっていた。多くがカノンとコラールが交互に入れ替わる曲で、出だしはファーストトランペットの「ソーソソ(4分8分8分音符、実音ではファーファファか)」というという音型でカノンが始まる曲が何曲かあった。指揮者のいなかった時代、テンポを合わせる目的を兼ねた主題だったのだろう。

ブラスバンドの全体練習で、つまらないスーザとかの行進曲を延々やらされて、そのうちダレてざわついてくると、トランペットの誰かが「ソーソソ」と吹き始めて、他のメンバもつぎつぎ呼応してガブリエリのカンツォンが大音量で始まってしまう。練習を見ていた音楽の先生が怒り出して行進曲に無理矢理戻らされるということがたびたびあった。木管のメンバは笑って聴いてるだけだったけど、金管の連中は皆ガブリエリが大好きで、楽器を持ち出しては校庭の隅や中庭でしょっちゅう合わせていた。でもなぜかブラスバンドとしてガブリエリを正式に練習して披露する、ということは結局なかった。すくなくともスーザよりずっと面白かったのに。

今思えばあれがルネサンス音楽との僕の最初の出会いだった。


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