Zernike多項式 - その3 Zernike多項式の導出 [Zernike多項式のMathematica関数]
Zernike多項式は単位円の中で直交する関数列である。そのような関数列はGram-Schmidtの直交化法などでいくらでも作ることができる。でも、その中で簡単で便利で役に立つ関数列はそれなりに工夫しないと作れない。
無限にある直交関数列のなかで、Zernike多項式はどういう特徴を持ったものなのか、その特徴を持つ具体的な関数の形を得るにはどうするか、という話。
Zernike多項式の具体的な表式を求める
多項式と言いながら極座標で書いてあるけど、これは実はデカルト座標(普通の直交座標)に変換すると、ρと最大次数は同じのxとyに関する多項式になる。
Zernike多項式の導き方をBorn&Wolfの第2巻の付録に従って大筋を追ってみる。
Zernike多項式生成の条件
単位円内で直交する関数系は無限にある。ある関数系に
- 直交座標x、yに関する多項式である
- 単位円内で直交する
- 座標軸を回転させても形式は変わらない
この条件を満足する多項式Vi(x,y)は、まず三つ目の条件から、mを整数として
の形でなければならない(というかこれしかない。これしかない、というこをどうやって証明したらいいのかわからないけど、これしか思いつかない)。従って一般にVi(x,y)は複素関数となる。式-9から直交条件は(複素関数であることを考慮して)
となってふたつの積分に別れる。ここでA†はAの複素共役を表す。また、積分範囲のCは単位円の内部であるとする。後ろのθに関する積分はm=sのとき以外は0になるのでVi(x,y)が直交するためには同じmに対してRim(ρ)が単独で直交している必要がある。
さらに、V(x,y)がx、yのn次の多項式だとすると
- Rim(ρ)はρのたかだかn次の多項式
- -n ≦ m ≦ n
- n-|m|は偶数
- Rim(ρ)はρ|m|以下の次数を含まない
また最後の性質は多項式の最低次数がμだった場合、(ρ*cosθ)μや(ρ*sinθ)μからeiμθのような係数が現れるが、eimθをくくり出すためには少なくともμ≧mでなければならないからである(μ=m+ν(ν≧0)ならeimθeiνθとできる)。
動径関数の具体的な生成
ということで動径関数Rim(ρ)は、上の制限を満足するnとmの添字ふたつの組み合わせで指定できるはずである。従って抽象的な添字iの代わりに具体的な次数nと回転数mのふたつを使えばいいということになる。
ということであとは、あるmの値に対してρのベキの列(ρ|m|、ρ|m|+2、ρ|m|+4...)からGram-Schmidtの直交化法でもなんでも使って順番に直交列を作れば動径関数Rim(ρ)が得られる。
でもそういうやりかただと無限個あるmそれぞれについて無限回直交化をやらないといけないので、うまく一般項の形が表現できればいいけど思いつかなければ厳しい。Born&Wolfでは動径関数列をJacobiの超幾何多項式から作っている。見慣れないので難しいけど、Jacobiの超幾何多項式の性質から直接動径関数の一般形が得られる。
Born&Wolfから結果を引き写すと
だそうである。うーん。よくわからんけどすごい。これだと具体的にnとmの値を与えれば多項式の形が計算できる。Gram-Schmidtをやっていってこれを導くのはひらめきがないと無理だろうな。ちなみに、Born&Wolfのこの部分の導出は「さて、周知のようにJacobiの(超幾何)多項式は、云々」となっていて突然Jacobiの超幾何多項式が現れる。Jacobiの超幾何多項式が「世間一般に広く知れ渡っている」かなあ?まるで八百屋のオヤジに訊いたら「らっしゃい! Jacobiの超幾何多項式? あるよっ、もう(0,1)で直交化できてるからあとは軽く茹でておひたしとかでもいいよっ、味噌汁にも合うしねっ!」と言う感じ。
式-4のRim(ρ,θ)は、式-9のVに添字をつけて
とすればよい(実関数が作れる)ということになる。Zernikeさんは正規化
のかわりに とした。この方がρのベキの係数がうまく整数になって式がシンプルになる。さすがノーベル賞。詳細はBorn&Wolfの第2巻を参照していただきたい。
ちょとハードな数学が続いたけど、今回の内容に基づいて次回はこの多項式列の並べかたについて。
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