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西之園さん [昔話]

こないだお読み終わった「すべてがFになる」には主人公の一人として西之園萌絵という二十歳前の少女が活躍する。
中学のときの同級生に西園(にしぞの)さんと言う女の子がいた。
彼女はおっとりとした、というかいつもぼーっとしてるような感じの少女であまり付き合いもなかった。

中学3年のある日の朝礼で彼女が「西之園に名前が変わりました」という。

高校入試のために戸籍謄本を取り寄せた(当時はそんなものが必要だった)ら、名字の二文字の間に「之」の字が書いてあった、どうもこれが本当の名前らしいのでこれからそう呼んでほしい、というのである。

そのときは、そんなこともあるのか、とそれほど感慨もなかった。 今回、森博嗣の本に出てくる主人公の名前からそのことを久しぶりに思い出した。

中学の同級生の「西之園」さんは、小さい頃両親と死に別れて他人にもらわれていった天涯孤独の少女、というわけではなく、普通のサラリーマンの当時一般的だった3世代同居の家庭の子供だったと思う。

謄本を見たご両親は頭を寄せあって「ありゃ、之の字がある」とか言って驚いたのだろうか。隣の部屋からおじいちゃんが出てきて「そら知らなんだなあ」とか言ったのだろうか。

いったいどこで自分たちの名前をわすれたんだろう。まるで落語の「代書屋」ではないか。

「わたし、自分の名前が松本やちゅうのを長いこと知らなんだんですわ」
「オヤジが臨終の枕元にわたしを呼んで、苦しい息のもとで、
 『とめぇ〜、おまえの名前はぁ、まつもとやぁ〜.....ことっ』
 と逝ったんですわ」
「そやからよう覚えてますねん、松本です!」
ちなみにこれは桂枝雀のバージョン。30年以上前のことならよく覚えてるのになあ。関西落語のメジャーなネタは、たぶんだいたい暗唱できる、米朝師匠の「地獄八景」以外は。

それはいいとして、また今気になることができてしまった。
「西之園」さんのお父さんは、彼の会社で同じように「名前が変わりました」とか言ったんだろうか...

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