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ちょっと前の論文を読んでみる - その9 [趣味のメタマテリアル]

前回まで屈折率が負であるとは、どういうことなのか、をVeselagoさんに従って考えて、それなりの理解を得た。屈折率が負とは、光の位相が進む方向とエネルギーが流れる方向が逆になる、ということ。これ自身は「まあ、ありかも」と思えるけど、そのような媒質と通常の媒質との境界では不思議なことが起こるらしい。

今日からPendryさんの論文の抄訳を続けることにする。この部分が論文のキモなので一気にいく。

このレターで発する新しいメッセージは特に、この媒質はエバネセント波の減少もキャンセルする、ということである。 ここでの挑戦は、このような波は物体面から離れるにしたがって、振幅は減少するが、位相はそうではない、ということである。 したがって、光をフォーカスさせるのに必要なのは位相を正すことではなくて、増幅することである。 このあと、エバネセント波が媒質の反対側の面から現れて透過している間に振幅が増えることを示す。これはエネルギー保存則を破っているわけではない、なぜならエバネセント波はエネルギーを運ばないからである。しかし、にもかかわらず驚くべき結果が現れる。

証明は難しくない。S-偏光の光が真空中にあるとしよう。電場は
0907eq13.png
と書ける[[kxがあるので進行方向はxz平面内で、電場はy成分だけがあるのでたしかにS-偏光]]。ここで波数ベクトル
0907eq14.png
は、指数関数的な減少を表す[[この式ではエヴァネセントな成分だけを議論している。不等号が逆の成分は普通の伝播波になる。ちなみにkyが残っているが本質的ではない。一般的な表現にしただけで、0だと思ってもいいだろう]]。 境界面で反射があるとして
0907eq15.png
さらに透過があるとして
0907eq16.png
ここで
0907eq17.png
である。

因果律からこの波の形を選ぶ。つまり境界面から離れるにしたがって強度は[[もし境界面の向こうの媒質が通常の物質だったら]]減少しなければならない。 境界の前後で場は連続という条件から
0907eq18.png
反対に、 媒質の内部の光は真空への境界面で透過と反射がつぎのように起こる
0907eq19.png
境界面の両方を通る透過率は、多重干渉を考慮して
0907eq20.png
式-18から式-19を代入して[[本文では式-19から20を代入して、となっているがトリビアルな間違い]]、極限をとると
0907eq21.png
[[この極限操作は、これまで一般的な場合について考えてきたけど、ここから境界面に挟まれた媒質は透磁率と誘電率が両方とも負のメタマテリアルであると仮定することになる]]
反射係数は同様に
0907eq22.png
同様にp-偏光に対しても
0907eq23.png
このように注意深く厳密に計算しても、最終的な結果は媒質がエバネセント波を増幅することに帰着する。 すなわち、この新しいレンズは伝播波とエバネセント波の両方が像の解像度に寄与する、と結論付けられる。 したがって、実際的なアパチャやレンズ表面の面精度を超えた、像の完全な再合成に対する物理的な障害はない。 このことはこのレターの原理的な結論である。
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