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冤罪 [日常のあれやこれや]

先々週に工場に行って作ったサンプルの測定データに先週疑義が出た。レーザビームのフォーカス付近でのある方向でのビームの太さが、僕が測ったのより他所社製品の測定機で測ったほうが1.5倍も太いという結果が出た。そっちの値だと弁解の余地なく仕様を大きく外れることになる....

ビームの形がHe-Neレーザのような回転対称なガウシアンだったら問題も出なかったんだろうけど、今回のサンプルは非対称性が強くて、ある方向に対してだけしか太さが定義できない。僕は無圧縮カメラで強度分布をとってそこから計算した。製品の調整は僕の作った装置を使うし、それもカメラで強度分布を見ながらやるので、調整し終わったあと、そのカメラを使ってデータをとって僕は横浜に帰ってきた。

そのあと、先週に入って工場のメンバが出荷前に検査するので測定機で測ったら1.5倍近く太い、という結果になった。その測定機は有名レーザメーカ製の汎用レーザビームプロファイラでナイフエッジをスキャンして強度分布を取る方式。工場からそれ見たことかと言わんばかりに社長以下横浜メンバへ間髪入れず報告が入った。
(社の他の人)「こんなに違うのって誤差とは言えないでしょ」
(僕)『もちろんどっちかが間違ってるんですよ』
「またいつもの調子で百円ショップのガラクタ使ったんじゃないの」
『今回は工場だったからちゃんとしてますよ。
   だいいち百均だろうがなんだろうが精度に問題の出るような使い方はしないですよ』
「この測定機はC社製のだしなあ。あんたが来る前のことだから知らないだろうけど、
   C社の同じシリーズの装置を持っているお客さんともうちの製品で相関が取れてたんだし」
『そのときってこんな非対称なビームだったんですか?』
「そもそもずっとこれでデータ取ってるんだよ。こんなに違ったら誰でも気がつくでしょ」
『そういえばこのC社測定機のデータ、おかしくないですか?
   2次元の等高線表示の幅と1次元の断面表示の幅が全然ちがいますよ?』
「たった今工場から、実験用に使っているM社製のプロファイラで測りなおしたら
   違う測定機なのにC社のとほぼ同じ値が出たって言ってきたよ」
『そのデータも見せてくださいよ。なんだかんだ言われても、僕の測定結果の方が設計値にずっと近いし』
「設計もあんたがやったんだったよなあ。そういえば測定のソフトウェアもあんたが書いたんじゃないの?」
『他の誰も書かないし。確かにSpeckleを減らすのに細工はしてるけど、それで1.5倍も違ったりしないし』
「やっぱりもう一回、測りなおしてみれば?」
『もちろんそれはやりますけど、
   工場側で測定機のメーカにやり方があってるか確認してもらってくださいよ』
なんてやりとりがまる一週間ずっと続いていた。いや、もちろんこんなストレートな会話ではなかったけど、内容はそのまんま。サンプルが出せなくて、めちゃ旗色悪かった。

そのあと測定機のメーカからの返事が工場に来てそれによると、こういう非対称性のビームは非対称な軸をこっちに向けてこれこれのモードで測らないと誤差が出ます、というものだった。今日になって工場でその指示に従って測ると僕のデータとほぼ同じ値が出てきた、仕様範囲内なのでサンプルとして出荷した、と言ってきた。工場としては僕を凹ますことよりもサンプル出荷を優先した、ということだろう。

ナイフエッジやスリットをスキャンする方式ではS/NはとれるしSpeckleの心配をする必要はないけど、厳密に言えば2次元強度分布がそれぞれの座標軸方向に変数分離できるような形でないと結果はデタラメになる。そういうのをごまかすモードというのが、おそらくあるんだろう。それはそれで問題ないし、僕はそんなやり方で測るのは苦手なので敬して遠ざけることにしたいと思っている。

「漫然」「無批判」「権威主義」は、前の会社では蔓延していてうんざりしてたけど、そういうのはどこでもあることだろうと思っていた。でも今のこんな小さな会社でもあると今回初めて知って、なんというか、なんとも言えない気分になる。
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