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カレーを食べて思い出したこと [昔話]

昔出張で何度もシンガポールに行った。
シンガポールには工場があって、そこに生産展開するためだったが、仕事の話はどうでもいい。

シンガポールに行きたてのころ、当時現地のシンガポーリアン技術者とは僕も含めてみんな仲がよく、しょっちゅう彼らに食べに連れて行ってもらっていたが、たまたまある休日に日本から来ているメンバーだけで食事しに出かけた。カッページプラザ(今でもあるんかいな)かどこかだったと思うが、そこのインド料理屋に入った。

当時は日本人客が多く日本料理店もそのビルにはいっぱい入っていて、そのインド料理屋のオヤジは日本人のことはよく知っている、と言った。曰く、「日本人はどんな動物、魚でも食べる」「日本人は辛いのはダメ」「だからうちでは日本人向けのメニューも用意してある」などなどとテーブルの横に来てずーっとしゃべってる(もちろんシングリッシュで)。

そのうちオヤジのおすすめ料理が出てきて、食べるとみんな口々に「辛い!(Very hot!)」と、言い出した。すると件のオヤジ、
「うちでは辛さは5段階に調節していてる」「日本人向けは第1レベルであってこれが一番辛くない」
それでも十分辛いと言うと
「そうか、では第5レベルを食べると日本人は死ぬ(You Japanese must die when you eat our level 5 dishes)」と言って大声で笑った。
しかしどう見ても隣のテーブルで食ってるインド風の大男の皿の上のものと同じにしか思えなかったんだよなあ。

別の休日に、また日本人だけで食べに出かけた。オーチャードのはずれの一本脇道に入ったところにある白壁の個建てのインド料理屋に入った。メニューが筆記体の手書きで全然読めず、サリーを着たお姉さんウェイトレスにリコメンドしてくれと頼んだ。そうするとまた彼女も実に流暢なキングズイングリッシュでメニューの行をひとつ指差しては材料から調理法まで説明して、また別の行を指差す。5品めあたりで、わかったのでそれをひとつずつ持ってきてくれ、と頼んだ。普段どこに行ってもブロークンなシングリッシュばかり聞いていたのでこのときは驚いた。

それほど高くもなく辛いが落ち着いた味で気に入ったので、別の休日に一人で食べにいこうと思ったが、どうしても道がわからず行きつけなかなった。その夜は歩き回ったあげくそのへんのホッカセンターで空芯菜の炒め物や鳥の唐揚げを一人で食べた。それはそれで旨かった。あの当時はビールを頼むと室温のタイガービールに氷の入ったコップ(どこへ行っても青い色素の入った樹脂成形品)をくれた。

シンガポールではどこに行っても食い物は旨かった。昼にしか開けず夜行くとボロ傘のような屋根だけのどう見ても汚らしいホッカセンターでも実に旨かった。そういうところでは麺もトッピングも何十種類もあってわけもわからず適当に「あれとこれとそれ」みたいにして汁と一緒に器に放り込んでもらって食べたりして、屋台のおばちゃんが怪訝そうな顔をするのはきっとへんてこりんな組み合わせだったからだろうが、何を食っても旨かった。特に焼きそばは大好物になった。店それぞれに味が違う。麺もいろいろ。わざとちょっと焦がしてあったりしてそれがまた香ばしい。

旨いもんでホッカセンター巡りをしていて、麺の汁を日本でするように器に口を付けて飲んでいたらシンガポーリアンの一人から「気をつけろ」と言われた。器の内側は洗うがこういうところでは水は貴重品なので器の外はどうなっているかわからない、だからシンガポール人は汁を飲むのにレンゲを使うし、テーブルの上にこぼれたものを食べたりしない。しかし必要なところはちゃんと洗っている、それを知っていれば問題ない。彼はそれを「Chinese Rationalism(中国式合理主義、本来は別の意味だよな)」と呼んでいた。

全然別のところで別のメンバとホッカセンターで食事をしていると、シンガポーリアンの一人が日本人観光客らしい4、5人連れの女性を見て「日本人はアメリカ人のように丈夫だな」と言い出した。彼女らは僕と同じように器に口を付けていたらしい。「シンガポール人がそれをやると腹を壊す(腹を押さえてうーんと唸ってみせた)」いやいやあれは日本の習慣で、と彼には説明したが、観光客女性たちには何の忠告もしなかった。ちなみに彼はアメリカ人には皿の上とテーブルの上の区別がないと言っていた。

僕は旨い旨いと言っていろんなところで何でも食べたが、だめな人もいた。彼は昼食は工場のキャンティーンでは食べず必ず近所の冷房の効いた食堂に一人で出かけた。夜もシンガポーリアンとは一緒に食事に出ず、一人でホテルの日本料理屋なんかで食事をしていた。しかし、たくさんの日本からのメンバのなかで彼一人だけが赴任することになった。3年ほどの短い赴任を終えて日本に帰ってきて話を聞くととうとう一度もホッカセンターには行ったことがなかったと言う。

...
ひとそれぞれ。


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