CD「ショスタコーヴィチオーケストラ曲集」 [クラシック]
昨日の山下洋輔トリオと一緒に横浜タワレコで買った。
ロジェストヴェンスキー指揮の5枚組。
一枚あたり500円ほどの値段に惹かれた。
交響曲協奏曲序曲など以外の、ショスタコーヴィチのオーケストラ曲の中でも特にマイナーな、普通の人ならまず知らんだろというような曲だけをひとまとめにして作品番号順に並べてある。
ロジェストヴェンスキーが80年前後に録音したものを寄せ集めたようである。録音のコンディションはてんでんばらばらで古いものによってはかなり状態が悪いが、まあこんなもんだろ。逆に演奏は曲のツボを押さえた上出来揃い。いやほんと、どれも中途半端な音がなくて生き生きとして実にいい。ロジェストヴェンさん、こんなに上手いとは知らなかった。
これで聴かなければまず知らずに墓場に行っていた曲ばかり。よく集めたもんだ。Op.1のスケルツォから始まるが、これはショスタコーヴィチが13歳のときの曲。2小節の簡単なフレーズを展開して行くやりかたやオーケストラの音色の使い方なんか堂に入って、中学1年生が書いたと考えるとちょっとぶっとぶ。
マヤコフスキーの「南京虫」からの抜粋は何とも言えない膝かっくんの連続技で面白いし、映画「司祭と召使い」の音楽には機嫌のいい酔っぱらいの調子の良さみたいなうわっすべりな曲が次々現れる。マーラーみたいなオーケストラ伴奏歌曲は思いがけず美しいし、「カテリーナ・イズマイローヴァ」の間奏曲はどれも野卑でオーケストラががらんがらんとバケツを叩くように鳴っていてオペラ全曲聴きたくなるし、演劇「リア王」の音楽には「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るぅー」がそのまま現れる。それってなに?ブックレットにはキリル文字が並んでるだけで僕には情報ゼロに等しいしなあ。
ここに入っている曲は交響曲や弦楽四重奏のショスタコーヴィチとイメージがずいぶん違う。マーラーは自分の交響曲に農村の祭りの踊りや羊飼いの鼻歌や遊園地のジンタを織り込んだ。これを聴くと同じようにショスタコーヴィチは彼の時代のダンスホールや酒場の音楽を自分の音楽に取り込んでいることがわかるが、マーラーと違って自分の交響曲にはまったく使っていない。選り好んだのか、適材適所と考えたのか、それともやっぱりマーラーよりもずっと外部的な制約の多い人生やったんか。
ずっと昔から印象としてマーラーがドストエフスキーと、ショスタコーヴィチがカフカとだぶってしまう。ますますその通りに思えてくる。
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