Květy「Jablko Jejího Peří」 [ロック]
友人「T」から借りているCD。
彼とはもう十年前から気に入ったCDや本や漫画をお互いやり取りしている。彼の趣味は偏りまくっていて中途半端な商業路線には目もくれず個性的であることが絶対の真理でありそれを担うことが宇宙の存在理由である、とでもいうようなものばっかり。
彼とはメールのやり取りをしていて一時はひとつのメールがテキストだけで200KBを超えるほどのことがあった。中身はすべて聴いた音楽の話の合間にありとあらゆるタイプのギャグが埋め草として詰まっているというようなとんでもないもので、彼からのメールは全部宝物として大切に保存してある。
去年の始めに段ボール箱に入って来た大量のCDの感想をここに書いておこうと思う。「貸したものに対しては一言でもいいからコメントをよこせ」というのが友人Tの要求だったが、去年から彼の仕事が忙しいらしく(彼は僕のようなスチャラカリーマンと違って会社社長)、メールを出しても返事が返ってこなくなっているので、彼に出す替わりにここに書くことにする。
まずはじめにこれ。
チェコのバンドらしいがなにしろライナーが英語さえなくて読めない。「Květy」がバンドの名前なのか人の名前なのかもわからない。iTunesに読み込んだらGracenoteの情報はあって「フォーク」に分類されてくるが、ググっても日本語の情報どころか英語の情報さえほとんど手に入らない。詳細知っている人がいたら教えてくれい。
でも、音そのもの以外の情報が全くない、というのは彼から借りたCDではよくあることでじっくり聴くことにする。
歌詞がチェコ語で意味は全然わからないけど、音響の一部として聴くことはできる。密やかに語りかけるようなヴォーカルと、極端に音色を制限したバックが特徴的。アコースティックが主体なのでフォークに分類されているようだけど、エレキギターも出てくる。でもひとつひとつの曲には、例えばバックがマンドリンとフルセットのドラムだけとか、指弾きのウッドベースだけとか、エフェクタなしのエレキ一本だけとか、極端に緩くチューニングされたバスドラとウッドベースにほんのちょっとのおかずだけというようなストイックな音色が連続する。前半の何曲かはジプシー風だったりポップソング風だったりして調子いいけど、どこか抑圧されたようなヴォーカルと雰囲気が一致する。
最後の曲のように弓弾きのベースとエレキとシンバルしか叩かないドラムがバックの、何か歴史的なドラマが始まる前夜のような音の余白の多い緊張感は、ぬるいフォークのものではなく、実験精神の旺盛なロック(4曲目「Hrdlička」はバックがフル出場する5拍子の曲だったりする)そのものだ。何を言っているのか全然わからないけど出だしは気楽な調子で進むうち行き場所がどんどん無くなって閉塞感いっぱいになっていくヴォーカルに、計算されたようなでも無意識の底が呼んだようなバックとの組み合わせは一人で聴いているとずずいっ、と足首をつかまれて深い所に引き込まれてしまうような恐ろしい感じがする。
本場イギリスではロックは商業主義に塗り固められていつのまにか失っしまった本来のロックの精神がこういう東欧のバンドに引き継がれているようで面白い。
このように友人「T」の選択眼は見かけによらずまたその言動からは思いもつかず不意打ちのように鋭い。
チェコのバンド:Kvetyの1stですね
2007年に6枚目がでています。
Uz jsme Domaとともにチェコにしては長続きしていますね。
by つるりん (2008-10-20 17:09)
コメントありがとうございます。知っている方のコメントありがたいです。このあと6枚も出すバンドにはあまり聴こえません。残り5枚もチェック入れてみたいです。きっと友人「T」のチェックが入っていると思うので確認します。
by decafish (2008-10-21 22:25)