照度分布計算 - 何がしたいか [回折による照度分布計算]
仕事で、急いである計算をやる必要が出てきた。レーザを使った光学系の対称性が崩れたときのある面での照度分布を計算したい。Fraunhoffer回折が計算できればいいだけなのでそれほど難しくないけど、光学系に即したモデリングをしなければならない。売り物の回折計算用のソフトはある。でもこのモデリングが面倒なのと、FFTができればいいだけなので自分でプログラミングする方が簡単だったりする。
でも、一緒に仕事してる連中は1本百万円のソフトで計算したと言うと結果を信用するんだけど、「僕がプログラミングした」というと誰も信用しない。情けない話だけど最近はそういう傾向。かってにしろ。でも連中に任せておくと問題は解決しない(試行錯誤実験的なアプローチしか考えてない)ので、ここで個人的にコーディングするためのメモを取っておく。
やりたいのはこんなレーザを使った光学系
で照明された基板の照度分布を計算すること。レーザの出力はGaussian型の強度分布であるとして、リレー系で倍率を変換して、空間フィルタを通す。その後はなにも入れずにそのまま基板を照明する。基板は光学系の光軸とは傾きがある。この基板上で照度分布がなるべく均一になるような条件を探したい。
基板が傾いているので光学系の対称性を崩すことでつじつまを合わせるような条件を探す。実はもうひとつ光学部品があるけど、それを入れると仕事で何をやってるのかイッパツでわかってしまう(古典的な構成で名前までついてる)ので入れない。無くても計算の本質は変わらないのでこれでやる。
それぞれの光学部品を簡単に説明しておく。
レーザ
単色性が高く空間コヒーレンシも高い光源で、1mmφほどの細いほぼ平行の光が連続に出るものを考える。その細い平行光の内部強度分布をI(x,y)とすると、Gaussian
となっている。ここで(x,y)は光軸に垂直な面内の直交座標で、ax、ayはそれぞれ中心強度から1/e2におちる位置。普通レーザは半値全幅(Full Width of Half Maximum、中心強度の1/2になる幅で示す。半値全幅をHxなどとすると
となる。もちろんyも一緒。回折計算にはいきなり強度分布ではなくて振幅分布A(x,y)
で計算し始める必要がある。
リレー
本来は名前の通りふたつの光学系の瞳を結合するための光学系。簡単には
のようにふたつのレンズをそれぞれの焦点距離の和(f1+f2)だけ離して配置する。平行光で入ると平行光で出て横倍率βは
となる。計算すればわかるけど、最初のレンズからl(エル)の距離にある物体は後のレンズからl'
だけ離れた位置が共役になる(像をつくること。ここで距離lはレンズから左に、l'は右向きに測ることにする)。式から
であれば、実像ができる。これを使ってふたつの望遠鏡の瞳を共役の位置するとケラレが無くなるので、例えば潜望鏡は長い筒の中にこの光学系を仕込んである。この機能からこういった光学系をリレーと言う。
リレーのふたつのレンズを光軸に垂直方向にずらすと入射光束を横ずらし(光軸に沿ったまま、その垂直方向に移動)させることができる。そういったアラインメントが必要な光学系にも使われることがある。
空間フィルタ(Spacial Filter)
光学系の収差や迷光(鏡筒の内壁やレンズ表面で反射した不要な光)をとりのぞいて擬似的に点光源を作り出す光学系で、
のようにレンズの焦点位置にピンホールを持ってきたもの。レンズの焦点位置の結像スポットの振幅分布は近似的にレンズ瞳の振幅分布のフーリエ変換とみなせる(Fraunhoffer回折)ので、ある部分を透過させて、ある部分は塞いで、とやるとちょうど周波数フィルタになる。結像スポットの中心付近だけ取り出せばノイズを除いた滑らかな分布を得ることができる。
空間フィルタを透過した後は、その振幅分布をもう一度Fourier変換すれば広がって行く光の相対的な強度分布は計算できる。傾いた基板の上のある点の照度は空間フィルタのピンホールから見たその点の方向と距離と、光線と面の角度だけで決まる。
計算手順の整理
従って計算手順は
- Gaussianの振幅分布を作る
- リレー倍率に従って大きさを変える
- 空間フィルタのアパチャで分布を切り取る
- Fourier変換して結像スポット位置の振幅分布を計算する
- ピンホールで切り取る
- Fourier変換して透過後の振幅分布を計算し、強度に変換する
- 計算したい基板上の位置からそこでの強度を計算する
- 基板全面に渡って計算を行う
- リレーによる横ずらし
- アパチャの横ずれ
- スポットとピンホールの焦点ずれ
- ピンホールの横ずれ
- 基板の位置
次に、数学を整理して、その後すぐコーディングに入る。
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