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「理系白書3」読了 [読書]

副題「迫るアジア どうする日本の研究者」毎日新聞科学環境部編。講談社文庫。

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「3」というぐらいなのでこれまでにふたつはあるんだろう(「0」から始まってる場合もあるかも)、読んでないけど。これは女房が貸してくれた。その女房も誰かに借りたものの又貸しだった。うちは僕も女房も理系だけど子供たちは二人とも文系。理系文系は遺伝するかという問いに対する反例のひとつ。

中身は会社でレポートを読むような感じで面白いとも面白くないとも言いにくかった。

京大山中教授のiPS細胞の話から始まる。数年前に大々的に報道された内容なので新し味はない。論文の先陣争い、特許、法制度、実用化までの道のり、などが一気に語られる。

その後も、ノーベル賞競争、人材の国外流出、女性研究者の扱い、博士のポスト不足、もの作りの現場、などなどの問題が個別例の取材と統計情報がわかりやすく配置されて、多くの話題とそれらの周辺情報をよくまとめてあると感心する。

しかし読んでいて心ときめいたり、ハラハラしたりしない。これは「白書」であって文学書ではないので、しょうがないかもしれない。でももうすこしおもしろおかしく書いてもいいのではないかとも思った。

いちばん面白味のない原因は、やはり主張がないこと。一応問題と考えられる点はクローズアップされるのだけど、だからどうしよう、どうすべきだ、という結論はまったく書かれない。やはり「白書」という位置づけだからなのかもしれない。でもやはりちょっと物足りない。

それでも事実そのものが迫力を持っている場合がある。本のいたるところ、特に後半にたくさん出てくる日本の「国」としての未来に対するビジョンの無さ。失敗した、あるいは失敗しつつある国家プロジェクト、「海の新幹線」、「準天頂衛星」などが語られるところは、僕にさえ例えば「シグマ計画」「第五世代コンピュータ」を簡単に連想できてしまうほど昔から繰り返していることを飽きもせずまたやっているということがわかる。本では「日本には戦略がない」と指摘している。

しかし日本に本当に欠けているのは未来に対するビジョンである。理想と言ってもいい。「こうあるべきだ」「こうありたい」という議論の積み重ねがない。それなしに「このままでは負けるから」という程度の動機から「こうすべき」というような戦略を議論しても虚しいと僕は思う。

こういったビジョンの欠如した戦略の議論は昔からよく見かける見慣れた風景である。具体例はいくつか思い当たる。しかし、僕のこのブログは「家族へのオヤジの生活の報告」であり、時事的、政治的な主張を開陳してもしょうがないと考えているのでそういった具体例をここでは書かない。そもそも時事的政治的な話題は「刹那的」であり、「普遍的」に通用する議論だけをしたいという思いもある。

「旗色を示す」ためにはいずれはそういう話題も取り上げるべきだとは思うけど、まだ必要性を感じない。

夕食にどんな料理をしてなにを食ったか、なんてことが「普遍的話題に対する議論」か、と言われると反論は難しいけど、真に普遍的な議論とは対称性に関する左右の議論だけで、前後や上下の議論は普遍的ではない、と言えるから「普遍性」の枠をちょっと広げておいた方がいいと考えている。

なんのこっちゃ。


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