SSブログ

考え中 - Fourier領域と実領域の光(1) [考え中 - FDTD法の実装]

こないだからほったらかしてあるFDTDをしょぼしょぼと進めている。FDTDはその名の通り、光をはじめとする電磁場を時間空間を差分化して解くという方法だけど、やっていきながら古典的な光の物理を考える上で、いかに自分がFourier領域での概念にはまり込んでいるのかだんだんわかってきた。実時間空間領域で光を考えるのってほんっとに難しい。

何となく自分なりに理解しつつあるのでちょっとずつまとめておこうと思う。僕の素朴な疑問とそれについて僕が考えたことをメモしていく。現時点で気持ちの上ではわかったつもりだけど、ディテールはまだ全然詰ってない。また書いてるうちにわけが分からなくなるかもしれない。それでもいつもの通り考えながら書くことにする。

僕以外の、読んでくれる人のために書いておくと、電磁気学の基礎を知っているというのが前提。といってもそれほど難しい話ではないし、実はFourier変換をちゃんとやった人にはごく当たり前の話だと思う。また、風呂敷を広げすぎないようにするために、古典論の範囲に限る。しばらくはFDTDとは無関係な、原理的な話になる。

今日はそもそもFDTD以前に、僕が昔から感じていた素朴な疑問について。

平面波の疑問

Maxwellの方程式から光学に関する関係式を導くのに手持ちの本やいろんなサイトを見ると、だいたい「平面波」を使っている。平面波とは

0606eqa.png
みたいなものでこれはkの方向に進む等位相面が平面の正弦的な波を表す。でもこの式自体は複素数で、なぜか実際の場はこの実数部だけを取りなさい、などという注釈がどの本にもついている。実際に観測される場は実数だしポインティングベクトルのようなエネルギーの流れやそのやりとりを表そうとすると実数だけを取り出して計算しないとおかしなことになる。

じゃあなぜ複素数で表現するの、計算の途中で実数部を取り出したらどうなるの、そもそも虚数部はいったい何なの、という疑問は起こらないのだろうか?

僕は学生の頃、この「最終的に実数部をとる」という操作に、せっかく行ってきた計算の情報の一部を捨てるような気がして違和感を覚えた。「実数部」ではなくて「絶対値」をとる方が捨てる部分が少ないような気がした。もちろん「絶対値」をとったのでは正しい結果は得られない。

誘電率の疑問

また、光学の分野では媒質を特徴づけるもとになっている、Maxwellの方程式の中に同列に入っている式

0606eqb.png
のεは物質の応答を表しているといいながら、普通は定数だとみなされる。なんらかの入力に対する「応答」なら動作の遅れがあるはずで、そうでなければ因果律に違反するはず。本当に場所や時間に依存しない定数だとすると入力の変化が瞬時に現れることになる。もちろん結果が原因に先んじなければ因果律に違反するわけではないけれど、現実の物質は原子核や電子から構成されていて質量を持っていて、瞬時に応答できるようなものではないはず。それがなぜεという定数で表現できるのか?

学生の頃勉強してそれなりに理解したつもりで、会社に入ってからもあまり疑問を持たずに単なる道具として使ってきたけど、こういうところは最近FDTDを定式化しようとしてなかなか納得のいかなくて、簡単に行き詰まっていた。

実はこれは結局手っ取り早く結論を得るための方便で、その背景にはちょっとした計算や解釈の問題が隠されている。もちろん結論が変わることはないけど、もう少し正確な表現にしたほうが、納得しやすいということが今頃になってやっとわかってきた。

話のツカミとしてはいいでしょ、ね。あとで苦労しそうだけど。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

献立06/06献立06/07 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。