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庄司紗矢香のプロコフィエフ2番 [クラシック]

東京交響楽団の川崎定期演奏会というのに女房と二人で行ってきた。
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お題は
  1. ワーグナー「パルジファル」前奏曲
  2. プロコフィエフ「ヴァイオリンコンチェルト第2番」
  3. ブラームス「交響曲第2番」
実はプロコフィエフのソロが庄司紗矢香でそれが聴きたくて行った。庄司紗矢香は僕が最近一番聴きたいヴァイオリニスト。

どんなプラグラムでもおとなしく聴いていられる人ならともかく、女房のように好き嫌いの激しい人には会員制度というのは経済的に無駄が多い。女房の好きな砂かぶり席は会員向けになっているらしくて、今回はミューザ川崎の4階席の最後列になった。

指揮はマーク・ウィグルスワースという1964年生まれのイギリス人ということでずいぶん若いんだけどキャリアはしっかり積んでいる人らしい。はっきり言ってだるい「パルジファル」の第1幕の前奏曲の演奏は、女房に言わせると
「堅いわね」
まあ、料理の前に材料を並べるような曲なのでしょうがない。

前奏曲が終わると、オーケストラの椅子が片付けられて半分ほどになった。弦楽も2/3ぐらいの人数になった。現れた庄司紗矢香は右肩のあらわな真っ赤なドレス。実は僕はこの曲を初めて聴く(女房は知ってると言ってた)。

ワーグナーではあまり気にならなかったステージからの遠さがこの曲ではかなり不利になった。ヴァイオリンの音が洞穴から響いてくるような感じ。まるでリヒアルト=シュトラウスの「サロメ」のヨハネみたいになんだかおっそろしい音に聴こえてしまう。この曲にはこのホールは広すぎる。

曲の頭はソロのゆっくりとしたテーマで始まった。庄司紗矢香はちょっとぼやけた音を出してしまったりして最良のコンディションという感じではなかった。曲はプロコフィエフにときどきある古典性と前衛的な音色の噛み合わせがなんとなく悪い感じのような印象を持った。第2楽章は伴奏の弦のピチカートとクラリネットのスタカートの音色が面白い。まるで映画や舞台の音楽のように聴こえるけど、たぶんそれは逆でブロードウェイやハリウッドの作曲家たちがプロコフィエフの音色のマネをしたせいだろう。気にしないことにした。

ステージから遠いせいで了解度は落ちるけど、そのあとの庄司紗矢香はしっかりとしたテクニックと芯のある音色としなやかな運びで美しい。第3楽章はプロコフィエフらしい気の効いた終わり方をした。庄司紗矢香のピチカートがきまっていてカッコよかった。その後アンコールでバッハの無伴奏パルティータのロ短調のアルマンド。またここでもちょっとぼやけた音を出したところもあったけど、僕はよくある堅くて頑固なバッハではなく、柔らかくてスマートなバッハだと思った。しかし、女房のお気にはあまり召さなかったらしい。

休憩の後ブラームスの第2。1楽章の提示部を反復して長くなった上に第2楽章は曲も曲なのでついまぶたが重くなる。僕のとなりのおっさんは第2楽章でなんども首ががくっ、となっていた。フィナーレははっきりとしたリズムで、とくにコーダはどんどんオーケストラをあおってテンポが速くなって大団円になだれ込む、というようなライブ向けらしい演奏で、お客さんは喜んでいた。オーケストラの技術も高く、問題なくついて行っていた。

上手かったけど金管がピアニシモになるといまいちだった、と女房に言うと
「それはN響だって似たようなもんよ」
まあ、確かに。

終わってから人が多くてやたらとうるさい「ラゾーナ川崎」を女房とうろうろして、その後ひとりで仙台に帰ってきた。

紗矢香ちゃん、ショスタコーヴィチやらないかなあ。聴きたいなあ。バルトークやベルクでもいいかなあ。オカチメンコ、貧乳などと紗矢香の悪口を言うやつは絶対僕が許さん。
あの貧乳がいいのに。いや、いや、いかん、いかん。
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コメント 10

はじめまして。

行きました。
ぼやけた音は一重に会場のせいに思えました。
3階席でしたが、音が広がって逃げてゆく感じで目の前の演奏と音にずれを感じました。
私見ですが…。
by はじめまして。 (2010-06-23 15:37) 

decafish

コメントありがとうございます。
そうでしたか。
確かにこのホールは巨大で、おそらく1階の真ん中に座っている人は逆に音が上に逃げて行く感じがしただろうと思います。
こんどはそこそこの大きさのホールでショスタコーヴィチのコンチェルトを聴いてみたいです。特に1番は彼女にぴったりの曲だと思うんですが、どうでしょうか。
by decafish (2010-06-23 21:27) 

sarai

亀レスですいません。
初めまして、庄司紗矢香ファンのsaraiです。

この日のプロコフィエフはよい演奏だったと思います。
私の感想は上記のURLのブログに書いていますので、よろしければ。

このホールはワインヤード型で2階の前方がベストポジションです。
おっしゃるとおり、1階は音が上を通りすぎます。
3階席から後ろは細かい音のニュアンスが聞き取り難いです。
そういう意味では、やはり、サントリーホールがベストですね。

ショスタコーヴィチはもちろんぴったりですが、それは最近の若手ヴァイオリニストたちにもあてはまりますね。
by sarai (2010-09-24 11:01) 

decafish

コメントありがとうございます。
ブログ拝見しました。3階席でも遠かったですか。
音響の問題もあるのですが今回のような巨大なホールはやはり好きになれません。やはり千席以下の中規模ホールはやっていけないのでしょうか。
11月にまた彼女のソナタを聴きにいく予定です。今から楽しみにしています。ほんとうはソナタならブラームスではなくてプロコフィエフを聴きたいのではありますが。
by decafish (2010-09-24 21:19) 

sarai

やはり、ヴァイオリンは細かいニュアンスを聴くためには、通常、前の方の席でないと苦しいですね。雰囲気は分かっても、評価までには至りません。
サントリーホールでも前方の席ならOKです。
10月~11月はベートーヴェンのソナタを中心にリサイタルがありますね。
saraiは10月31日に大宮でオールベートーヴェンのソナタを聴きます。
前、7番を聴きましたが、素晴らしい演奏でした。彼女はプロコフィエフも素晴らしいですが、ベートーヴェン、ブラームスもきっちりと弾けることで評価しています。他の日本人はこのあたりが駄目な人がおおいですからね。
本当はサントリーホールで聴きたかったのですが、日程の都合がつかず、大宮にホールに初めて出かけます。
by sarai (2010-09-25 12:51) 

decafish

埼玉芸術劇場は羨ましいです。僕のはまたミューザ川崎の巨大ホールなので。今度は女房ががんばって砂被り席を取ってくれたのですが音が聴こえないんじゃないかと心配です。
それに僕はブラームスと相性が悪くて、ブラームスプログラムではつい寝てしまうことがよくあるので...
by decafish (2010-09-25 21:35) 

スナフキン

東京在のクラッシック・ファンです。 2010年11月6日(土)、川崎まで庄司紗矢香さんを聴きに行きました。 ルーブルのライブのCDが出た時試聴盤を聴いてすぐ購入、以来海外勤務が多くライブに接する機会なく、久しぶりに帰国して期待して行きました。 結果は散々。 プログラムは、ベートーベンの5番、7番、後半がブラームスの3番。 とにかくテンポが遅く、音楽の流れが悪すぎました。 若き日のチョン・キョン・ファー並みのとんがった演奏を期待していったのですが、残念。 色々考えて弾かれているのでしょうが、もっと伸び伸びと弾いてもいいのではないでしょうか? 例えは悪いですが、サッカーで、ブラジルの選手は、ボールを持つと喜々としています。 チームの為に次にどこにボールを出すかという事よりも、ボールを操りゴールを襲うのを楽しんでいるのがはっきりわかります。 ゲイジュツたるもの、その程度自分勝手でいいと思います。 
安全運転無用、信号無視歓迎、大きく羽ばたいてくれることを祈ります。 それから、共演のジャンルカ・カシオールさんのピアノは、特にベートーベンで弾き崩しが目立ちました。 個人の趣向の問題もありますが、ベートベンの中期までの作品では、様式美も大切。 弾き崩しはいかがなものかと思います。
以上、あくまで私見で、我が意を得たり、と思った人もいるかもしれません。 ただ、テンポが極めて遅かったとの感想は、友人も同意見でした。
by スナフキン (2010-11-17 23:40) 

decafish

コメントありがとうございます。その演奏会は僕もいました。そのときの感想は
http://decafish.blog.so-net.ne.jp/2010-11-07
に書きましたが、僕も、一緒にいた女房もまったく同じ印象を受けました。特に、おっしゃる通り僕もベートーヴェンにあのピアノは納得できません。ベートーヴェンらしいところを殺して、何を面白いと思って音楽をしているのか理解できませんでした。

実はそのあと、他所のブログなどを見ていましたがこういった感想を表明している人は見当たらなかったので僕の感覚のほうがおかしいのか、と不思議に思っていたところでした。
by decafish (2010-11-18 07:05) 

一さやかファン

昨年のN饗定期でプロコフィエフを聞きましたが、初めての曲で良く分からずでした。私のような俗耳には、チャイコ(サンクトペテルブルグフィル)、シベリウス(ロンドン饗)やシューマン(I・ゴラン)がベストです。昨秋のベトのソナタも録画を視聴しましたが、確かにベトはもう少し様式感が欲しい感じ。 実は庄司のビデオを集めていますが、どなたか2005NHK音楽祭のブラームス(北ドイツ放響)の録画をお持ちの方コピイさせていただけませんか(U-TUBEの動画をコピイしましたが、画質,音質共に不良なので) プロジェクタで100インチ位の映像を楽しんでいます(音楽に映像は本来不要ですが、やはり映像にも人柄が表れて人によっては素晴らしいです。 以下ある引用「女流バイオリニストとは特に魅力豊かだ。姿形がバイオリンという楽器とよく似あう。バックのオケとのコントラストも鮮やかだ。毎晩演奏する場合はドレスを変えて現れる。その双璧は夭折したフランスの天才J・ヌグーとイタリアのJ・デ・ビートだろう・・・」) 庄司はヌグーを好きだと言っているが、私はデ・ビートの再来ではないか?と思っている。 素晴らしい技術以上の、常に失わない初々しい音色が最大の魅力ですかね。
by 一さやかファン (2011-08-26 10:39) 

decafish

コメントありがとうございます。
残念ながら映像は持っていません。というかさやかちゃん以外でも、ほとんど映像は持ち合わせていません。当方プロジェクタどころか映像を表示できる装置はiMacのモニタしかないものですから。
ご指摘のヌヴー、デ・ビートまったく知りませんでした。個人的には録音も聞いたことがなく物故した演奏家の演奏を評価するのは困難です。残念ながら「そうですか」としか言えません。
by decafish (2011-08-28 15:13) 

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