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ちょっと前の論文を読んでみる [趣味のメタマテリアル]

ある人物から、ある短い論文のコピーをもらった。

J.B. Pendry "Negative Refraction Makes a Perfect Lens" Physical Review letters Vol.85 (18) 3966-3969, 2000(ここでコピーがダウンロードできる)

これは、メタマテリアルを使えば、回折に影響されない解像度無限大のレンズが可能になる、という内容で、どうやらメタマテリアルのブームのハシリとなった論文らしい。

なんでこれをもらったかということはとりあえずおいといて、この論文にでてくる式はそれほど難しくないのでふんふんと飛ばし読みした。式を追うのは簡単なんだけど、途中にある重要な結論が全然理解できない。何度か読み返すうち、僕はメタマテリアルとはなにかなんとなくわかっているつもりでいながら、実は頭の中は普通の物質のイメージがしみ込んでいてそのせいで理解できないのではないか、と思うようになってきた。

以前やろうとしたFDTDの実装の中でも、僕がいかに電磁波の問題をFourier領域で考えていたか、ということに気がついた。FDTDのように実時間領域で考えなければならないことは頭では理解できるのに、実際にやろうとすると、実はFourier領域の概念を使って考えていた、ということがあった。これはある意味、目からウロコだった。

僕はメタマテリアルの専門家でもなんでもないので、これを理解したからどう、ということはないのだけど、興味ある内容なので、腰を据えてまじめに読んでみることにした。そのかわり本来ならこれに参照されていたり、逆にこれを参照している論文も読んで全体像を把握する必要があるが、とりあえず僕はこの論文だけに集中することにする。全体像の把握はこの論文を僕にくれた人物の仕事である。

ちなみに、これをくれた人物はこれまでも何度か、僕のツボにミートするような問題を吹っかけてきては僕を悩ませた。僕の能力にあまりあるような問題であることも多くて、中途半端に終わってしまうことがよくあった。でもまあ、僕にとっては面白い暇つぶしにはなる。彼には申し訳ないけど。

2  メタマテリアルとは

2.1  とりあえず僕の理解は

基本的な説明はWikipediaにゆずるとして、ざっくり直感的な僕の理解をまず書いておく。

物質の光に対する応答、例えば反射したり屈折したり、というのは物質の中の原子や分子の光に対する応答がマクロな現象として現れたものである。

例えば金属の中の電子は外部からの電場に対してある周波数で共振を起こす。そのとき電子は電場を弱める方向に動いて電場からはエネルギーをもらう形になる。金属内部にたくさんあるどの電子もまったく同じ動きをするので、外からその周波数の電磁波を入れるとマクロにエネルギーが吸収されるように見える。普通の金属だとこの共振周波数は可視光から紫外光の領域で、そこで強い光の吸収が起こる。

つまり金属の光に対する振る舞いは、その金属に含まれている電子の振る舞いがマクロに現れたものである。他の物質、誘電体や磁性体、また固体に限らず液体や気体などもすべて中に含まれている原子や分子などの光に対する応答の現れである。

可視光の領域での振る舞いに注目すると、原子核は重いせいであまり応答に寄与することがなく、中にある電子がどんな状態でどう応答するかでだいたいは決まってしまう。例えば自由電子(原子核に束縛されていない電子)があるかどうか、束縛されている電子が持っているエネルギーはどのへんか、などの違いはあれ、だいたい似たような振る舞いになる。

例えば誘電体では、屈折率の大きい小さいとか、ある方向についてだけ屈折率が大きいとか、光の強さに従って屈折率が違って見えるとか、そういう違いはあるけど、光は境界面では屈折するし、内部が一様なら光は吸収されずに直進する、といった大まかな振る舞いはどれもかわらない。これは内部の電子が原子核に束縛されてあまり大きな動きができない、ということに起因している。

そうだとすると、物質が原子(電子や原子核)とは違うものでできていれば光に対する応答が違って見えるはずである。もちろん原子以外のもので物質を構成することはできないけど、光に対する応答を、例えば束縛された電子の応答とは違ったものになるように構成することができれば、普通の物質にはない現象が現れることになる。

そのように「構成された何か」は、可視光の領域では、原子ほど小さい構造である必要はなく、波長に比べて十分小さければいい。ということは例えば10nm(からその数倍程度)とか言う大きさのものをずらっと並べて普通の物質とは全然違う光に対する応答を示すものができるようになる。10nmといえば、今の半導体製造の射程内で、実現の可能性が見えてきた。

明日は早いのでこのへんで。前置きの途中で終わってしまった。まだ続く....
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