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ちょっと前の論文を読んでみる - その10 [趣味のメタマテリアル]

さて、昨日Pendryさんの論文の一部を訳した。いっけんなんでもないスラブ(平行平板)の透過率の計算に見える。ところが、ちょっとまてよ、という結論になっている。問題はただベキ関数のなかの符号がひっくりかえっている、だたその一カ所だけ。その部分をはっきりと理解するために、まず境界面の反射率透過率の係数、いわゆるFresnel係数の計算を、Maxwellの方程式を出発点にしてていねいに追いかけてみることにする。普通Fresnel係数の計算に透磁率μは残らない。それは可視領域の光学的な問題では物質が磁気的な応答をすることは、実質的にないからである。まず今日はμを残したFresnel係数を計算する。

1.2  反射係数、透過係数

光学的な問題を扱っているとたいてい比透磁率μを1と置いてしまって、最終的な式にμが残っていないのが普通である。Pendryさんの論文にあるμを残したFresnel係数を求めてみる。

媒質0と1が境界面で接しているとする。境界面の法線ベクトルをnとすると、
0908eq24.png
である。ただし、ここでは媒質0の量はダッシュ無しで、媒質1の量にダッシュをつけて区別している。

これはMaxwellの方程式を、境界面を含む微小な円筒や、境界面を横切る微小な長方形の中で積分してやることで出てくる。これは電磁気の教科書を見れば載っているので導出はしない。

反射や透過のいわゆるFresnel係数を計算するため、境界面の近傍で入射波、反射波、透過波の3つを考える。入射波と反射波は媒質0、透過波は境界と反対側の媒質1にあるとする。これらの場が境界面を隔てて式-24〜27を満たすように繋ぐことを考える。

媒質0の電場E
0908eq28.png
とし、ついでに媒質1の場も
0908eq29.png
と書く。ここで添字のirtは入射、反射、透過の場を表すとする。

これ以降、法線方向をz軸に、境界面をxy平面に、入射面をxz平面にとることにする。

1.2.1  s-偏光の場合

s-偏光の場合、電場磁場は数ベクトルの成分は
0908eq30.png
と書ける。nは境界面の法線ベクトルである。これが入射、反射、透過それぞれ3つあるとして式-24〜27に代入すると
0908eq34.png
となる。ただし式-25は0=0の無意味な式になるので条件式は3つに減る。

また式-21(もう一度書くと)
0908eq37.png
から
0908eq38.png
を使って電場だけにすると
0908eq40.png
となる。

さらに位相が一致する条件として
0908eq43.png
を考慮すると、式-40と式-42は同じことになる。

また、正反射の条件
0908eq44.png
として、電場の透過係数と反射係数をtrとすると
0908eq44a.png
であり、式-40と41を代入して整理すると
0908eq45.png
となる。ここでktz′を簡単にkz′と書いた。これは媒質0のμを1(真空)とおけば、pendryさんの式-18に一致する。

媒質1から0への反射率r′と透過率t′は、式-45 と式-46のダッシュ付きとダッシュ無しを入れ替えればいい。これでPendryさんの式-19が得られる。

ここまでは難しいことも、小細工もなにもなしで、電磁気学を勉強している大学生なら問題なくフォローできるレベルの作業でしかない。あと、p-偏光の場合もまったく同じことをすればいい。もう飽きたのでp-偏光の場合は省略する。

問題はこのあと。次回に続く。
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