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面白い記事 [日常のあれやこれや]

2ちゃん経由で面白い記事を読んだ。「ハイテク日本は実はローテク? まだファックスやカセットテープが」というもの。ネットではもうすでに旬を過ぎてるのかもしれないけど、
「中小企業は通信手段として郵便やファックスを使う。時として手書きのファックスを送ってくることもある。つまりそういう会社では、マイクロソフト・ワードのようなワープロソフトさえ使っていないということだ」
というところに反応してしまった。ワードを使えばハイテクらしい。僕にはBBCの記者がワードを使っていて、1文字スペルミスを修正しただけで全体のレイアウトが変わってしまって「オー」とか言って頭を抱えたり、うっかり入れ間違った文字を消しただけなのになぜか元に戻らなくなって頭を掻きむしってるところが目に浮かぶ.....

同じように「カセットテープ」「手書きのファックス」はローテクで古臭くて、「オフィスでのスカイプ」「クラウドストレージ」はハイテクで新しいらしい。はっきり言って硬直した見方による極論だけど、その後ろに欧米人らしい「俺がすなわちスタンダード」という奢りというか傲慢さのようなものも感じられる。もちろん、元記事を読んでないのでニュアンスが違っててもわからないけど。

しかし、日本の大企業は官僚的で「容赦ないほど保守的」というのはその通りだと思うし、「...特にソフトウエア関連では遅れが目立つ」のは困ったもんでいずれ日本の致命傷になると思う。

しかし記事が言うような「米国の労働者は最高のテクノロジーを利用できるから、生産性がはるかに高い」とは僕にはぜんぜんそう見えないし、「日本の非製造業の生産性は長い労働時間にもかかわらず、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最下位。米国の約半分にとどまっている」ことの原因が「デジタル化が遅れている」にことあるような書き方は、恣意的なミスリードだと思う。さらに「世界が商品中心の経済から知的資本中心の経済へ移行していくなか、このようなアプローチ(デジタル化を遅らせて人手に頼ったアナログ習慣に固執すること)で人工知能やロボット、オートメーションの台頭を食い止める」ために日本人が故意にデジタル化を遅らせているというのは曲解でしかない。

「カセットテープ」や「ファックス」は日本が記事の言うような「ハイテク」だった時代の残り香であって、夏草のあいだにたまたま落ちていた「兵どもが夢の跡」みたいなものである。日本で見つかるのはあたりまえだと言っていい。この記者も10年後にはUSB接続のマイクが机の引き出しから出てきたとき、若い記者に「昔はスカイプというのがあってな」と説明することになるはずである。

日本の問題は「デジタル化の遅れ」なんかではない。

僕は震災で紙の書類のほとんどがダメになったのをきっかけに、フォーマット上必須な場合を除いて仕事のために紙で保存することを完全にやめて、今でもそうしている。仕事で付き合いのある連中が電話で済まそうとしたとき(大抵皆そうする)、電話の内容を僕がメールに起こして「OK/NG」だけ書いて返せ、と言うことにしている。それ以前に僕の仕事はMathematicaでモデリングして計算して、Mathematicaで遅いときはObjective-Cにハードコードして、Illustratorで可視化して、LaTeXでまとめて、というようなプロセスになっている。思いつきのメモもLaTeX形式でやる(絵を描かなくても式があれば済むことが多い)。自分の仕事の糧だった光ディスクでさえ僕の仕事で使うことは完全に排除した。ワードなんか使ってるからダメなんだ、と言いたいぐらいのデジタル依存である。

記事の記者は僕みたいなのをよしとするだろうけど、それは日本人が進むべき方向ではない、と僕は思っている。この記者に従って極論すれば、この方向は彼らの土俵で勝負するということであり、日本人のポテンシャルはそんなところにはない、と僕は思っている。日本人が自らこういう頭の固い西欧人の尻馬に乗ってはならない。

日本人がやることの生産性の低さが、どこに起因しているのかを日本人自身が分析すべきである。そしてその結論として「だいたい生産性ってなんだ?そんな秤が我々にふさわしいのか?」という素朴な疑問が起こることを僕は望んでいる。

僕の世代は彼らの「グローバルスターンダード」を追いかけ、それで勝負することを強いられてきた。それで一応の成功は収めたけど、そのやりかたでの限界が現れたのが今の日本のように僕には思える。若い世代には僕らの轍を踏んで欲しくはないので、自分たちの問題は何なのかを自分たちで掘り下げて考えて欲しいと思う。
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