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ガウシアンビームの光学 - その3 [ガウシアンビーム]

まだまだ先は長い。サクサク行こう。しかし、MathJaxは便利だし美しいし簡単だし、いいとこづくめですな。

自由空間の波動方程式から出発して、その1では時間に依存しない形のHelmholtzの方程式を導いて、その2では一番簡単な解として平面波を導いた。簡単だからと行ってバカにしてはいけない。これには非常に広範囲の応用があることは、知ってる人はみんな知ってるまったくその通りである。平面波を笑うものは平面波に泣く、である。なんのこっちゃ。

しかし今回は平面波を導くのが目的ではないので、本題に戻ってさっきとは別の形を考える....

1.4  平面波の形以外の解の探索

別の形とは \begin{equation} A(x,y,z) = \psi(x,y,z)e^{ikz} \label{waveassumption} \end{equation} という形のものである。ここで$\psi(x,y,z)$は少なくとも2階の空間微分ができる関数であるとする。

これは$z$方向に進む平面波に付加係数$\psi(x,y,z)$がくっついた形、つまり平面波は全空間に一様に広がってたけど、式-\ref{waveassumption}では場が場所に依存してもいいとする。とは言っても何もない自由空間を考えているので境界条件なんかの場の形を制限するようなものはない。なので方程式そのものが許す依存性を見つけようというわけである。

$\psi(x,y,z)$にも変数$z$が含まれているけど、こっちのほうは正弦波的ではなく、もっとずっとゆっくり変化する場合を考える。つまり$\psi(x,y,z)$は$A(x,y,z)$の$z$に関しては速く変化する部分を取り出した残り、と考えることにする。

こいつをHelmholtzの方程式に代入してみる。

\begin{equation} \left( \bigtriangledown^2+k^2 \right)\psi e^{ikz} = 0 \label{halfway} \end{equation}

ここで煩わしいので$\psi(x,y,z)$が持ってる変数は省略した。

積の2階微分が \begin{equation} \frac{d^2}{dx^2} \left( f(x)g(x) \right ) \equiv f(x)\frac{d^2 g(x)}{dx^2} +2\frac{df(x)}{dx}\frac{dg(x)}{dx} + \frac{d^2 f(x)}{dx^2}g(x) \nonumber \end{equation} となることに注意して \begin{align} \bigtriangledown^2 \left( \psi e^{ikz} \right) &= \frac{\partial^2}{\partial x^2}\psi e^{ikz} +\frac{\partial^2}{\partial y^2}\psi e^{ikz} +\frac{\partial^2}{\partial z^2} \psi e^{ikz} \nonumber \\ &= \frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2}e^{ikz}+\frac{\partial^2 \psi}{\partial y^2}e^{ikz}+\frac{\partial^2 \psi}{\partial z^2}e^{i k z} +2i k \frac{\partial \psi}{\partial z}e^{i k z} -k^2\psi e^{i k z} \nonumber \end{align} なので式-\ref{halfway}は

\begin{equation} \left( \bigtriangledown^2 \psi + 2ik \frac{\partial \psi}{\partial z} \right) e^{ikz} =0 \label{noapprox} \end{equation}

と簡単になって、波になっている方向には1階の微分が残った式になる。

1.5  近軸近似の導入と近軸波動方程式

さて、さっき$\psi$の$z$の依存性はゆっくりである、としたがその特徴は式-\ref{noapprox}を導く上では使っていない。従って式-\ref{noapprox}はもとの波動方程式と実質的に等価である。具体的な条件を考えて式-\ref{noapprox}をもう少し変形してみる。

まず$\psi(x,y,z)$の$z$にそった変化量が場の大きさよりも十分小さい \begin{equation} \left| \frac{\partial \psi}{\partial z} \right| \delta z \ll \left| \psi \right| \nonumber \end{equation} とする。$\delta z$をだいたい$z$方向に伝播する波長の大きさだと考れば \begin{align} \left| \frac{\partial \psi}{\partial z} \right| \lambda &\ll \left| \psi \right| \nonumber \\ \left| \frac{\partial \psi}{\partial z} \right| &\ll k \left| \psi \right| \nonumber \end{align} となる(オーダーを問題にしているので、$2\pi$は無視している)。さらにその微分に対してもそうなっているとすると \begin{equation} \left| \frac{\partial^2 \psi}{\partial z^2} \right| \ll k \left| \frac{\partial \psi}{\partial z} \right| \nonumber \end{equation} である。その垂直な方向にはこれほどは小さくない、つまりゆっくりなのは$z$に関する依存性だけで、$x$と$y$については微分を残しておこうと考える。ようするに \begin{align} \left| \frac{\partial^2 \psi}{\partial z^2} \right| &\ll \left| \frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2} \right| \nonumber \\ \left| \frac{\partial^2 \psi}{\partial z^2} \right| &\ll \left| \frac{\partial^2 \psi}{\partial y^2} \right| \nonumber \end{align} と考えるということである。そうすると式-\ref{noapprox}から$\partial^2 \psi / \partial z^2$を落とすことができて \begin{equation} \left( \frac{\partial^2 \psi}{\partial x^2}+\frac{\partial^2 \psi}{\partial y^2} + 2ik \frac{\partial \psi}{\partial z} \right) e^{ikz} =0 \nonumber \end{equation} 特別な記号

\begin{equation} \bigtriangledown^2_T \equiv \frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial y^2} \label{parazialwaveequationminsuone} \end{equation}

を導入(2次元のラプラシアン。すごく簡単に見えるようになるか、というとそうではないけど伝統的にこう書かれるらしい)して、さらに$e^{ikz}$は恒等的には0にならないので$\psi(x,y,z)$に関する方程式になって

\begin{equation} \left( \bigtriangledown^2_T +2ik \frac{\partial}{\partial z} \right) \psi(x,y,z) = 0 \label{parazialwaveequation} \end{equation}

となる。この式-\ref{parazialwaveequation}を近軸波動方程式と呼ぶ。もとの波動方程式(式-\ref{noapprox})とくらべると$z$に関する2階微分がないだけである。

出発点が波動方程式なので当然、近軸波動方程式も線形な方程式で、重ね合わせがきく。当たり前のようだけど重要な点である。

この式を見て、実の場の波動方程式を近似しただけなのに、虚数単位$i$が含まれるのはおかしい、と直感的には思ってしまうけど、これは単に式-\ref{waveassumption}のように$z$方向には進行波を仮定したから出て来ただけである(物理の他の分野に出てくる微分方程式をみても1階微分の項に$i$はつきものである)。その意味でもとの波動方程式よりは限定された、いわば格下の方程式である。近軸方程式に含まれる$i$は、例えばシュレーディンガー方程式に出てくる$i$とは本質的に違う(じゃあシュレーディンガー方程式の$i$はなんなんだ、というと難しいけど)。

ところで、これまでの数学はほとんど膝蓋腱反射的な変形しかなかったので簡単だったが、今回は近似を入れたので、ちょっとだけ難しくなってなんとなく物理らしくなった。と言ってもまだタカが知れている。乞うご期待。
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