「哲学者かく笑えり」読了 [読書]
また女房に借りた。
土屋賢二著。講談社文庫。
十二章のエッセイとして前回借りた「ツチヤ学部長の弁明」よりはまとまった形になってるが、まあ、中身の調子は一緒。まとまってるだけ余計に押し付けがましい所があるが、それはええでしょ。
とぼけた調子で皮肉めかしたり、一般論を開陳するような言い方で個人的な悪口を言ったりと、前回読んだのと同じ調子でそれなりに笑える。が、まあ2冊続けて読むようなものでもない。
エッセイ本体よりも面白いのが付録ということになっている「滞英往復書簡録」。なぜか50過ぎてオックスフォード大学に行っている間(サバティカルか?と言う問いにそうではないと言っているが、現地で講義しているらしいことが書かれている)に学生時代のサークル(ジャズバンドらしい)の先輩から二十数年ぶりに手紙が来てその都合9回のやりとりを載せてある。これが結構面白い。
手紙の相手がもとバイブ奏者佐藤某という人で、その2通目の出だしがいきなり「前略 いやぁー、クリビツテンギョウ...」なのでこの人の読書歴が割れてしまうが、土屋教授が「...残念ながらどうも人違いのようです。...わたしの知っている佐藤さんの役割は司会することとマレットをもって立っていることでした...」あげくに資生堂の主任研究員の氏を「試験管洗い担当」呼ばわりして返事をすると、佐藤氏も「...私の知っている土屋さんはコルトレーンを神様だ、というほどの宗教音痴でしかたら。」と返す。こういうのがいきなり通じ合うというのは羨ましい。この調子で僕が友達に手紙を書いたら大抵きっと早とちりしてみんな怒るに違いない。人柄というのもあるかもしれない。悪かったな。
佐藤さんの二通目の最後が「土屋さんの当面の敵は筒井康隆でも山下洋輔でもなくて西原理恵子だ」となっている。僕も「ツチヤ学部長の弁明」で最初の二人の名前が浮かんだけど西原理恵子は漫画しか知らない。そのエッセイ風の漫画は自らをわざと貶めてそれで良しとしているようで好きになれなかった。佐藤さんも暗に競うなら西原理恵子あたりが妥当である、と言いたかったのだろうと思われる。
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