偏光の計算 - その10 [偏光のMathematicaによる計算]
気を取り直して、先に進む。
これまで見たようにそれぞれの表示には利点と欠点、というか、わかりやすくなる場面とわかりにくくなる場面がある。ということで相互に変換できるのが望ましい。ここではその変換公式を導く。変換はとうぜん完全偏光の単色平面波の場合についてだけ成り立つ。
電場の楕円率χと軸方向ψからストークスパラメータ
式-8そのもの。ストークスパラメータから電場の楕円率χと軸方向ψ
式-8を逆に解き直せばよい。書き方はいろいろあるけど例えば
などと書ける。電場の振幅と位相からストークスパラメータ
式-14そのもの。ストークスパラメータから電場の振幅と位相
これも式-14を解き直せばよい。例えば
などと書ける。電場の楕円率χ軸方向ψと振幅と位相
これはちょっと面倒。 Born&Wolfでは1ページ半かけて三角関数の計算をして式を導いている。中身は2次元の幾何学と三角関数の代数の問題になる。
ここでは面倒なので結果だけを書く。
この逆は、昔楕円のカリグラフィでやったことをもう一度やればいいけど、さらに面倒。数値的な変換なら、一旦ストークスパラメータを介すと簡単。
実際には変換の組み合わせ全部を書くのはデバグが大変になるので、ストークスパラメータ(すなわちポアンカレ座標)にすべて変換してから他の形式にさらに変換する。
これでやっと数学の整理が終わった。次回からMathematicaのコードを書く。
2009-03-01 22:26
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こんばんは,私は大学院生でして,研究でここのHP参考にしています.おかげさまで,研究が順調です.文章が下手くそなんですが,ありがとうございました.
1つここのHP参考にしてて,困ったことがあったので書きます.
ここの(38)式の楕円軸の角度ψ(主軸方位角)の導出なんです.
一般的にアークタンジェントは,-90度~+90度の範囲で計算します.
しかし,今回のψは.-180度~180度の範囲です.一般的なアークタンジェントで計算すると,(0.1,-0.99,0)と(ー0.1,0.99,0)の偏光の違いが出てきません.
って問題点が出ました.これの解決策をお願いしたいわけではなく,フィードバックとして伝えたかったので,特に返信はしないで大丈夫です.(文章が下手糞ですみません)
by グイピー (2015-12-04 23:34)
コメントありがとうございます。
僕は詳細を忘れてしまっていて、よく理解できないのですが、
偏光は楕円で表されて、楕円は2回回転対称なので、±90°の範囲で定義できます。なぜ楕円で表せるかというと、電場の位相だけを問題にして絶対的な向きを無視しているからで、光の電場の振動は速いのである時刻での向きは観測できない、あるいは光学的な現象では問題にならない、と見なしているからです。
ポアンカレ球でも直線偏光の向きを表す赤道は一周ぐるっと回ったときに偏光は180°変わるように倍半分に定義されていますので、僕にはコンシステントに思えるのですが。
そのあたりをもういちど説明していただけませんでしょうか?
by decafish (2015-12-05 08:50)
(誤)ψじゃなくて,2ψが-180~180と書きたかったです.
数学的なことなんです.
arctanθの定義範囲が一般的に,-90°≦θ≦90°
今回の2ψは,-180°≦2ψ≦180°だったので.
s1=0.1,s2=-0.99だと,arctan(s2/s1)=arctan(-0.99/0.1)=arctan(-9.9)
s1=-0.1,s2=0.99だと,arctan(0.99/-0.1)=arctan(-9.9)
となって,両方arctan(-9.9)となって,一緒になるはずがなく困ってました.間違った原因が,arctanの角度の定義域を考えてなかったことだったので,伝えておこうと思いまして書きました.
by NO NAME (2015-12-07 11:09)
理解しました。
すみません、僕は自分で書いたことを忘れていました。
あなたが正しいです。
ψはarctanの半分なのでこの式のままでは90°異なる偏光を区別できなくなるのはその通りです。
したがってこの式のarctanの値域は±180°でなければなりません。
つい安易に書いてしまいましたが、本当は
(s1, s2)の象限を考慮して値域を拡張しないといけません(このarctanってどう書けばいいんでしたっけ)。
ここの間違いが他に影響してるかもしれないので、もう一度確認する必要があります。
ご指摘ありがとうございます。
by decafish (2015-12-08 09:12)
私の説明が悪くて,申し訳ありません.
数学的に正式なものかどうかはわかりませんが,プログラム関係では,atan2(x,y)またはatan2(y,x)みたいな表記が多いですね.(自分はマトラボと呼ばれてる数値計算ソフトを使ってますが,そちらでもこのような表記でした.)
最後に,ここのHPに乗ってあることは,本当に研究で役になってまして,感謝してもしきれないです.本当ありがとうございます.
by グイピー (2015-12-08 10:11)
役に立つと言われるのが一番嬉しいです。
ありがとうございます。
でも、今回のようにエラーが含まれている可能性があるのでご注意ください。
unixのmathライブラリではatanは±π/2で、atan2は±πを返すようになっていますね。
僕はよく知らないのですが、数学でこれを効率よく区別する書き方はないでしょうか?数学的に単純にtanの逆関数で定義すると値域は±π/2になってしまいます。arg(y i + x)が簡単ですが、無駄に複素数が出てきて美しくありません....
by decafish (2015-12-08 12:01)
(追伸)
私の研究室の教授や,助教授の方々に聞きました.
効率良く表記する方法は聞いたことないようです.
もしするのなら,ifなどで,条件によって場合分けで角度を分けて表記する.
おしゃるとおりに,arg(y i + x)みたいに複素数で行う.などぐらいしかないようです.
by グイピー (2015-12-08 20:52)
はじめまして!
突然のコメント申し訳ありません。
現在、偏光の勉強をしてましてブログを参考にさせていただいてます。
現在、4方向の偏光子(0°、45°、90°、135°)を使用して画像を撮影しています。
この情報から偏光方向と偏光度を求めるには、どうすればいいか分からないでしょうか?
by お名前(必須) (2019-01-29 16:34)
コメントありがとうございます。
ストークスパラメータの考え方によれば、6つの測定値から偏光状態が決定できます。その4つでは情報不足で決定不能です。
ただし、測定対象に制限(例えば「ランダム偏光成分はなく、ひとつのジョーンズベクトルで表現できる」を前提にできるとか)があれば決定可能です。例えば「直線偏光だけで、かつランダム成分なし」なら楕円率は0(あるいは∞)とみなして(情報を補足して)、このページの式(38)からその4つの測定値で偏光方向が決定できます。
足りない情報をどう補うか、はアプリケーション、すなわち何を対象にして何を得たいのか、によると思います。
by decafish (2019-01-29 22:07)
遅くなりましたがご回答ありがとうございます。
勉強不足でなかなか理解できなかったのですが下記サイトを見つけました。
https://www.4dtechnology.com/quantifying-polarization/
これによると4つの偏光情報から式(38)にあてはめられそうなのですが分母(S2)が0になる場合はどうすればいいのでしょうか?
by お名前(必須) (2019-02-01 17:25)
あげていただいたサイトの記述には「Fortunately, circularly polarized light is rare in nature and circular polarization is not required for making retardance or birefringence measurements」とあるので、「測定対象が直線偏光だけ」の場合です。このサイトにもあるストークスパラメータのうちS3以外が得られるので式(38)に従って偏光方向が決定できますが、当然楕円率は0とみなされます。サイトのDoLPは楕円率ではなく偏光方向の揺らぎ(バラけの幅)になります。
割り算の分母が0になる場合は、適当に座標回転して0にならないようにすればいいだけです。どのみち必要なのはarcTanの値ですので分母が0でも偏光方向は有限の値になります。
どう回転しても0/0になる場合は、それはすなわち完全なランダム偏光ということです。
by decafish (2019-02-01 21:51)
またまた、遅くなってすいません。
基礎が理解できていないのでもう少し基礎的なところから勉強しないと厳しいと思いました。
この度は、いろいろありがとうございました。
by お名前(必須) (2019-02-14 18:18)
僕は以前からよく初学者に優しくない、と言われますのでお役に立てなかったかもしれません。
何か面白いことがわかりましたら、ぜひまた書き込んでください。
by decafish (2019-02-16 08:59)
いえいえ、とんでもないです。
とてもためになりました。
面白いことがわかったわけじゃないのですが…。
「測定対象が直線偏光だけ」とは、どのような状況でしょうか?
測定対象に照射する光が直線偏光ということですか??
現在、室内で蛍光灯の光で撮影→偏光方向と偏光度を算出しているのですが偏光度については、それなりに期待するデータが取得できていますが偏光方向については、期待するようなデータが得られていません。
これは、「測定対象が直線偏光だけ」じゃないからでしょうか?
by お名前(必須) (2019-02-19 09:16)
コヒーレンシが非常に低い場合、例えば黒体輻射からの光のように、波としての継続時間が短い、極端に言えば1波長もないような場合は電場のベクトルが回りきるまえに光が終わってしまうので、そんな光のひとつひとつは直線偏光とみなすしかありません。黒体輻射ではそのようなランダムに向いた偏光の光がにたくさん飛んできているということになります。
逆に完全な縦シングルモードのレーザの場合(そういうものがあるとすればですが)、それは振幅の大きなひとつの光がずっと継続している、ということで偏光状態はひとつのJonesベクトルで表現できるような確定した状態だとみなせます。
一般の光源の光はその中間の状態ですが、普通生活している上で使う光源ではコヒーレンシは低いことのほうが多いはずです。蛍光灯などもそういう光源で、発光時点(蛍光体が励起されたあと光になった瞬間)では完全にランダム偏光で、その光が管面での屈折や対象物の面での反射によってある偏光方向が選択されるため、かたよって見えることになります。
そう考えると「蛍光灯の光で撮影」の場合、偏光子を回すだけで十分のはずです。合わないとすれば別の手段での測定を試してみるのがいいのではないでしょうか。
また、ストークスパラメータは直感的で非偏光も含めて決定できるので便利なのですが、実際の測定では精度を確保するのはそこそこ難しいです。試しておられる測定系のエラーの見積もりをしてみて、要求する精度があるかということも確認された方がいいように思います。その計算は煩わしいですが。
by decafish (2019-02-19 12:57)