SSブログ

ちょっと前の論文を読んでみる - その3 [趣味のメタマテリアル]

趣味でメタマテリアルの論文を読み始める。メタマテリアルなんて言う新しい話題は難しい。でも、成熟した分野と違って参照しなければならない情報はそれほど多くないのが普通なので、あんがい僕でも読めるかもしれない、興味ある分野だし、と無謀にも思った。

今日から読み始める先日挙げたPendryの論文はメタマテリアルによって負の屈折率が実現できると、それを使って解像度無限大のレンズが構成できるという主張のもの。ちょっと聞くだけは僕のような頭の固いジジイの光学屋には「んな、アホな」と言いたくなるような、ほとんど「永久機関」とか「人工ブラックホール」とか「超光速通信」とかと同じ響きに聴こえてしまう。では、本当のところはどうなのか、ということで読み始めることにする。

3  Pendryの論文

まず、最初の方を抄訳することから始めよう。そのあと、わからないところや議論にギャップのあるところに対して注釈をつけることにする。[[]]に囲まれたなかは僕の個人的なコメントなので注意。

3.1  抄訳

光学的なレンズは数世紀にわたって科学者の主要な道具のひとつだった。その使い方は古典光学[[幾何光学のこと]]で理解できる。つまり曲がった面は屈折率の力によって光を焦点に集めることができる。
また同時にその限界も波動光学によって予言できる。つまりいかなるレンズも波長よりも小さな領域に光を集めることはできない。
もっと完璧に研磨されたレンズやちょっとでもいい誘電体を発明すること以外になにかあたらしいことが言えるのか?
このレター[[短めの論文のこと]]では、レンズ性能の限界に挑戦し、「スーパーレンズ」というものを提案したい。そしてそのようなレンズを作る手段を提案する。

まず、性能限界の原因を詳細に見てみる。レンズの前にある周波数ωの無限小のダイポールを考える。
電場の成分を2次元Fourier変換して考えると
0917eq01.png
となる。ここでレンズの光軸をz方向にとった。Maxwellの方程式から
0917eq02.png
である[[真空中の波動方程式に式-1を代入する。開平するときの符号は進行方向をとる。このへんは、のちのち微妙な問題になる]]。
場を再構成してフォーカスをつくる、すなわちダイポールの像がレンズからいくらか離れたところにできるるように位相を調整することがレンズの機能である。しかし、何かを忘れている。つまり縦方向の大きな波数では
0917eq03.png
となるはずである。これらのエバネセント波はz方向に指数関数的に減少し、それらの成分が正しい振幅で再構成に寄与できるような位相補正はできない。 これらの成分はなくなって、像は伝播波からだけで構成されることになる。伝播波は
0917eq04.png
に制限されるので、像の最大解像度は
0917eq05.png
となり、レンズがどれだけ完璧に作られようと、アパチャがどれだけ大きかろうと、これは成り立つ[[式-1でFourier展開した成分が途中で切れるから。そりゃそうだ。でもこれだけの議論では、それとエバネセント波が存在することとは別だよな。ところで、光学的な解像度の限界を「伝播波」「エバネセント波」のふたつで表現するのは普通あまりしないけど、後の議論をわかりやすくすることになる]]。

と言うような調子で、軽く読み進めよう。続きは次回。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

献立08/17献立08/18 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。