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子供が死ぬ話 [日常のあれやこれや]

子供の頃、家族で歌舞伎を観に行くことがあった。当時はテレビでも日曜午後なんかに劇場中継があって、休日の昼食後の脱力した雰囲気のまま家族揃って見ることがよくあった。僕はよく理解できなながらも印象的なセリフなんかは覚えてしまっていた。「ととさまの名はじゅうろべえ」「ごしんぞさんへ」「さてどんじりにひけえしは」「ぜっけいかな」「みやづかえ」「しばらく〜」「ぶぐばぐ」...今から半世紀以上前、歌舞伎はいまほどお芸術ではなくて、ごくごく普通の庶民の楽しみのひとつだったんだろうと思う。

小さい頃はなんとも思ってなかったんだけど、高校生大学生となるに従って少し中身がわかるようになって嫌になった演目が僕にはある。歌舞伎によくある子供を死なせる話。君主の跡取りの首の代わりに自分の子を差し出したり、子に毒味をさせて苦しませた上に死なせたりと、なんの罪のない子供を自ら殺すなんて、理不尽極まりない、と思っていた。そしてそういう演目を見ながら、当時まだ存命だった祖母は本当に涙を流していた。

歌舞伎にある子供の死ぬ話がなんでそんなに不愉快に感じるのか、がこの歳になってほんとの理由がわかってきた。話に描かれた状況の理不尽さが我慢できないのではなくて、それを見て可哀想にかわいそうにと泣く涙が嫌だったんだ、泣きながらどこか嬉しそうな満足したような表情を隠しているように見えるのがいやだったんだ、ということが今頃になってわかってきた。

今日夕方に、親からの虐待で死んだ、当時5歳の女の子の、死の直前の日記のフレーズを、そのあと理不尽にも死ぬことがわかった上で、何度も何度もなんども繰り返すニュースを見ていてそれに気がついた。
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